四十の一部始終

今年で四十歳になりました。一日一回更新が目標。

スカイリム日記34『見えぬものを暴く』

 

熱心にマーラを布教していたある日、リフテンの街にドラゴンが舞い降りた。いくら強固な城壁を誇る要塞とはいえ、上空からの攻撃には意味がない。住民総出によるドラゴンとの戦いが始まった。俺も被害を拡大させまいと必死で魔法を放つ。しかし広場にいた物乞いのエッダがドラゴンの氷の息によって命を落とした。

 

 

多分初めてのドラゴン襲撃だったのだろう。住民たちは呆然とその死体を見つめていた。戦いが終わるとエッダの遺書が見つかり、その内容によるとどうやら俺が相続人として指定されていたのだ。俺はただ何回か金を恵んでやっただけだったのだが、そこまで恩を感じているとは意外だった……。

 

 

人の死を目の当たりにして少々感傷的になってしまった。家を買ったばかりなのだが、少しの間街から離れたい気分にかられる。俺は長い間一緒に旅をしたリディアと分かれ、新たに俺の私兵となったイオナを同行させることを決意した。ホワイトランの家の留守を任せられるのはリディアしかいない。俺たちはしばしの間別れを惜しんだ。

 

 

そして次にイオナのための装備を調達する必要があった。リディアにはオリハルコン製のオークの防具一式を与えたのだが、同じではつまらない。鍛冶の技術を磨くためにも俺はドワーフの装備一式を作ることにした。

 

見た目はドワーフオートマトンの外装そのものである。非常に重いがその分高い防御力を誇る。イオナは屈強なノルドの女戦士であり、重装備も難なく着こなしてくれた。ただしガチャンガチャンと歩くたびに煩い音が出るのが難点だ。それについては靴に消音の付呪をすることで解決しよう。

 

 

前にスクゥーマの運び屋を探しに闘犬を行っている洞窟へ行ったのだが、そのとき北へ抜ける道を発見していたので、次の目的地はストームクロークの本拠地でもある要塞ウィンドヘルムに決めた。

 

だがその道中、俺はひとつの遺跡を発見した。そこはウィンターホールド大学が探し求めているマグナスの杖の在り処ではないかと目されている、ムズルフトの遺跡であった。俺は大学の命令に反発してあえて遺跡を探さなかったのだが、目の前を通ったとあれば話は別である。あれから結構な時間が過ぎた。そろそろ何食わぬ顔で大学に戻ってもいい頃だろう……。

 

 

中から駆動音が鳴り響き、ところどころから蒸気を放つそこはドワーフの遺跡に違いなかった。入ってすぐのところに遺体が転がっていて、所持していた文書からガヴロス・プリニウスという名の男であることが分かった。ローブを着た姿からサイノッドとはこの男を含んだ魔術の研究者の集団のことを指しているのだろう。俺は男の懐にあった鍵を見つけ、扉を開けて先に進んだ。

 

 

ムズルフトの内部は以前入ったドワーフの遺跡とそれほど違いはなかったのだが、ドワーフオートマトンの他に暗闇に生息するファルメルがところどころに天幕を立てて居住しており行く手を阻まれた。ファルメルはシャウラスという毒を持つ巨大な虫を従えており、面倒なことこのうえない。そしてところどころでサイノッドのものと思われる死体が転がっている。

 

鍵がかかって開かない扉を尻目に奥へ進んでいくと、アバンチンゼルで戦った巨大なオートマトンドワーフセンチュリオン・マスター)が宝箱を守っていた! あまりに狭い場所での戦いで攻撃を満足に避けることもできず苦戦させられたが、サングインのバラによってドレモラを召喚し、三人がかりで反撃に転じた。

 

 

オートマトンを倒すと宝の中から扉の鍵が出てきて、それで先に進むことができるようになった。最深部ではより強力なファルメルたちが待ち構えており激しい戦いとなった。戦闘終了後に錬金術の素材となるファルメルの耳を切り落として集めていたのだが、ファルメルの内の一人が大きなクリスタルの塊を持っていた。なぜファルメルがこのようなものを……? 疑問は尽きなかったが、とりあえず物珍しさから持っていくことにした。

 

 

最深部の一角には固く閉じられた扉があり、どこにも鍵はなく内側から閉められているようだった。コンコンとノックしてみる。ファルメルにはドアをノックする文化はないはずなので、もし中に誰かいればこちらが人間だと分かってくれるだろう。

 

ノックに反応して中から声が聞こえてきた。どうやらこちらをガヴロス……遺跡の入り口で倒れていたサイノッドと勘違いしているようだ。扉が勢いよく開かれる。ローブ姿のサイノッドが姿を現すが、こちらがガヴロスではなかったことに狼狽えていた。

 

 

ガヴロスは死んでいた、そう告げると男は発狂寸前のようにおかしくなったが、俺が先程拾ったクリスタルを観ると様子が一変した。それがあれば俺の計画が実現できる! 悲嘆に暮れていた声がすぐさま興奮したものに変わったのだ。彼は長いことここに閉じ込められて情緒不安定になっているのかもしれない。下手に刺激しないよう話を合わせることにしよう。

 

 

道々説明しよう、そう言ってパラトゥスは部屋の奥へと歩いていく。途中にはベッドロールがいくつも敷いてあり、食べ物の入った樽がいくつか置かれていて、ここで生活していたことが伺えた。しかしベッドの数に対して一人しかいないとは、一体何があったのか。やはり長いこと閉じ込められて頭がおかしくなってしまったのか?

 

 

部屋の奥には大きな球体のようなものが安置されていた。遺跡の他のものと同様にドワーフ金属で作られており、魔法の灯火によって鈍い黄色の光を放っている。男はこれをオキュロリーと呼んでいた。

 

その球体の周りを螺旋状に登る道があり、その頂点では天窓から差し込む光がクリスタルによって増幅されて強い輝きを放っている。そして俺が持っていたクリスタルを中央に置けと男が言ったのでその通りにした。すると仕掛けがひとりでに動き出し天井から差す光を集め始める。そしてその光は乱反射しそれぞれ違う角度に向かって放たれる。

 

 

これだけなのか? そう思っていると、クリスタルを暖めることによって膨張し、冷やすことによって収縮し、光の角度が変わるのだと男に説明された。つまり魔法によってなんとかしろということだ。

 

しかし壁に光を当てたところでなんだというのだ? 俺は他にも何かないかと探してみると、三つのスイッチによって天井に仕掛けられた三つの円がそれぞれ動くことが分かった。そしてその円には同様のクリスタルがひとつはめ込まれている。

 

もしかして、反射した光をそのクリスタルに当てればいいのか!? 俺はその閃きを信じて、右手と左手からそれぞれ火炎と氷雪の魔法を放ちながら根気よく調節していく。やがて中央から放たれる三条の光がそれぞれ壁のクリスタルへと当たり、その光がある一点へと収束していった。

 

 

これは地図だ! スカイリムを含むタムリエル北部の地図が壁に投影されていて、その一点にはひときわ強い光で印が点けられている。スカイリムのほぼ中心地。地図を見るとそこはラビリンシアンという巨大な古代の遺跡群のある場所である。そこにマグナスの杖があるとするなら、なかなかにお誂え向きの場所のように思えた。

 

 

しかし男にとっては満足のいく結果ではなかったらしく、不機嫌な表情でさっさと帰れと激しく追い立ててくる。ずっとその場にいたら噛みつかれそうな剣幕だったので、すぐにその場を離れた。

 

帰り道、久しぶりにサイジック会のネリエンの幻影が姿を現し、一旦大学へと戻るようにと忠告してきた。しかもできるだけ早く。今大学では何かが起こっているらしい。俺はムズルフトを出ると、ウィンターホールドへの道のりを急いだ。

 

 

【続く】

『サマータイムレンダ』完走。

 

サマータイムレンダ』完走。最後まで緊張感のある展開が続き、どんでん返しの連続で楽しませて貰ったのだが、バトル・アクション要素が色濃くなる後半と比べて、手探りの状態が続くミステリアスな前半の方がどちらかと言えば好きだった。こういうのはループもの作品としての常というか、『ひぐらしのなく頃に』でも似たような感想だった。終盤に超人バトルが始まるのも、毎回OPで作者の名前と一緒にジャンプだって出ていたのだから、いつそうなっても不思議ではなかったのだが。

 

お話としての種明かしは12話まででおおむね終わり、後半戦はどうすれば黒幕を倒し勝利条件を満たせるのかという話になってくる。主人公がループできるのはいいとして、黒幕の方もそのループを利用して罠を仕掛けてくるというのは新鮮で、ただループを繰り返して自分だけ有利に運ぶというわけにはいかなくなり、いかにして相手の裏をかくのかという頭脳戦が展開。ちょっと目を離すとわけがわからなくなりそうだったので、見ているこちらもじっくり腰を据えて観る必要があった。無能な味方が足を引っ張るということがなく、視聴にあたって不必要なストレスを感じないのは評価できる。

 

それに伴って潮が次々と反則的な能力に開花し、どんどん便利すぎる存在に。これくらいやらないとヒロインが空気になってしまうというか、逆に終盤の澪は戦力外になってしまいちょっと空気になっていた。色々な意味で切ない。影澪の最期も特に描写がないのは惜しいと思ってしまう。

 

最終話が一話丸々エピローグというのはかなり嬉しかった。気に入った作品でも、ここが短くて物足りないアニメは結構多い。何もかもが終わって平和になった世界をじっくり見たいという希望はなかなか叶えられないものだ。過去が変わってしまったらバタフライエフェクトで現在への影響がとてもつもないことになると思うのだが、潮によって書き換えられた都合の良い世界だから問題ないということなのだろうか。それとも黒幕は本当に長生きすることだけが目的で、日都ヶ島を含めた世界にほとんど何も影響を及ぼしていなかったということなのだろうか。言いたいことは山ほどあるが、個人的にはひづるさんが元気そうで何よりだ。あれだけのことがあったんだから、こんなに都合の良い結末でもいいじゃないか。今はそういう気分だ。

 

アニメだけでもわりと満足しているのだが、原作から削られた要素もそれなりにあると聞く。このアニメで一番「えっ!?」と思った部分は朱鷺子の扱いについて。前の周で敵対していてこれからどうするんだ? と思っていたのに、次の周で特にエピソードもなしで仲間入りしているのはさすがに戸惑った。そこはもうちょっとこう……何かあるべきだと思う。この辺りは漫画ではフォローされているらしいので、時間があったら漫画の方も読んでみたい。

 

ひぐらしのなく頃に』が続編で勝手にやらかして死んだので、ループものの新しいスタンダードとして『サマータイムレンダ』がその枠に収まって欲しいなと思う。ただ続編とかは無しでこれっきりにして欲しいとも思う。

不寝番(ねずのばん)

野菜泥棒は日曜から木曜まで毎日少しづつ盗んでいった。

被害総額は五千円にも満たないが、完全に舐めきった犯人の行動に怒りが燃える。

その程度の窃盗にムキになるより

暖かい布団で眠る自由を謳歌したほうがいいに決まっているのだが

これはプライドの問題である。

自分のものは自分で守りたい。ただそれだけのことだ。

 

よって自衛隊以来の不寝番を敢行することにした。

まだそこまで寒い時期ではないから、モチベーションは十分にある。

真冬の富士演習場に比べればどうってことはない。

自衛隊にいた経験を最も活かしている瞬間だと思った。

昼の間に計画を練る。

畑が見えるところに車を止め、夜の間見張る。

はっきり言ってかなり目立つしわざとらしいが、抑止力になるはず。

犯行現場に違和感を撒き散らし、そもそも近づかせなくさせる。

違和感にも気付かないような馬鹿だと逆に困ってしまうのだが。

作業場にも夜の間明かりを点けておいた。

 

もしも野菜泥棒が現れた場合

複数犯なら下手に接触せず、警察を呼びつつ動画撮影など証拠集めに努める。

単独犯なら車の中にビデオカメラを設置しつつ

スマホのカメラで撮影しながら犯人に詰め寄る。

被害規模からしておそらくこちらの公算が高い。

いざというときのための棒や縄は畑の作物の中にこっそり隠した。

あとはただ待つ。夜明けまで。

 

この日は夕食の後すぐ就寝し、目が覚めたのは23時頃。

近所のマクドナルドで腹ごしらえをし

モンスターエナジーで眠気を飛ばして準備万端。

全身黒尽くめの格好。何かあったらこちらの方が容疑者扱いされそうである。

0時30分から位置についたが、車のエンジンを切っていたので結構寒い。

1時間どころか30分毎にトイレに行く羽目になった。

2時頃までは車がまばらに行き交い、まだ泥棒が現れるような雰囲気ではなかったが

3時頃になると一気に車の往来が少なくなり10分に1台走っていればいいくらい。

新聞配達のバイクも動き始め、静けさの中に緊張感が走る。

 

当初第一容疑者は、新聞配達だと思っていた。

雨の日でも畑の前を通る理由があり、最も静かな時間に動いているからという理由だが

結論から言えばあらぬ疑いをかけてしまった。

新聞配達の仕事は盗みを働いているような時間はなく、いたって真面目に働いていた。

その後もまばらに人や車が通っていく。

畑に用事はないようだったが、今の状態では全てが疑わしく見えてくる。

徐々に空が白んできて、畑の隣にある運送会社のモータープールに人が集まってきた。

そうなるとさすがに盗みを働くようなものがいるとは思えなかった。

6時30分に現場を離脱。結局この日野菜泥棒は現れなかった。

 

はっきり言って宇宙一空虚な6時間であったが

何かが功を奏して野菜泥棒を追い払った。

三十までは夜勤も平気だったが、四十にもなるとちょっと辛く

一日休んで日曜日にもう一回不寝番をするつもりである。

土日は野菜泥棒も休むかもしれないし。

No more 野菜泥棒

 

三日続けて野菜泥棒に遭っている。

盗っていくのはなぜか大根を数本。

なぜか大根以外には全く手を出していない。

葉っぱをもいでその場に捨てていくので、盗まれているのがはっきりと分かった。

野菜は果物等に比べて単価が安く対した被害ではないが

ムキになって防犯対策するほどでもない被害なのが余計に腹が立った。

なぜなら被害が小さすぎて警察に言っても真面目に取り合ってくれないのだ。

一応パトロールしておきますねとは警察に言われたが

わずかな被害だけあって犯行もごく短時間のはず。

あまり効果があるとは思えない。

そもそもウチは道路に面している畑の割合が多すぎる……。

相手がその気になったら守りようがない。

今日は雨だからさすがに来ないと思いたいが

もし明日もやられていたら不寝番をするつもりだ。

ここらで一回シメておかないと調子に乗って

他の作物にも手を出さないとも限らない。

火垂るの墓の清太並にボコボコにしてやりたい衝動にかられるが

自力救済は法律違反になる。理不尽な話だ。

それくらいやらせてくれよ、頼むから。

スカイリム日記33『愛の書・完結編』

 

渦中のマスカルスから離れ、ディンヤ・バリュへの報告のためにリフテンへと戻ってきた。最初はこの街に長居することもないだろうと思っていたのだが、なんだかんだ言って治安の悪いこの雑然とした街にも慣れてきてしまったらしい。そろそろここに拠点を置いてもいい頃だろう。そう思って住居の購入許可を得るため、首長から仕事の斡旋を受けた。

 

 

街に広まるスクゥーマ(麻薬のようなもの)の売人を突き止めろということで、リフテン港の倉庫に侵入し、襲いかかってきた連中を叩きのめした結果得られた情報から、クラッグスレインと呼ばれるリフテンから北にある洞窟にスクゥーマの運び屋が滞在していることを突き止めたのだ。

 

 

洞窟内では闘犬が行われており、賭博に興じるならず者たちの巣窟であった。ギャンブラーたちの抵抗は大したことはなかったのだが、闘犬の胴元と思われる屠殺人の力は恐るべきものであり、振り下ろされる槌の一撃は俺の鎧でも受け止めきれるものではなかった。幸い猛者といえるほどの男はその一人だけだったので、リディアとの二人がかりでなんとか息の根を止める。一体この中の誰がスクゥーマの運び屋だったのかは分からないが、全員死んでしまった後ではもうどうでもいいことだろう……。

 

 

リフテンに戻り首長のライラ・ロー・ギバーに報告すると、今回の仕事の他にもリフテンの住人への助力をしたという評判も耳に届いていたらしく、そのまま従士に叙されることとなった。ただし従士として認められるにはリフテンに居住していなければならないとのこと。すなわち家屋を所有していることが条件だ。そのまま当初の目的通り8000ゴールドでハニーサイドと呼ばれる空き家を購入した。

 

 

ハニーサイドはホワイトランのブリーズホームと同じくらいの広さだが、向こうと違って二階が無い代わりに地下室があり、城壁の外へ直接出ることもできるという、要塞の守備は一体どうなっているんだ? という造りなのだが、便利といえば便利なので許容範囲だろう。そして家には首長から遣わされて俺の私兵となった、イオナという名のノルドの女が留守番として滞在することになった。

 

 

こうしてリフテンに拠点を置き、俺はマーラ聖堂の司祭ディンヤ・バリュに、マスカルスのカルセルモに関する一部始終を報告した。彼女は大層喜んでいたのだが、マーラのお告げはまだ終わっていないらしい。彼女にマーラのアミュレットを渡される。そのアミュレットを身につけることで、マーラの助けを求める最後の人の場所に導かれるのだという。

 

アミュレットを首にかけると、確かに微かな気配を感じた。だがそれは遠い。すごく遠い場所だ。俺は聖堂を出ると、アミュレットが指し示す方に向かって歩き始めた。

 

 

アミュレットの導きに従ってたどり着いたのはホワイトランの西、グジュカールの記念碑という塔が立つ古戦場である。近づくほどに、マーラのアミュレットからより強い気配を感じる。辺りを見渡すと、うっすらと人の影が見えた。いくらここが古戦場だからといっても、100年は昔の話だと聞いている。まさかあの亡霊がマーラの助けを求める最後の人だというのか?

 

 

俺は亡霊に恐る恐る話しかけてみたのだが、その亡霊は思ったより好意的で話が通じる相手だった。ルキという女の亡霊は、かつてここで全滅したグジュカールという民族の戦士の一人であるフェンリグという男を探しているのだという。

 

フェンリグは彼女の夫であり、ルキはグジュカール壊滅の報せを聞いて心配になってここまでやってきたのだが、結局見つけることはできなかったらしい。そして多分、そのまま力尽きてしまったのだと思うが、彼女自身は自分が既に死んでいることに気がついていないようだ……。

 

ここで俺が為すべきことはフェンリグを探すことだろう。これもマーラの使徒ならば当然のことだ。俺は彼女にそう告げてフェンリグを探し始めた。アミュレットが反応しており、そう遠い場所ではないはずだという確信があった。

 

 

塔から離れた古い墓地に一人の亡霊の姿があった。その亡霊は明日ここで戦争があるのだが、この野営地は見晴らしがいいので敵から狙われやすく気に入らないとうわ言のように話している。自分が死んだことを理解していないのだ。まさかこの男がフェンリグなのか……?

 

ルキの名前を出すと亡霊が反応した。あの塔の下にいると教えると、わざわざ家からこんなところにやってきたのは、さぞかし重要な事に違いないと言い、ついていくから連れて行ってくれとせがまれた。

 

 

夕暮のグジュカールの記念碑の下で、ルキとフェンリグはついに感動の再会を果たした。ふたりとも自分が既に死んでいることを認識しておらず、今の状況に混乱しているようなのだが、お互いを想う愛だけは今も朽ちずに消えていなかった。二人は永遠の愛を誓い合うと身体が浮かびあがり、天に昇っていった。マーラの愛は亡霊にすら及んでいる。自分にも、信仰心が芽生えつつあることが確かに感じられた出来事だった。

 

 

リフテンのマーラ聖堂に戻ると、ディンヤ・バリュは歓喜に打ち震えた。マーラの助けを求める恋人たちを救ったことで、俺はマーラの祝福を得た。何かに見守られているという安堵感があった。これが神……。

 

 

じんわりとマーラのぬくもりを感じていると、ディンヤ・バリュに紙の束を渡された。読んでみると寄付を募る文書のようだ。いくらマーラが素晴らしい神だと言っても先立つものがなければ信仰を広める活動もできない。世知辛い話だ。俺は喜んでリフテンの人々にマーラの恵みを配って回ることにした。

 

 

反応は人それぞれだ。快く受け取ってくれる者もいれば、心無い言葉をぶつけてくる者もいる。特にダークエルフたちは九大神ではなくデイドラを信仰しているせいで特に辛辣である。個人的にデイドラは神と呼ぶにははた迷惑すぎるので信仰しようとは思えないが、マーラは有益だし信仰する価値がある。ほら、お前たちには見えないのかこのマーラの慈愛が! 俺は実際目にしたんだ! どうして信じてくれないんだ!

 

そんな訴えも彼らには無意味のようだ。しかしあのエランドゥルもダークエルフだったがマーラに改宗したのだから、ありえないことではないはず。これからも継続的で熱心な勧誘が必要だろう。

 

 

文書を配り終わりリフテンの街を歩いていると、イヴァルステッドで面倒を見たファストレッドがバシアヌスと共に駆け落ちしてきていた。無職だったバシアヌスも今は鍛冶手伝いとして働いているらしい。喜ばしいことだ。理想と現実の差を味わったためか、ファストレッドの顔は決して満足しているとは言い難かったが、二人の関係がこれからも末永く続くことを祈るばかりである。

 

 

【続く】

『サマータイムレンダ』#01~#06まで視聴。

今はアニメを配信でしか見なくなったのだが、面白いらしいと聞き及んでいた『サマータイムレンダ』はディズニープラス独占だったため足が遠のいていた。しかしつい先日その縛りから解き放たれ、各種配信サービスでも見ることができるようになったので観始めたのだが……止まらなくなってしまった。

 

主人公である網代慎平は幼馴染である小舟潮の訃報を聞き、二年ぶりに和歌山にある日都ヶ島に帰ってくる。葬儀に参列する慎平だったが、かつての友人である菱形窓から潮には他殺の可能性があると教えられ、潮の妹である澪からも姉は何者かに殺されたのだと訴えられる。この島には住民と同じ姿をした”影”が現れることがあり、自分と同じ影を見たものは死んでしまうという伝承があった。澪は潮が死ぬ前に、その影を見たと言うのだ。その日から慎平の周囲に奇妙な出来事が起こり始める。そして潮の死について何も分からないまま、慎平は突然現れた二人目の澪に殺されてしまう。だが慎平が再び目覚めたとき、そこは島に着く直前のフェリーの中であった……。

 

伝記ホラー要素の強い、謎が謎を呼ぶストーリーのループもの、そしてちょっとしたグロという組み合わせは『ひぐらしのなく頃に』を連想させる。そして人口700人ほどの美しい海に囲まれた小さな島というロケーションで雰囲気もバッチリである。主人公と幼い頃から一緒に暮らしていた姉妹、島を訪れた黒ずくめの謎の女性、そして島に暗躍する影のせいで誰が敵で誰が味方か分からないという緊張感。グイグイ話に引き込まれていく。

 

最初はまるで状況が飲み込めないうちに殺されてしまうのだが、主人公の慎平は物事を俯瞰して見る癖があるという、いわゆる考察厨である。巻き込まれている状況にも冷静に対処し、試行錯誤を試みる。そのおかげでループしても必要以上に取り乱すことがないのでそういう点でのストレスは少ない。

 

だがそれ以上の、想像を超えた出来事に巻き込まれてしまうのもお約束である。とにかく次はどうなる? という展開の連続なので、一気見に向いた作品だと思う。1話を見たら2話が見たくなるし、2話を見たら5話まで見ずにはいられない。そして5話を見たらその続きも見ないわけにはいかなくなった。特に5話では凄惨な光景が繰り広げられつつ事件の張本人をチラ見させたりして、こういう話だったのかと認識を改めることになった。

 

ループものは起こった出来事を印象付けなければいけないためか、胸に顔を埋めたりパンチラしたりといったラッキースケベなハプニングが繰り返される。個人的には嬉しいが、視聴にあたっての障壁にならないよう祈るばかりである。特に澪の縞パンは毎回見せなければいけないノルマでもあるのだろうか?

 

物語も非常に面白いが、何より登場人物の一人である南方ひづるが良い。長身で眼鏡でロングヘアー、真夏なのに黒のパンツスーツに身を包んだ飾りっ気の無い容姿に、日笠陽子の知的で落ち着いた演技がバッチリ嵌っている。うーん、自分の求める眼鏡キャラの理想に限りなく近い。ついでに巨乳だ。一目でハートをガッチリ掴まれたものの、序盤はあまり出てこなくてやきもきさせられたのだが、6話でようやくスポットが当たったので色々な意味でこれから楽しみである。

『すずめの戸締まり』鑑賞。

公開日に観たものの、観終わった後に少し思うところがあったのでどうしたものかと一週間ほど間を開けることにしたのだが、結局考えは変わらなかったので、思うところをそのまま書くことにする。

 

単刀直入に言って、とてもよく出来た作品だったと思う。これまでの男子高校生から一転して女子高生を主人公に据え、前半はかわいいマスコットをお供に、笑いあり涙ありの列島横断ロードムービー。旅先で出会うのは皆いい人ばかりでテンポも良くストレスなど感じようはずもない。後半はかつてあった災害を回顧し、それも含めて前に進んでいこうという力強いメッセージを含みつつ、クライマックスでは物語もアクションもスケールが一段と大きくなり否が応でも盛り上がる展開になっていた。

 

前作・前前作はRADWIMPSのMVなどと揶揄されていたこともあったが、そういった勢いに頼った演出も封印し、ティーン向けの恋愛主体の物語からより広いターゲットを想定した、老若男女が楽しめるファミリー映画となった。

 

今回は『君の名は。』から8年にわたる新海誠ディザスタートリロジー(と呼ぶことにしよう。略してDT)の集大成にしてその区切りとなる作品であることは間違いなく、これまで以上に多くの人に愛される作品になるだろう。

 

 

 

だけど……自分には刺さらない作品だった。

 

ターゲットを広げるほど表現の幅が狭くなるのは皮肉である。粗く尖っていた部分を丁寧にやすりに掛け、綺麗で滑らかな切り口の作品になったなというのが『すずめの戸締まり』に対する率直な感想である。

 

作品作りにあたって様々な制約が存在することは想像に難くないが、今回は鑑賞中ずっとそれが気になっていた。これならどんなに作りが粗くて話が暗くて反社会的でビターなエンドと言われようと『天気の子』のほうが好きだったと自分なら言う。つまり『すずめ』は自分の好みからは外れていったことを意味する。

 

ただそれは必要なことだったのだと思う。『君の名は。』『天気の子』でも災害は描かれていたし、それが3.11の影響であることは誰の目にも明らかだっただろう。より多くの人間に観せるということは、誤解されるようなメッセージを発信することは避けなくてはならなくなる。そして『すずめ』ではついに東日本大震災そのものが扱われる。

 

『すずめ』でも震度4くらいの地震では誰も驚かなかったり、海岸線沿いにずっと高い壁が続き、人が住まなくなって自然が戻りつつある場所での当事者とそうでない者の認識の差など、作品内でもとりわけ印象に残るシーンがある。監督はこの映画を見ても震災を連想しない人間が1/3程度はいると見積もっており、既に過去のものになりつつある東日本大震災を、婉曲した形でなく直に出したかったという義務的な感情も理解できる。

 

大ヒット監督として、強い影響力を持つ一人間として、『すずめの戸締まり』は誤解されない正しい作品でなければならなかった。この辺の監督の意図は入場特典の”新海誠本”や週プレのインタビューを見たら全部書いてあるので、もう受け入れられるかそうでないかの差でしかない。

 

 

そういう意味ではこの作品は正しい。だからこそ、自分には刺さらなかった。正しいものが全てを救うとは限らないのだ。でもそれは新海誠監督のせいではなく、この時代のせいである。

 

 

 

 

 

 

思えば新海誠作品を初めて見たのは2002年のこと。アニメーション映画としてのデビュー作である『ほしのこえ』が発表されたが、時を同じくして『Wind -a breath of heart-』というPCゲームのOPムービーを担当しており、そこが初めての出会いだった。

 

このときの美少女PCゲームはアングラな市場でありながら大変な盛り上がりを見せており、新海誠はそこ突如として現れた超新星のようだった。その映像のクオリティは当時のエロゲーにはあまりにも不釣り合いなものであり、エロゲーなのにムービー買いなどという行為も発生するなど、局所的ながらちょっとしたムーブメントを呼んだ。

 

ゲームの方は正直あまり面白くなかったのだが、新海誠の名は強く脳に刻み込まれることになる。新海誠の作品はなんかエロゲーっぽいよねというイメージは、明らかにこのときの印象によるもの。新海作品を観るのはある意味その時代の空気感を思い出したいからというノスタルジックな動機は多少ある。

 

その後は『はるのあしおと』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』といった作品に触れ、2007年に自衛官になったと同時にエロゲーもアニメも何もかもから一時的に足を洗ったのでそれほど動向を気にすることはなくなっていたのだが、2016年に『君の名は。』を世に放ってからは一躍大映像作家の仲間入りである。思えば遠くに来たものだ……。

 

『すずめの戸締まり』はこれまでより明らかに一皮向けた作品であり、新海誠はさらなる飛躍の兆しを見せている。それはより自分の好みからより外れていきそうな予感であり、少し寂しさを覚えるのだが、変にアンチ化などせず生暖かく見守っていきたいものである。

 

鈴芽の友人でクラスメートでもある赤フレーム眼鏡の子を見たら、Z会のCM『クロスロード』を思い出したので家に帰って見直したけど、やっぱ良い。二十年前のことに思いを馳せながら、あと100回ぐらい見たい。