四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『ノースマン 導かれし復讐者』鑑賞。

『ノースマン 導かれし復讐者』は言わずと知れた『ハムレット』の原型になったとされている、伝説の人物アムレートを描いた映画ということになっている。Wikipediaを見る限り確かに伝説上のアムレートとハムレットの共通点は多いのだが、『ノースマン』のアムレートとはだいぶかけ離れているような……。ロバート・エガース監督は前作の『ライトハウス』がやけに難解だったので今回はどうなるかと思ったのだが、アーティスティックな映像表現はそのままに、思いの外シンプルで娯楽性の強い作品となっていて逆に意表を突かれた。

 

西暦800年代のスカンジナビア半島。戦から帰還してきた大鴉王ことオーヴァンディル王は戦いによって負傷し、まだ少年である王子アムレートに王位を譲ることにした。だがその儀式の直後、オーヴァンディル王の腹違いの弟、フィヨルニルによってオーヴァンディルは殺害され王位を奪われてしまう。アムレートの母親であるグルートン王妃も攫われるが、アムレートは単身逃げ出すことに成功し、フィヨルニルへの復讐を誓う。それから何年も経ち、アムレートは屈強なヴァイキングとして一目置かれるほどの立派な戦士に成長していた。村を襲い略奪を繰り返していたある日、預言者に出会い自らに課した復讐の使命を思い出す。そして現在のフィヨルニルは治めていた国が別の国に攻め落とされ、アイスランドに落ちのびていることを風の噂で知る。アムレートはあえて奴隷を装って海を渡り、フィヨルニルの農場へと潜り込む……。

 

個人的に結構刺さった映画なのだが、その一番の理由は「これ、実写版スカイリムだな」と感じたからだった。スカイリムは北方の蛮族であるノルドという民族とそれにまつわる神話や伝承を土台にした物語が展開されていたのだが、そのモデルはまさしくヴァイキング北欧神話。スカイリムの方がちょっぴり文明的ではあるが、名誉と誇りを重んじ、武力あるものが国を統べる。神話の物語を心から信じ、病による死よりも戦いの中で命を落とすことを望む。そういった戦闘民族ヴァイキングの世界観を余すところなく描いており、思わず魅せられてしまった。

 

アムレートが敵討ちに使うための剣を調達する場面もやけにファンタジックで、動く死体と戦うのもなんだかスカイリムでありそうなシチュエーションだし(剣の名前がなんとドラウグル!)、否が応でもそういう目線で見ずにはいられなかった。さすがにドラゴンは出てこないが。もちろん身分を隠して敵の懐に潜り込み、復讐の機会を虎視眈々と狙うというストーリーはシンプルに感情移入し易いし、その過程で奴隷の女と恋に落ちたり、母親はフィヨルニルとの間に子をもうけていたりして、アムレートの復讐も一筋縄ではいかなくなってくるのである。そしてフィヨルニルとのラストバトルはそのロケーションも相まって物語は最高潮に達する。徹頭徹尾血なまぐさい、非常に満足感のある137分だった。