四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『響け!ユーフォニアム3』第1話”あらたなユーフォニアム”の感想。

アニメの一話毎の感想とか面倒くさくてやってられん……そう思っていたが、実際に放送されているのを見たら身体がウズウズしてこの溢れる気持ちをどこかに書き記しておかないと気が済まなくなってしまった。だって『響け!ユーフォニアム』の続編が放送されるのを、2019年の5月に制作発表されてからずっと待っていたのだから!

 

今回のTVシリーズは主人公である黄前久美子がついに高校三年生に。2015年と16年に放送された一年生のエピソードを経て舞台は劇場へ移り、『リズと青い鳥』『誓いのフィナーレ』『アンサンブルコンテンスト』という3つの劇場用作品で二年生のエピソードが描かれ、そして今回ふたたびTVシリーズに舞い戻ってきたというわけだ。高校生活最後の年ということで将来の展望を視野に入れつつ、吹奏楽部として全国大会金賞に挑戦するラストチャンスでもあり、これまでの集大成となる物語になることは想像に難くないだろう。

 


最近は作画演出の良いアニメがかなり増えている実感があるが、それでもなお京都アニメーションのクオリティは突出していて、一秒たりとも目が話せない情報量に最初は見てて少々疲れてしまった。だって…見るべきところがあまりにも多すぎるから。

 

まず冒頭から原作とかなり違っていて、あれ…こんな感じだったっけ?と思わず原作を引っ張り出した。読んだのが5年前なので自分の記憶違いだろうかと不安になったが、やはり全然違う。大筋は原作をなぞるはずだが、既読でも何が飛び出してくるのか分からないという点はアニメ版の醍醐味と言えるだろう。冒頭のシーンは現在ではないおそらく未来の話であり、原作でもそう匂わせてはいるのだがシチュエーションがやや異なっていて、映像ではこまごまとヒントになりそうなものが散りばめられている。楽譜やバックで流れている『ディスコ・キッド』の曲は5周年記念ドラマCD『きらめきパッセージ』で久美子がやりたがっていた演目でもある。ということはつまり……?

 

そして夢から目覚めた久美子が登校するいつもの風景は、それだけであのときのユーフォが帰ってきた!と思わせるのに十分なものであった。宇治川沿いのあじろぎの道を通り宇治橋のたもとで麗奈と合流し、京阪電車六地蔵へ。途中の黄檗で葉月が乗り込んできて、駅の改札を出たところで緑輝が走ってやってくる。うーんこれだよこれ。

 

優子と夏紀から部長に指名される場面も短いながらようやく映像化されたのも良かった。なんというか、改めて触れられると彼女たちもついに北宇治を去ってしまったのだという実感を伴ってきて淋しくなってしまう。それにしても今回はやけに美智恵先生の存在感が大きい。冒頭にも出てきたし、職員室で久美子を叱る声にもインパクトがある。2年生編じゃセリフ殆ど無かったせいかな。

 

3年生の久美子のクラス、吹部が葉月と緑輝、釜屋つばめの他に4人ほどいると原作には書いてあったのだが、これまでしっかりアニメを見てきた人にとっては非常に馴染みのある四人が描かれていて、なんだかすごく嬉しかった。かつてモナカ組だったトランペットの吉沢秋子、味噌汁ぶっかけご飯でおなじみフルートの小田芽衣子、メカクレが特徴的なクラリネットの高久ちえり、アンコン編でも絡みがあったホルンの森本美千代。セリフはほとんど無いが一年生編の最初からずっといる彼女たちはもはやただのモブキャラではないのだ。だがここで原作では転校生として紹介されるはずの新キャラ・黒江真由が来ない。驚くほど大胆な原作改変だ。

 

部活の場面ではアンコン編から部長としてやってきたものの、まだたどたどしい感じの久美子だが、前年の天才型だった優子に対して調整型の部長としてそれなりに愛されるポジションとして頑張っている。そしてすっかりツーカーの仲になった久石奏を筆頭に、ちょっぴり先輩らしくなったような何も変わっていないような低音パートや多少の先輩風を吹かせている他の新二年生たちの姿を見てなんだか嬉しくなる。特にぶりっ子全開で低音パートの紹介をする久石奏の姿はそれでこそお前だ!という感じ。2年かけて弱小校から強豪校へと変貌を遂げていった北宇治高校吹奏楽部、原作ではすでに強豪校として認識されていて新入部員含めて部員が100人超えていたが、アニメでは90人ほどに留まったのはさすがに描くのが大変なのだろうか。まあ人数に関しては原作通りだったことがまず無かったから……。

 

その後アンコン編同様に放課後に久美子と麗奈が肩をぶつけながらじゃれ合う光景は、二人の特別感を表すのに一役買っていて良かったし、帰り道で聞こえてくる『ムーンライト・セレナーデ』がユーフォニアムの独奏だとちょっぴり不穏な感じがしてくるから不思議なものである。そして初登場が大幅に遅らされた黒江真由と放課後の屋上で邂逅には運命的なニュアンスが付加されたかのようで、卒業した田中あすかを思わせるような銀のユーフォニアムの使い手ということも相まって、”新たなユーフォニアム”の登場にどこか不安を感じさせるような「そして次の曲が始まるのです」のセリフは波乱の幕開けを予感させるものだった。第一話はこれまでのおさらいをしつつ久美子や吹部の現状を描くのに重点を置き、次回から最終章の本格的なスタートとして一話の最後に強い引きを作る……そんな感じの原作改変のように思えたし、アニメとしてはそれは正解だったと思う。

 

第一話にして原作を既に100ページ弱進めてしまったのだが、それでもハイペースには感じなかったのは再構成の妙だろうか。作画も演出も期待以上の出来に仕上がっていたので、これからの展開をじっくり見守っていきたい。まず来週まで1話を10回見返そうっと。