四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

2022年を振り返る。

今年四十歳になったその日に始めたブログもなんとか続いている。基本的にはアニメとゲームと映画の三本柱でやっていくとそのとき決めたので、必然的に振り返るのもその三つになる。2022年に観た中で、良かったと思うものをそれぞれ10個づつ挙げてみたいと思う。

 

今年は年末に野菜泥棒とのひと悶着があり、だいぶ疲労困憊に陥っていたが、三本柱が心の支えになっていたことは言うまでもない。既に人の営みからは外れた生き方を余儀なくされているが、それでもできるだけ長生きして、楽しんで生きていきたい。そのためにはアニメとゲームと映画の三本柱は絶対に必要である。来年も頑張って生きよう。

 

 

 

 

ゲーム

今年はゲームで遊ぶ時間のほとんどを『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』と『The Elder Scrolls V:Skyrim』に費やしてしまった。用意された広大な箱庭の中で自由に冒険するという、どちらもオープンワールドの名作と呼ばれているものを後追いで遊んだのだが、ブレワイはどこでも好きなように行ける喜びを、スカイリムは作り込まれた歴史や世界の住人たちを、多少方向性は異なるもののファミコンの時代からTVゲームをやっていていまだにゲームそのものに感動することができるとは思わなかった。

 

その合間にSwitch版の『十三機兵防衛圏』も遊んだが、自分で物語を見る順番を選べるといいつつも事実上一本道のゲームなので、前二つのゲームに較べて遥かにプレイ時間は短い。しかし13人の主人公のストーリーを少しづつ読んでいった末に解き明かされる真相までに10回以上は驚かされたし、情報の開示とそれによって新たな謎が生まれるストーリーテリングが巧すぎた。そしてバトルパートで苦労した分エンディングの感動もひとしおだった。

 

アニメ(五十音順)

アキバ冥途戦争

1999年、メイドに憧れて上京してきた和平なごみという少女が、秋葉原メイド喫茶に就職するのだが、そこで出会ったのは万年嵐子という15年の刑務所生活を終えたばかりの36歳の新人メイドであった。嵐子はなごみと共に送り込まれた先の敵対メイド喫茶の店長を撃ち殺しその報復で追われることになるが、相手から奪った拳銃で皆殺しにしてしまう……そんな衝撃的な第一話に始まり、その後も明らかに頭のおかしい展開が続いてツッコミが止まらないのだが、メイドとヤクザを組み合わせたこの作品の中では驚くほど筋が通っていることにやがて気が付くことになる。多くの犠牲の果てに、非暴力主義を貫こうとするなごみが迎えた結末には、ある種の感動すら覚えた。他に類を見ない怪作。

 

明日ちゃんのセーラー服

セーラー服に憧れた少女が、かつての母親の母校へ入学するところから物語が始まるのだが、実は制服はブレザーへと変わっていて……という導入には若干の無理を感じつつも、そこさえ乗り越えれば主人公のスーパー中学生、明日小路を中心とする個性的なクラスメートたちとの眩いばかりの学校生活が待っている。小路はクラスメートのいない学校に通っていたせいで、新しい学校生活では見るもの全てがキラキラと輝いて見え、まるでその視点を共有しているかのよう。原作からエピソードの順番を入れ替えており、クラスメートとの交友を経て序盤の山場である体育祭を迎えるという構成は予想以上の盛り上がりを見せた。原作もアニメの出来に当てられたのか、現在は非常に熱の入った展開になっており、目が離せない作品の一つになっている。この作品に出会えたからこそ2022年は楽しかった。

 

サイバーパンク:エッジランナーズ

サイバーパンク2077』というゲームを原作とした、その少しだけ前の物語。あらゆる欲望と死が蔓延するナイトシティ。自分の肉体にサイバーウェアと呼ばれる機械を組み込み、人間以上の能力を得ることも当たり前になっているほどの未来。母親を亡くし、生活が困難になった少年デイビッドはサンデヴィスタンと呼ばれる瞬間的な超高速移動を可能にするサイバーウェアを手に入れたことでルーシーという少女と出逢い、エッジランナー(傭兵)としての道を歩むことになる。仲間と出会い、サイバーウェアを駆使して成り上がる一方で、サイバーサイコシスという重大な疾患に蝕まれていく。たった10話だが女一人のために全てを擲つデイビッドの生き様と呼応するようなスピード感溢れる展開は、最終的に忘れがたい清々しさと寂寥感を生み出す。TRIGGERの最高傑作だと断言する。

 

サマータイムレンダ

ミステリアスな雰囲気から始まる、島を舞台にしたループ系サスペンスと思いきや、謎が明かされるに従って作品の雰囲気そのものも変容していく面白さがあった。事実前半OPと後半OPでまるっきりノリが違いすぎて最初は戸惑いを覚えたのだが、しかしそこは原作がジャンプ+掲載だけあって、バトルアクションになってもおかしくはない。主人公の持つループ能力で一方的に有利を取れるわけではなく、相手もそれを逆手に取ってくるというのは新鮮で、有能同士が裏をかきあう頭脳戦が終盤までずっと続き先が気になってしょうがなかった。原作も後から読んだが、アニメの原作理解度が非常に高く、最終話の一話丸々使ったオリジナル要素の強いエピローグも愛に溢れていて良かった。

 

SPRIGGAN(スプリガン

古代文明の遺産が悪用されないために組織されたアーカムと呼ばれる組織に属するエージェント・スプリガンの一人である御神苗優が、世界の情報機関や化け物を相手に戦っていくバトルアクション作品。20年以上前の原作が現代に違和感なくアップデートされて、最新の技術を用いたアニメとして蘇った。20世紀末に一度映画化され、そのときのクオリティはもはやオーパーツと呼んでも差し支えがないほどだが、それはそれ。ノアの方舟やクリスタル・スカルなど80年代末頃のオカルトブームがもはや陳腐化されて久しい現在においては逆に新しさすら感じ、学生とエージェントの二重生活をしながら、精神感応金属であるオリハルコンのナイフや、通常の30倍以上の筋力を発揮できるアーマード・マッスルスーツを駆使して戦う厨二感がたまらない。45分一話という変則的な構成だが、ちょっとした映画のような物語のスケール感は非常に満足感があった。

 

ドラゴンクエスト ダイの大冒険

25年以上前の原作で、2年以上の期間をかけて100話にわたるアニメがついに完結した。もうそれだけで感無量である。当時のアニメは序盤で打ち切りの憂き目に遭い、長い間心残りになっていたのだが完全なる形で、むしろそれ以上のクオリティで再アニメ化され何も言うことはない。とにかく作り手の情熱を感じた一作。

 

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-

ちょっと抜けたところのある主人公結愛(ゆあ)せるふが高校でDIY部に出会い、疎遠になってしまった幼馴染の須理出未来との関係修復を試みるというオリジナルアニメ。ただ物を作るだけではなく、居場所を求めて集まってくる人たちとの人間関係までもをDIYしてしまう主人公の心の広さと穏やかさが心地よく、爽やかな日常描写と相まって、まるで陽だまりにいるような暖かさを感じる作品に仕上がっていた。最初はいつ怪我をしてもおかしくないようなせるふの危うさに不安をかきたてられたが、ちゃんと成長していって一安心。そして後半に繰り広げられる幼馴染との関係の再構築は、長いこと待たせられただけあって、なんでもないことのはずなのに思わず感動してしまった。下手でもそれは味になる!というモットーは、現代においての福音として胸にしまっておきたい。

 

平家物語

厳密に言えば配信されたのは去年だが、放送されたのは今年なので2022年に含めることにする。言わずとしれた平家物語を、オリジナルキャラクターであるびわという少女の視点で描いた作品で、山田尚子京都アニメーションを離脱してから初めてのアニメーションシリーズ。未来を見ることのできる目を持つびわが、武士に親を殺された後平重盛に引き取られ共に生活するうちに、平家の一族に対して情が湧いてきてしまう。それは歴史の敗者に貶められた平家にも向けられた、彼らも人間であったという祈りのようにも感じられた。未来を知りながらも平家の滅亡を止めることはできず、栄枯盛衰をともに歩んでいくのはまさに諸行無常。そしてところどころで、放火事件によって多くの命を落とした京都アニメーションへの、鎮魂歌のようにも思えてならなかった。

 

ぼっち・ざ・ろっく!

学校に友達のいない後藤ひとりが、ひたすらギターの練習をしてネットで有名人となったのだが、相変わらず友達はいなかった。しかし結束バンドというバンドが、居なくなったギターを探していたことがきっかけで生活が一変していく。しかし真性のコミュ障であるひとり(あだ名はぼっち)が人の輪に混じって生活していくのは気苦労が絶えず、行く先々で問題が起こる。だがバンド活動を続けてメジャーデビューし、高校中退を目標にするという、後藤ひとりというロックな女の生き様(奇行)が繰り返されていく。しかし演奏描写は本物で、有名バンドから提供された曲の数々も結束バンドという架空の存在のリアリティを支える。作画的な遊びだけではなく、実写を織り交ぜた実験的演出が頻出し、スタッフが遊んで…楽しんで作っているのが伝わってくるよう。今年のCloverworksの快進撃を象徴するような一作となった。

 

モブサイコ100III

2016年に始まったアニメシリーズの最終章。超能力を持つ主人公・影山茂夫のビルドゥングスロマン。超能力がきっかけで出会う様々な人間との関係が茂夫を成長させていく。幽霊が蔓延る世界観だがどこか緩さもあり、8話のUFO編では狐につままれたような不思議な感覚に陥った。最終章ではこれまでのキャラのほとんどが登場し、クライマックスを飾った。個人的にはテルが好き過ぎてしょうがない。序盤に登場してから、IIの終盤における空前絶後のバトルシーンや最終章での活躍などテルというキャラクターの成長物語としてもこの作品は見る価値があった。原作のほぼ全てを円満に映像化しきった、作り手に愛されたアニメだった。

 

映画(五十音順)

ALIVE HOON(アライブフーン)

ドライバーが事故によって怪我をし、ドリフト競技に参加できなくなったチームがスカウトしたのはなんとレースゲームのeスポーツ選手である大羽紘一であった。人付き合いが苦手な紘一は勇気を出してチームに参加するものの、その性格やeスポーツへの偏見から軋轢を起こしてしまう。しかし持ち前の集中力によってドライバーへの適正を発揮し、徐々に信頼を勝ち取っていくがその前に数々のドリフトレース界の強敵が立ちはだかる。おそらく誰もがeスポって……と侮っていたのを覆すような、王道ど直球のレースドラマに仕上がっており、CG無しの実車を用いた迫力のレースはもちろんの事、地道なトレーニング描写に尺を割いているのも好感度が高い。このブログを始めて、最初に感想を書いた記念すべき作品でもある。

 

犬王

室町時代に実在しながらも歴史の影に埋もれてしまった能楽師である犬王を、まるでポップスターのように華やかな存在として描き、そしてなぜそのようなスター的存在が埋もれてしまったのかというドラマを描く。長い腕を持つ奇形である犬王による縦横無尽な舞の数々と、平家の呪いで盲目になった琵琶法師・友魚による時代を超えたロックな演奏が京の町で出会い、そして独創的な発想による舞台装置が人々を熱狂させる。その様子はまるで現代のレイヴのようであり、そのせいか曲がちょっとクイーンっぽい。人気を得るほどに異形の身体を失っていき、凡人へと変わっていく犬王の変化と、友魚が友情によってすれ違っていく顛末はただただ切ない。

 

かがみの孤城

鏡の中の世界に集められた七人の不登校児たち。鍵を見つけたら願いが一つというオオカミさまの指示のもと、一年間の期限のなかでときにはいがみ合い、ときには迷いながらも心を通わせ合ってかけがえのない仲間になっていく。アニメーション的には堅実そのもので、大げさな表現はほとんど使われておらず、非常に分かりやすい表現ばかり用いられているが、原作が児童文学に近いものであることを思えば、この作品の対象年齢もまた低めに見積もられていることは想像できた。しかしこの作品の放つメッセージは大人にとっても他人事とは言えず心に突き刺さり、そしてそっと背中を押すような優しさに溢れていた。こころちゃんの引きこもる理由を知った母親の、毅然とした態度で立ち向かう姿が眩しすぎた。

 

神々の山嶺

原作では紆余曲折あってエベレスト南西壁冬季無酸素単独登頂に挑戦するわけだが、尺の関係でそれらは大幅にカットされ、物語は登山に人生を捧げてきた男・羽生丈二の半生に絞られている。フランス産アニメでありながら、80年代頃の東京の風景の再現には正直舌を巻く。エベレストへの挑戦も原作にあったセリフはほぼ削られ、ただひたすらに息遣いと二人の男が山を登る姿が続く、恐ろしいまでにストイックな登山アニメとなった。全てを捨てて山に挑む男の姿には、自分にはそうなれないからこそある種の憧れを感じてしまうのであった。

 

さかなの子

さかなクンの自伝を原作とした、さかなクンの半生を描いた映画。小さな頃から自分の好きなものを追い求め、母親もその姿勢を後押しする。好きなことに対して一直線なその姿には勇気が貰えるが、大人になれば好きなことばかりでも上手くいかない現実がバランスを取っている。さかなクン本人が、好きなだけではうまくいかなかった大人として、近所の魚好きおじさんであるギョギョおじさんを演じているのも皮肉が効いている。

 

THE FIRST SLAM DUNK

三回も観ると、このスラムダンクも十分受け入れられるようになってきた。はじめてのスラムダンクというタイトルが示す通り、長期連載を追うことで得られるカタルシスをできるだけ排し、今まで掘り下げられたことのない宮城リョータを主人公とすることで初見と原作ファンをなるべくフラットな立ち位置で見せることに成功した。26年前には不可能だった作者の頭の中の湘北VS山王の試合を、まるで本物のバスケのような臨場感で再現し、白熱する試合展開は結末を知っていても思わず手に汗を握る。

 

呪詛

台湾の実際の事件を元にした、ファウンド・フッテージ形式のホラー作品。かつて山奥の村で禁忌を破って呪われた母親が、その呪いに巻き込まれた娘を助けるために奔走するリングっぽい展開だが、母親はこの呪いを解くために視聴者まで巻き込んでくるという禁じ手を使ってくる。本当に嫌な気分にさせられるのだがホラー作品なのでそれがむしろ良い。田舎の因習や謎の儀式などのオカルティズム、配信者の主人公による自業自得感など、おふざけ一切無しの全盛期のじっとりとしたJホラーを彷彿とさせる良作。

 

トップガン・マーヴェリック

アメリカ海軍のエリートパイロット訓練校・トップガン。かつてここで好成績を納め、敵機撃墜の実績を持つ伝説的パイロット”マーヴェリック”が帰ってきた。今度は教官の立場で、癖のある若手パイロットを指導する。前作がオーバラップする演出の数々に加え、数十年の時を経たトム・クルーズによる渋みの増したマーヴェリックに奥深い魅力が宿る。単純に撮影技術の関係で表現に限界のあった前作を、今の技術で超々パワーアップさせた本作。これを抜きにして2022年は語れない。いまさら説明するまでもない映画館で観るために作られたエンターテイメント作品にして、その頂点。

 

夏へのトンネル、さよならの出口

ウラシマトンネルという、自分の失ったものが手に入る変わりに時間が外の何倍もの速さで過ぎ去ってしまうという場所を舞台に、過去に妹を失った心の傷を抱えたままの塔野カオルと、夢を持ちながらも自分の理想とする姿とのギャップに悩む花城あんずの、お互いの欠けたものを求め合うようなラブストーリーが始まる。片田舎の風情を感じさせる背景もさることながら、どれだけ原作から要素を削っても作品として成立できるのか……そんな挑戦的な姿勢を感じるような上映時間の短さなのだが、思った以上に綺麗に纏まっており時間あたりの満足感は高かった。理想的なファスト映画とはこういったもののことだと思う。

 

ハケンアニメ!

夢を諦めきれずに他業種から転向しアニメ監督に抜擢された斉藤瞳と、かつて若き天才と言われたものの長いブランクから復帰したばかりのアニメ監督王子千春。この二人の作品が同時期にテレビ放送されることになり、人気(覇権)を争うことになってしまった。アニメはビジネスだと主張する敏腕プロデューサーや、天才監督のわがままに振り回される苦労人のプロデューサーなど、多くのスタッフを巻き込みながら、理想と現実の狭間で苦しみつつも、熱い想いをぶつけ合い作品を作り上げていく。作中でチラ見せされる二つの劇中アニメにかなり力が入っており、本当に面白そうに見える。同じアニメ業界を描いた作品でも、『SHIROBAKO』とはまた違った切り口の物語が展開される。

 

 

アニメの方はともかく、映画に関してはこれもうちょっと人気あっても良かったんじゃないかな、みたいな贔屓目の作品も混じっている。ここまで書いておいて何だが、十づつ挙げるのはちょっと多すぎた。次にやるときは、半分にするかタイトルを挙げるだけにしておこう……。それではまた来年。