四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『TALK TO ME/トーク・トゥー・ミー』鑑賞。

年末年始のまったりとした空気に触れていると、ちょっと刺激が欲しくなる。そんなときにちょうどA24配給のホラー映画が劇場公開されているじゃないか。A24と言えば『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』などのちょっと尖った映画に強い配給会社で、きっとこの映画もそうなのだろうと思って観に行ったのが『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』であった。

 

母親を亡くし父親との関係が疎遠になっている少女ミアは、友人であるジェイドの家に入り浸っていた。あるとき若者の間で流行っている、短時間霊を自分の身体に憑依させてその映像をSNSにアップするという降霊会に参加する。仲間内でも浮いた存在であるミアは率先して霊を自分の身体に憑依させる儀式を行うが、本当に霊が目の前に現れ自分に憑依させると身体の自由が効かなくなってしまう。90秒以上憑依させると自分の身体に霊が残ってしまうというルールを結果的に破ることになってしまったミア。別の日にジェイドの彼氏の希望で降霊会を行うが、ジェイドの弟ライリーに憑依した霊がミアの母親だったことで状況が一変してしまう。

 

日本で言えば”こっくりさん”などに似た感じの、儀式を行うモダンホラー作品である。霊能力者の手を遺体衛生保存(エンバーミング)したという、手の形をした薄気味悪い置物と握手しながら”トーク・トゥ・ミー”と唱えると眼の前に自分だけが見える霊が現れ、さらなる合言葉を唱えることで霊が自分の身体に憑依するという遊びは、ラリったような異常行動もあってまるで薬物中毒さながらである。それが癖になって何度も繰り返してしまうのはまさに依存症。主人公のミアは母親を失った心の隙を、薬物ならぬ降霊会で埋めることになる。

 

最初に提示されたルールを私情で破ってしまうので、この映画の結末も因果応報といった感じなのだが、この作品に出てくる霊の方もかなり悪質な手口を使ってくるので見ている方もすっかり騙されてしまった。一体どこからどこまで本当の出来事だったのか分からない。言われてみれば霊が本当のことを言うとは限らないし、霊が身体に残った状態で死ぬと身体は霊のものになるというルールを思えば当然の結果だったのかもしれない……。

 

薬物依存という日本ではそれほど馴染みのないモチーフ(と勝手に思っている)を除けば、率直に言うとそれほど新しさは感じなかったのだが、その分日本人でも馴染みやすいじっとり感のある怖さのある作品になっていたと思う。やっちゃいけないことを全部やってくれるお約束感もあって、ホラー映画を見に来た!という客を満足させるのには十分だと思う。気分転換にはちょうどよかった。