四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『恋はデジャ・ブ』鑑賞。

『恋はデジャ・ブ』は1993年に公開された、ゴーストバスターズなどで知られるビル・マーレイ主演の映画。いわゆる”ループもの”映画の黎明期の名作としてよく名前が挙がるのだが、生憎これまで見る機会が無かった作品のひとつ。最近サブスクに来たので、正月の暇な時間にせっかくだから見てみることにした。

 

テレビ局の気象予報士であるフィル・コナーズは、プロデューサーのリタ・ハンソンとカメラマンのラリーと共に、2月2日に開催される春の訪れを占うお祭り・グラウンドホッグデーを取材するためにペンシルバニア州の人口6782人の小さな町パンクスタウニーに向かうことになった。自分のお天気キャスターとしての人気を鼻にかけるフィルは、田舎町までわざわざ行くことにあまり気乗りしない様子で減らず口を叩き続ける。祭りの前日に町で一泊し、グラウンドホックデー当日を迎えたが当然取材にも身が入らない。ピッツバーグへの帰路、予想外の大雪に見舞われ道路は通行止めになり、引き返したフィル一行はパンクスタウニーで一夜を明かしたが、フィルが目を覚ますとそこはグラウンドホッグデーの当日、2月2日の朝であった。

 

今ではさほど珍しくなくなった、タイムループを扱った物語。だがこの作品が後発の作品と異なるところは、なんで時間が戻ってしまうのかという部分にいっさい触れないところ。普通だいたいの作品はなんで時間が巻き戻るのかというのが話を引っ張るミステリー要素として物語の縦軸になっていることが多いのだが、この作品は最後まで理由は明かされない。その分延々と繰り返す時間の中で、フィルが様々なことを試しながら登場人物の異なる側面を描写するという、ループものとしての素朴な楽しさを最後まで存分に味わうことができる。最初はループすることに戸惑い、慣れてきたらその辺の異性を口説き落としてみたり、車を暴走させて留置所に入ったり、いつも見かける浮浪者に施しをしてみたりするものの、2月3日の午前6時になると2月2日の午前6時に戻ってしまう。

 

当初のフィルは自分勝手であまり好感の持てる人物ではない。最初はループするのをいいことに強盗したり女性を弄んだりしているのだが、その興味が同じTVクルーであるリタに向けられてから徐々に変化が訪れていく。何度やり直してリタのパーソナリティーについて情報収集してもリタが落とせないので、自暴自棄になって自殺を繰り返した後自分を磨いたり善行に勤しんだりする様は、仏教で言えば無間地獄に落ちた人間が責め苦を受け続けた果てに悔い改めたようでもある。ついに真人間となったフィルは誰からも愛される存在になり、フィルもまたいつの間にかパンクスタウニーの町を愛するようになっていた。最後は絵に描いたようなハッピーエンドでだが、ループの理由はやっぱり分からないので、その辺はそういうもんだと思うしかないだろう。

 

ループものとしてやって欲しいことは一通りやってくれるし、基本的にコメディタッチなので気楽に見られる作品に仕上がっており、非常に見やすい作品だったので正月の暇な時間にサクっと見るには丁度いい映画だ。これでようやくループ系の映画に出会ったときに、ああこれは『恋はデジャ・ブ』だねと言えるようになった。