四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『響け!ユーフォニアム3』第2話”さんかくシンコペーション”の感想。

 

まずは2話で初めて流れるOP。現在から過去へ、そして未来へと時系列を進みながらキャラクターが次々登場する映像の構成には、本当にこれまでの集大成といった感じがあるのだが、のぞみぞ(希美とみぞれ)がいないのは正直ちょっと意外だった。あと小笠原晴香の制服の下にインナーが見えるのは歴史修正されてるな…。前は誰も制服の下にインナーを着ていなかった。映像に宇治の四季の景色が挿入されるのはコンクールの自由曲と同様のモチーフだろう。演奏シーンではコンクールメンバーが誰になるのか微妙に分かってしまう。これまで出られなかったあの子はどうなるのか……というのも三期で気になる点のひとつだ。

 

Aパート。原作では始業式の日に転入してきた黒江真由が、アニメでは少し遅れて二話の冒頭に。それに伴って真由が吹部に入る流れも結構変わっている。福岡から転校してきたこともあって、原作では博多弁で言わされがちな「すいとーよ」を言わされている真由だが、せっかくなのでこれはアニメでも欲しかった。真由は吹奏楽の強豪校である清良女子、しかも一年二年共にコンクールメンバーという凄腕のユーフォ奏者だが意外にも吹部に入ることには遠慮がちである。久美子は深く考えずに真由を積極的に部活に誘うが、これがどれほどの影響を及ぼすのかは現時点では真由しか意識できていないのだろう。部活を続けることにもそれほど拘らないのも、幼い頃から転校を繰り返してきたことで学んできた悲しい処世術であろうか。

 

例年5月に行われるサンフェスの説明シーン。最上級生になって初めて分かる先輩の苦労、よくわかる。麗奈が話している最中、新一年生の義井沙里がちらっと目配せをするカットが入る。カメラアングル的に同じ一年生の眼鏡の子あたりだと思うがここではまだ理由は分からない。解散になった後つばめが久美子にすずめの様子を聞いてくるが、これは後で理由が分かる。”あの子ちょっと変わってる”とはつばめ談だが、どこがちょっとじゃい!と言いたくなること請け合い。

 

低音の教育係を務める加藤葉月に対する二年生の鈴木美玲の目線がとても優しい。二年生編で色々あったことを思うと微笑ましい描写である。わだかまりが無くなって信頼関係が生まれ、いい顔をするようになった……。最初は素人だった葉月も、三年生になって貫禄が出てきたと思う。一年生が初めて金管楽器のマウスピースに挑戦。自分も自衛隊でラッパを吹いたことがあるから、この最初のステップがとても懐かしく思える。最初はとにかく力技で唇を震わせて音を出していたものだ。香炉峰ネタは原作にもあったがアニメは少し捻ってある。新一年生の針谷佳穂ちゃんは笑いの沸点がとても低いので低音のマスコット的ポジションとしての活躍が見込めそうだ。真由の使っている銀のユーフォニアムは二年前の副部長・田中あすかが使っていたものと同型なのでつい重ねてみてしまう久美子。

 

奏と真由のやりとり自体は原作にもあるが、静かにバチバチやっている二者面談はアニオリ。奏が真由の存在をかなり警戒していることが伝わってくるシーンだ。奏にとって真由は想像もしていなかった伏兵にほかならない。真由は自分のせいで誰かがコンクールメンバーになれなかったら…ということを言っていたが、その一番の対象は他ならぬ奏だからである。埼玉栄吹奏楽部で全国金を取ったことのある吉川優子役の山岡ゆりさんが言っていた(と思う)ことだが、吹奏楽でユーフォ三人編成というのはかなり珍しいらしく基本は二人らしい。真由が入部すると、先輩大好き久石奏は久美子と一緒にコンクールに出られる可能性が低くなってしまう。前年のコンクールでユーフォは夏紀・久美子・奏の三人編成で、みんなでメンバーに選ばれてよかった的な雰囲気を醸し出していたが、今思うとこれは田中あすかの抜けた穴を埋めるためには三人必要だった…ということなのではないか。

 

真由が北宇治を選んだのは吹奏楽部が上手かったからとのこと。合奏が好きだからという理由を添えているが、原作では自分が合奏に参加していても他の人の下手な演奏を聴くのは嫌だからとナチュラルに棘のあるセリフを放つ。こういうネガティブな印象を抱きかねないセリフはだいたい消されがちなので、アニメオンリーと原作派では真由に対する印象は結構変わるかもしれない。そして真由の小学校のときのあだ名はママ。学校の先生をお母さんって言っちゃう現象ってマジで何なんだろうね……。過去のあだ名を明かすときの真由のポーズが非常にあざとい。

 

コンクールの自由曲選び。ここで提示される『雨夜の月』『蜉蝣奇譚』『一年(ひととせ)の詩 ~吹奏楽のための』はいずれも今作品オリジナル曲。原作では一年の詩以外は『ノエルの娘』『滅びゆく島の幻想曲』だった。滝は今年に限っては意見を久美子たち三人に尋ねることにしたらしい。滝に指導を受けた生え抜きの生徒である久美子たちに対する信頼か、それとも迷いか。なんだかんだ言って滝も音楽教師としてまだそれほど経験豊富なわけではない。電車で帰宅するシーン、二年生のときはそれほど主張しなかったせいで忘れがちだが、麗奈はかなり強烈な滝信者であったことを思い出させるやりとり。

 

久美子と別れた後コンビニに入る秀一。それを待つ麗奈。今回のタイトルどおり話の中でいくつかの”さんかく”が描かれるのだが、久美子・麗奈・秀一の三人もそのひとつ。麗奈と秀一で久美子を案ずるスタンスにも差があるのが分かる。麗奈は久美子と秀一の関係を知っているので、秀一が送っていくというのを必死に振り切ろうする麗奈のボヤきが面白い。秀一と麗奈が一緒に帰るという展開は別のシーンながら原作にも存在しているのだが、原作読んでたときはこれまさかの秀×麗ある!?みたいな妄想したもんだ。いやこの辺の顛末については原作でも触れられてないから何も分からないんだけど。

 

ここからBパート。空白の進路調査票。いまだ定まらない久美子の将来は、3年生編において重要な事柄のひとつ。朝早くから練習するすずめと沙里。すずめは早くもチューバの音が出るようになっていて上達が早い。北宇治のクラ(リネット)のレベルが高いというのは、アンコンで全国大会出場を果たしたことからも納得できる。葉月と一緒に教育係をやっている二年生・剣崎梨々花に褒められていたことを伝えられて目を輝かせる沙里。りりりん先輩という呼称はアニメではここが初だったかな? みぞれの心を開かせたこともあって彼女もまた”窓を開ける”のがうまいようで、早くも一年生に慕われている。

 

原作では運動場でのサンフェス練習だったがアニメでは体育館に。後輩から月永先輩と呼ばれると求と呼べと訂正する月永求。求は源ちゃん先生こと月永源三郎と何らかの確執があるらしく血縁であることを知られたくない…らしい。正直原作でも結構持て余していた要素だと思うのでもう触れるつもりはないのかと思っていたくらいだ。原作では新品の体操服を纏っていたはずの真由はアニメでは清良女子のジャージを引き続き着用するようだ。ポニテ真由いいっすね…! 奏が久美子たちのいる二階まで上がってくるが、基本的に久美子を見ているものの目線をときどき真由の方も見ていてめっちゃ意識しとる!! 自分から久美子だいすき! といじる割には自分がいじられる側になると照れる奏。かわいい。

 

つばめがサンフェスでカラーガード(旗)をやっていることに不満を感じて直談判してくるすずめ。つばめがマリンバをやっている理由はアンコン編で描かれた通りだが、すずめはそれを知らないので3年なのに花形の楽器を担当できないことに不満を感じている。悪意はないものの思い込みが強すぎて暴走する感じはかつて吉川優子が中世古香織のために行動したのに近い。三年生編の久美子はこうした形でかつて部に起こったトラブルを今度は当事者として解決に導いていかなければならない立場になった。だが今回は軽いジャブみたいなものだ。久美子がもっと姉を信じるようにとすずめを諭すのは、過去の経験が活きてるなぁと感慨深くなる。

 

いつものベンチ。さっそく面倒が起こり空と同じように久美子の心も曇っていたが、そこに麗奈が現れる。久美子は釜谷姉妹の問題には兆候があったと思い、去年部長だった優子なら先にケアしていたに違いないと思っていた。これはアニメでは描写がなかったが、麗奈はそうしたケアに気を使いすぎたことが去年関西大会止まりだった原因ではないかと思っている…というのが原作の描写である。この辺は三年生編における麗奈のドラムメジャーとしての姿勢にも反映されている。

 

麗奈が自由曲の候補を秀一に先に聞いたら同じ曲を選んでいたという。北宇治が全国で演奏したとき最初の一音は何がいいかと考えたとき、それはクラリネットの音であった。これは多分、クラリネットが北宇治のアンコン代表だったことと無関係ではないと思う。二人…いや三人の選択が一致したとき、雲が割れ陽の光が差し込む。こんなシーン原作には無かったよ! 自由曲選びがこんなにドラマチックに演出されるなんて思わないよ!

 

ここで三年生編の自由曲であるオリジナル楽曲『一年の詩 ~吹奏楽のための』が初披露となる。原作を読んだとき、表現が壮大で全然曲がイメージできん!ってなっていたので、やはり実際に曲が流れるのは良い。楽曲と共に夕暮れ前の宇治の景色が流れていくが、途中に出てくるユニチカ宇治工場の煙突は今はもう存在していない。自分が聖地巡礼で宇治を訪れたとき既に煙突は解体工事の真っ最中だった。劇中はまだ2016年か2017年くらいのはずだから。それはまるで移りゆく時の象徴のようでもある。いつの間にか手を重ねて聴き入っている二人だが、濡れたベンチに座っていたことを思い出して我に返る麗奈に笑ってしまう。

 

コンクールで演奏する曲が決まり音楽室で楽譜をみんなに配るシーン。クラリネットの高久ちえりが映るのは、のちに何らかの役割を果たすので印象付けておくためだろうか。一年生の眼鏡の子も今回妙に目立っていると思うのは決して気のせいではないはず。麗奈は人差し指を高く掲げ全国金を目指すと高らかに宣言する。これは一年生編の関西大会で吉川優子が中世古香織と一緒に全国に行きたいと言ったときに行ったものと同じゼスチャーだが、麗奈がそれを意識したのかどうかは分からないがそうだったらいいなと思う。部員たちがそれを拍手で歓迎する中、どこか上の空といった感じで拍手する真由。どこか様子がおかしい沙里。全国金賞を取るために高難易度の曲を選んだということは、これからの練習はより過酷なものになるはず。一年の中でも特に優秀な彼女には、それが分かっているのかもれない。

 

EDは未公開お蔵出しの北宇治カルテットの幼い頃や高校以前のスチルが流れる。麗奈の母親ってあんな感じだったんだとか、葉月が中学の頃テニス部だった頃とか、サファイアって昔から全然変わってないな…とか。サファイアが眠っている写真で着ているのは聖女時代の制服だろうか。『たまこまーけっと』に出てきたうさぎ山高校とモデルが同じならジャンスカのはず。久美子の写真には中学時代の佐々木梓といっしょに映っているのは嬉しいサプライズ 原作ではちょこちょこ出てくるのだがアニメでは一期以降ほぼ出番が無いため非常にレアだ。EDの最後に出てくるブローチも四季をイメージしたものになっていて自由曲のイメージと重なる。

 

1話と展開が前後する部分があったので、今回は原作の160Pくらいまで消化。配信で水曜に見ているせいか、もう少しで一週間遅れになってしまうところだった! うーん…こんなに感想が長くなるとは思わなかったが、原作との違いを見ればアニメがどういう意図で演出しているのかがわかりやすくなるのでついやりたくなってしまう。3話も非常に楽しみ。