四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『響け!ユーフォニアム3』第3話”みずいろプレリュード”の感想。

前回水面下で進行していたあれこれが表沙汰になる回。大きな動きはないものの、京アニの描くキャラクターの細やかな芝居の数々を存分に味わうことのできる回となっているが、タイトル通りまだプレリュード(前奏曲)。本番はまだまだこれからだ。

 

早朝神社にお参りする義井沙里から始まるAパート。髪をかき上げる横顔が目の覚めるような正統派美少女の沙里だが、原作における彼女の実家は寺であった。寺なのに巫女の格好をして家の手伝いをするという何かがおかしい感じの設定だが、ロングの黒髪を白いリボンでおさげにしている彼女の髪型はこうしてみるとめちゃめちゃ巫女っぽさを意識しているデザインであると再認識する。

 

朝練のために学校に登校し、サンフェスの衣装について話す久美子と麗奈。よく毎年買い替える余裕あるなと思いつつも、マーチング衣装のデザインはアニメ版における毎シリーズの楽しみのひとつでもある。そのまま進路の話題に移るが、部長の仕事のせいか考える余裕がないと言う久美子に対して音大にすればいいという麗奈。音大行くにはピアノが必須になるし、学費はヤバいし、サラリーマン家庭の久美子に麗奈が言うほど気楽に決められるものではない。音楽という繋がりがなくなっても、果たしてこの二人は繋がっていられるのだろうか。

 

朝練に現れるつばめと沙里。吹奏楽経験者かつ真面目な性格で練習にも熱心な沙里だが、ふと久美子越しに麗奈が視界に入るとなにやら思うところがある様子。それにしてもこの吹奏楽部に沙里って二人いるから中にはごっちゃになる人もいるんじゃないかとちょっと心配になる(フルートの三年生・高橋沙里のこと)。この時点でサンフェスまであと10日。

 

校庭でのサンフェスの練習。日誌でのやりとりが描写されていて、今年は曲に難しい曲を選んだので練習についてこられない子をフォローしている余裕はないという・ドラムメジャー麗奈。過去の経験から落伍者を出したくない、全員揃ってこそ北宇治だと思っている部長・久美子。去るものは追わずという考えの副部長・秀一。三者三様のスタンスだが、全国金を目指すならば麗奈の考えはもっともで、そういう学校は2軍3軍と別れているところも多い。北宇治はまだ本気で全国を目指し始めてから日が浅く、そこまでのシステムを確立できているわけではないのだ。個人的に久美子は理想論に固執している気がしてちょっと危なっかしさを感じる。だが秀一は麗奈にもっと久美子をフォローしろと言われたばかりだろうが~!

 

2話で少し目立っていた眼鏡の一年生・ホルンの竹川さん(原作では橋川さんだったが変更になっている。部員の名前は日本のアーティストが元ネタなので、元ネタはタケカワユキヒデか?)が麗奈のスパルタ指導を受けて泣いてしまい、気まずい空気が漂う。竹川さんが隊列を抜けそれに付き添う沙里。麗奈自身もちょっとやり過ぎたかな…といった雰囲気を出しているが、強豪校になるための避けられない痛みといった感じではある。でもコンクール関係ないサンフェスの練習にマジになりすぎているような気がしなくもない。

 

サンフェスの衣装合わせを視聴覚室で行う吹部。こういうたくさんのキャラがわちゃわちゃやってる場面は情報量が多くて見るのが楽しい。今年は北宇治の譜面隠しの色に似た、翠玉色のジャケットに白いキュロットスカートという露出控えめのデザイン。個人的になんか凄い色彩感覚だ……。シャツが小さくて胸のボタンがはち切れそうになっている真由が久美子の元にやってくる。中学校の頃から胸がまったく成長していない久美子は巨乳の真由と自分のを見比べて天を仰ぐという、なんだか一期の頃を思い出す懐かしいノリだ。

 

真由は男性に好かれそうなタイプだと奏がボヤき、それに同調する久美子。そこに突然現れたサファイア川島がみんなを動物に喩え始める。奏を猫。思えば『誓いのフィナーレ』でもそんなことを言っていた。奏が高坂先輩は?と聞くと白蛇だと言われて固まる麗奈が面白い。麗奈に対してここまで物怖じせずに言える相手はサファイアくらいだろうな……。他にも佳穂はアルパカ、弥生はペンギン、すずめはパンダとサファイアの動物シリーズが続く。そして真由はクラゲ。主体性が無く海を漂っているように見えるが近づけば刺されることもある。サファイアの洞察はいつも鋭い。

 

とここで登場するのがクラリネットの2年生・平沼詩織と加藤樹。下手なのに先に帰る部員はおかしいと声を荒げて部長に訴えてくる。なんか似たような話が去年もあった気がするが、美玲の場合は上手いから居残り練習の必要がなくそのせいで他の人と馴染めないという話だった。しかし今回は根っこが違う。ここでも沙里が毎日居残り練習しているという話が出てきて先輩に評価されている存在なのが分かる。後輩二人を優しく諭す久美子だったが、練習場所に戻る途中に沙里が竹川さんと一緒に帰るところを目撃する。

 

朝練のために早朝から学校に来る久美子と麗奈。みぞれが卒業したので一番乗りはすっかりこの二人になった。所狭しと物が置かれている滝の机の上を見て、大人になることの大変さを感じる久美子。ノートに書かれている内容はミュージカル映画を見た感想らしく、珍しく滝が音楽教師らしいことをやっているなと感じる。つい口に出してしまったので大人になりたいとは思わないのかと滝に聞かれることになったが、未だに将来に対するビジョンが持てない久美子。大人になれば自動的に人から尊敬されるような存在になれると思っていたがそうではなく、環境によってそれは変わるのだと言う滝。机の上に置かれているミルクコーヒーは、わずかに残った滝の未成熟な部分を象徴しているようにも思えた。

 

朝練のために音楽室を開けるとそこにつばめと沙里もやってくる。底抜けに明るいつばめに対して暗い顔の沙里。先輩は部活楽しいですか?と聞かれて狼狽える久美子。沙里ちゃん、それは鬱の初期症状だよ! つばめが久美子に話があるから先に練習しててと言うと、沙里は麗奈と二人きりになるのを拒絶するかのような反応を見せてしまう。気まずくなって走り去ってしまう沙里。この日は雨が降っており、沙里の心境をそのまま映し出すかのような暗い画面だ。

 

つばめの話は一年の間で噂になっているという部長と副部長が付き合っているのかどうかという話。アニメでは麗奈との関係を強調するためか、幼馴染である秀一の出番が結構削られているので存在感がやや薄いが、二人でいるところは目撃されているらしい。原作ではサファイアと求が付き合っているのかという話も出てきたがアニメでは割愛。アニメで求の話を改めてフィーチャーするのかどうかはまだ読めないままだ。というのは前置きで、つばめの話の本題は麗奈の指導が厳しすぎるので一年生が集団退部するかもしれないという話だった。かつて優子・夏紀世代でもあった、北宇治吹奏楽部の集団退部事件。当時の顧問と先輩はやる気がなく、傘木希美を含めたやる気のある部員の方が退部してしまい、後に禍根を残すことになってしまった出来事だ。そのおかげで去年の三年生は非常に層が薄くなり、コンクールでも結果を残すことが出来なかった。吹部経験者にとっては麗奈の指導は好意的に受け取られていたが、未経験者にとってはやはり厳しすぎたらしい。

 

放課後、先輩の指導のもと練習に打ち込む竹川さんを見る久美子。指導している先輩はアンコン編で少し出番のあったホルンの2年生・屋敷さなえ。麗奈の厳しい指導で泣いていた竹川さんだが、沙里のフォローと面倒見の良い先輩のおかげで今は立ち直っており特に問題は無さそうに思える。サンフェスまであと7日。

 

ここからBパート。低音の一年生3人が部活に来ていないと騒ぐさつき。そこに現れた梨々花によると沙里も学校を休んでいるらしい。沙里は病欠らしいのだが、仲良し四人組が揃って休んでいるということで集団退部の件が久美子の頭をよぎる。奏に後を任せ葉月・梨々花と共に沙里に話を聞きに行こうとするが、その話を聞いていた真由は部活を辞めるなんてよくあることなのに大げさだと言うのだが、真由の言うことも間違ってはいないだろう。なんか秀一とちょっと考えが似てるかも。しかし空気を読めていない発言なのは間違いなく、良くも悪くもまだ北宇治の空気に染まってはいない。たかが部活…育った環境の違いが久美子たちと真由の間に大きな認識の違いを作り出している。

 

久美子は葉月・梨々花と共に沙里の自宅である神社へ向かう。原作では家が寺だったので、京阪宇治駅から山の方に向かってしばらく歩いたところということになっていたが、アニメにおける沙里の家は京阪の黄檗駅から宇治川に向かって行く途中にある許波多神社である。さすがに寺で巫女はアレだと思ったのだろうか。

 

久美子たちが鳥居をくぐると、境内を掃除していたのは佳穂と弥生。原作で巫女の格好をしていたのは佳穂だけだったのでサービス増量。沙里は本当に病欠だったが、全員で揃って部活をサボることにしたのはすずめの差し金だとあとで判明する。直情的に見えて案外油断ならない女・つばめ。このあとも他のトラブル要因になりそうで怖い存在だ。久美子たちが家に上がると沙里の部屋にはなんとグランドピアノが置かれていた。可愛いし、親から溺愛されてそう。

 

久美子と沙里が部屋に二人きりになり、悩みを打ち明けてくれるように久美子が諭すと、沙里が静かに語り始める。ここからは細やかな作画で沙里の心情やしぐさが描かれるので非常に見応えのあるシーンだ。だが原作を読んでいるか、それともアニメだけを見ているかでかなり印象が変わるシーンでもある。アニメでは沙里の慟哭に対して自分の経験を言葉にして語る美しく感動的な場面になっているが、それに対して原作では久美子は田中あすかの背中を見て育ったこともあり、責任ある立場になってからはジェネリックあすかとでも言うように計算して振る舞っているところがあるので、この後梨々花の言葉であすかのことを思い出すのはそのためだ。相手に刺さる言葉を的確に選んでいる様は、アニメのように自分の言葉を振り絞っている感じとは別の感想を抱くと思う。原作にはアニメ一期であった”上手くなりたい…上手くなりたい…上手くなりたい…”でお馴染みの通称・上手くなりたい橋が存在しないため、ある意味別の成長を遂げた久美子であるといった印象が、今回より強く感じられた。

 

結局今回の大量退部騒動未遂は久美子を動かすためにすずめが大げさに伝えただけだったのだが、それによって久美子は一年生のまとめ役のようなポジションの沙里の信頼を勝ち取ることに成功した。そしていよいよサンフェス……次回も楽しみだ。今回は原作の220Pあたりまで消化し、このペースでいけばあと3話ほどで前編は終わりそうな感じである。

 

『響け!ユーフォニアム3』第2話”さんかくシンコペーション”の感想。

 

まずは2話で初めて流れるOP。現在から過去へ、そして未来へと時系列を進みながらキャラクターが次々登場する映像の構成には、本当にこれまでの集大成といった感じがあるのだが、のぞみぞ(希美とみぞれ)がいないのは正直ちょっと意外だった。あと小笠原晴香の制服の下にインナーが見えるのは歴史修正されてるな…。前は誰も制服の下にインナーを着ていなかった。映像に宇治の四季の景色が挿入されるのはコンクールの自由曲と同様のモチーフだろう。演奏シーンではコンクールメンバーが誰になるのか微妙に分かってしまう。これまで出られなかったあの子はどうなるのか……というのも三期で気になる点のひとつだ。

 

Aパート。原作では始業式の日に転入してきた黒江真由が、アニメでは少し遅れて二話の冒頭に。それに伴って真由が吹部に入る流れも結構変わっている。福岡から転校してきたこともあって、原作では博多弁で言わされがちな「すいとーよ」を言わされている真由だが、せっかくなのでこれはアニメでも欲しかった。真由は吹奏楽の強豪校である清良女子、しかも一年二年共にコンクールメンバーという凄腕のユーフォ奏者だが意外にも吹部に入ることには遠慮がちである。久美子は深く考えずに真由を積極的に部活に誘うが、これがどれほどの影響を及ぼすのかは現時点では真由しか意識できていないのだろう。部活を続けることにもそれほど拘らないのも、幼い頃から転校を繰り返してきたことで学んできた悲しい処世術であろうか。

 

例年5月に行われるサンフェスの説明シーン。最上級生になって初めて分かる先輩の苦労、よくわかる。麗奈が話している最中、新一年生の義井沙里がちらっと目配せをするカットが入る。カメラアングル的に同じ一年生の眼鏡の子あたりだと思うがここではまだ理由は分からない。解散になった後つばめが久美子にすずめの様子を聞いてくるが、これは後で理由が分かる。”あの子ちょっと変わってる”とはつばめ談だが、どこがちょっとじゃい!と言いたくなること請け合い。

 

低音の教育係を務める加藤葉月に対する二年生の鈴木美玲の目線がとても優しい。二年生編で色々あったことを思うと微笑ましい描写である。わだかまりが無くなって信頼関係が生まれ、いい顔をするようになった……。最初は素人だった葉月も、三年生になって貫禄が出てきたと思う。一年生が初めて金管楽器のマウスピースに挑戦。自分も自衛隊でラッパを吹いたことがあるから、この最初のステップがとても懐かしく思える。最初はとにかく力技で唇を震わせて音を出していたものだ。香炉峰ネタは原作にもあったがアニメは少し捻ってある。新一年生の針谷佳穂ちゃんは笑いの沸点がとても低いので低音のマスコット的ポジションとしての活躍が見込めそうだ。真由の使っている銀のユーフォニアムは二年前の副部長・田中あすかが使っていたものと同型なのでつい重ねてみてしまう久美子。

 

奏と真由のやりとり自体は原作にもあるが、静かにバチバチやっている二者面談はアニオリ。奏が真由の存在をかなり警戒していることが伝わってくるシーンだ。奏にとって真由は想像もしていなかった伏兵にほかならない。真由は自分のせいで誰かがコンクールメンバーになれなかったら…ということを言っていたが、その一番の対象は他ならぬ奏だからである。埼玉栄吹奏楽部で全国金を取ったことのある吉川優子役の山岡ゆりさんが言っていた(と思う)ことだが、吹奏楽でユーフォ三人編成というのはかなり珍しいらしく基本は二人らしい。真由が入部すると、先輩大好き久石奏は久美子と一緒にコンクールに出られる可能性が低くなってしまう。前年のコンクールでユーフォは夏紀・久美子・奏の三人編成で、みんなでメンバーに選ばれてよかった的な雰囲気を醸し出していたが、今思うとこれは田中あすかの抜けた穴を埋めるためには三人必要だった…ということなのではないか。

 

真由が北宇治を選んだのは吹奏楽部が上手かったからとのこと。合奏が好きだからという理由を添えているが、原作では自分が合奏に参加していても他の人の下手な演奏を聴くのは嫌だからとナチュラルに棘のあるセリフを放つ。こういうネガティブな印象を抱きかねないセリフはだいたい消されがちなので、アニメオンリーと原作派では真由に対する印象は結構変わるかもしれない。そして真由の小学校のときのあだ名はママ。学校の先生をお母さんって言っちゃう現象ってマジで何なんだろうね……。過去のあだ名を明かすときの真由のポーズが非常にあざとい。

 

コンクールの自由曲選び。ここで提示される『雨夜の月』『蜉蝣奇譚』『一年(ひととせ)の詩 ~吹奏楽のための』はいずれも今作品オリジナル曲。原作では一年の詩以外は『ノエルの娘』『滅びゆく島の幻想曲』だった。滝は今年に限っては意見を久美子たち三人に尋ねることにしたらしい。滝に指導を受けた生え抜きの生徒である久美子たちに対する信頼か、それとも迷いか。なんだかんだ言って滝も音楽教師としてまだそれほど経験豊富なわけではない。電車で帰宅するシーン、二年生のときはそれほど主張しなかったせいで忘れがちだが、麗奈はかなり強烈な滝信者であったことを思い出させるやりとり。

 

久美子と別れた後コンビニに入る秀一。それを待つ麗奈。今回のタイトルどおり話の中でいくつかの”さんかく”が描かれるのだが、久美子・麗奈・秀一の三人もそのひとつ。麗奈と秀一で久美子を案ずるスタンスにも差があるのが分かる。麗奈は久美子と秀一の関係を知っているので、秀一が送っていくというのを必死に振り切ろうする麗奈のボヤきが面白い。秀一と麗奈が一緒に帰るという展開は別のシーンながら原作にも存在しているのだが、原作読んでたときはこれまさかの秀×麗ある!?みたいな妄想したもんだ。いやこの辺の顛末については原作でも触れられてないから何も分からないんだけど。

 

ここからBパート。空白の進路調査票。いまだ定まらない久美子の将来は、3年生編において重要な事柄のひとつ。朝早くから練習するすずめと沙里。すずめは早くもチューバの音が出るようになっていて上達が早い。北宇治のクラ(リネット)のレベルが高いというのは、アンコンで全国大会出場を果たしたことからも納得できる。葉月と一緒に教育係をやっている二年生・剣崎梨々花に褒められていたことを伝えられて目を輝かせる沙里。りりりん先輩という呼称はアニメではここが初だったかな? みぞれの心を開かせたこともあって彼女もまた”窓を開ける”のがうまいようで、早くも一年生に慕われている。

 

原作では運動場でのサンフェス練習だったがアニメでは体育館に。後輩から月永先輩と呼ばれると求と呼べと訂正する月永求。求は源ちゃん先生こと月永源三郎と何らかの確執があるらしく血縁であることを知られたくない…らしい。正直原作でも結構持て余していた要素だと思うのでもう触れるつもりはないのかと思っていたくらいだ。原作では新品の体操服を纏っていたはずの真由はアニメでは清良女子のジャージを引き続き着用するようだ。ポニテ真由いいっすね…! 奏が久美子たちのいる二階まで上がってくるが、基本的に久美子を見ているものの目線をときどき真由の方も見ていてめっちゃ意識しとる!! 自分から久美子だいすき! といじる割には自分がいじられる側になると照れる奏。かわいい。

 

つばめがサンフェスでカラーガード(旗)をやっていることに不満を感じて直談判してくるすずめ。つばめがマリンバをやっている理由はアンコン編で描かれた通りだが、すずめはそれを知らないので3年なのに花形の楽器を担当できないことに不満を感じている。悪意はないものの思い込みが強すぎて暴走する感じはかつて吉川優子が中世古香織のために行動したのに近い。三年生編の久美子はこうした形でかつて部に起こったトラブルを今度は当事者として解決に導いていかなければならない立場になった。だが今回は軽いジャブみたいなものだ。久美子がもっと姉を信じるようにとすずめを諭すのは、過去の経験が活きてるなぁと感慨深くなる。

 

いつものベンチ。さっそく面倒が起こり空と同じように久美子の心も曇っていたが、そこに麗奈が現れる。久美子は釜谷姉妹の問題には兆候があったと思い、去年部長だった優子なら先にケアしていたに違いないと思っていた。これはアニメでは描写がなかったが、麗奈はそうしたケアに気を使いすぎたことが去年関西大会止まりだった原因ではないかと思っている…というのが原作の描写である。この辺は三年生編における麗奈のドラムメジャーとしての姿勢にも反映されている。

 

麗奈が自由曲の候補を秀一に先に聞いたら同じ曲を選んでいたという。北宇治が全国で演奏したとき最初の一音は何がいいかと考えたとき、それはクラリネットの音であった。これは多分、クラリネットが北宇治のアンコン代表だったことと無関係ではないと思う。二人…いや三人の選択が一致したとき、雲が割れ陽の光が差し込む。こんなシーン原作には無かったよ! 自由曲選びがこんなにドラマチックに演出されるなんて思わないよ!

 

ここで三年生編の自由曲であるオリジナル楽曲『一年の詩 ~吹奏楽のための』が初披露となる。原作を読んだとき、表現が壮大で全然曲がイメージできん!ってなっていたので、やはり実際に曲が流れるのは良い。楽曲と共に夕暮れ前の宇治の景色が流れていくが、途中に出てくるユニチカ宇治工場の煙突は今はもう存在していない。自分が聖地巡礼で宇治を訪れたとき既に煙突は解体工事の真っ最中だった。劇中はまだ2016年か2017年くらいのはずだから。それはまるで移りゆく時の象徴のようでもある。いつの間にか手を重ねて聴き入っている二人だが、濡れたベンチに座っていたことを思い出して我に返る麗奈に笑ってしまう。

 

コンクールで演奏する曲が決まり音楽室で楽譜をみんなに配るシーン。クラリネットの高久ちえりが映るのは、のちに何らかの役割を果たすので印象付けておくためだろうか。一年生の眼鏡の子も今回妙に目立っていると思うのは決して気のせいではないはず。麗奈は人差し指を高く掲げ全国金を目指すと高らかに宣言する。これは一年生編の関西大会で吉川優子が中世古香織と一緒に全国に行きたいと言ったときに行ったものと同じゼスチャーだが、麗奈がそれを意識したのかどうかは分からないがそうだったらいいなと思う。部員たちがそれを拍手で歓迎する中、どこか上の空といった感じで拍手する真由。どこか様子がおかしい沙里。全国金賞を取るために高難易度の曲を選んだということは、これからの練習はより過酷なものになるはず。一年の中でも特に優秀な彼女には、それが分かっているのかもれない。

 

EDは未公開お蔵出しの北宇治カルテットの幼い頃や高校以前のスチルが流れる。麗奈の母親ってあんな感じだったんだとか、葉月が中学の頃テニス部だった頃とか、サファイアって昔から全然変わってないな…とか。サファイアが眠っている写真で着ているのは聖女時代の制服だろうか。『たまこまーけっと』に出てきたうさぎ山高校とモデルが同じならジャンスカのはず。久美子の写真には中学時代の佐々木梓といっしょに映っているのは嬉しいサプライズ 原作ではちょこちょこ出てくるのだがアニメでは一期以降ほぼ出番が無いため非常にレアだ。EDの最後に出てくるブローチも四季をイメージしたものになっていて自由曲のイメージと重なる。

 

1話と展開が前後する部分があったので、今回は原作の160Pくらいまで消化。配信で水曜に見ているせいか、もう少しで一週間遅れになってしまうところだった! うーん…こんなに感想が長くなるとは思わなかったが、原作との違いを見ればアニメがどういう意図で演出しているのかがわかりやすくなるのでついやりたくなってしまう。3話も非常に楽しみ。

 

今期視聴するアニメを決めようの会(2024春)

 

4月になり、また大量のアニメが始まる。今期も前期と同程度の70強の新作アニメがスタートし、完全新規のアニメはおよそ50にも及ぶ。毎回言っているが多すぎる。だがこのおびただしい数のアニメの中から、自分に合った作品を探し出せたときの喜びもひとしおである。世間で人気だからと言って自分にとって面白いものなのかどうかは別だし、自分に合っているものである方が100倍重要だ。それにはやはり自分の目で見て確認するのが一番確実なので、応独占配信されているもの以外のすべてのアニメに一応目を通すつもりだが、この記事では前期と同じように視聴候補に挙がったものについてのみコメントする。だがあくまでも一話を見た時点のものであり、後で変わる可能性は大いにある。

 

視聴優先度はABCの三段階で表す。

 

【A】ガールズバンドクライ

高校中退し熊本から上京してきた17歳の井芹仁菜が初めての東京で道に迷い、入居予定の家にも入れず立ち往生していたところ、ネットで聴いていた自分の背中を押した曲を歌っているアーティスト・河原木桃香が川崎駅前でストリートライブをやっていることを知り会いに行く。寝床すらなかった仁菜は桃香の世話になるが、桃香は歌手活動を諦めて実家の北海道に戻るつもりであることを知らされる…というところから始まる物語。

 

ガールズバンドアニメは去年のBanGDream! It'sMyGO!!!!!が記憶に新しく、ティーンエイジャーの鬱屈した想いを抱えた主人公やフル3DCGアニメという点でも類似性が高い…と最初は思ったが、キャラの屈折の仕方がだいぶ過激で生き様としてもロック感強めだし、CGアニメの表現もセルルックというよりはカートゥーンに近くちょっと癖がある。舞台も川崎だし若干のアングラ感があると思うのは個人的な偏見である。なので見た後の印象はだいぶ異なり、脚本が花田十輝のオリジナルアニメということでバンド版宇宙よりも遠い場所(よりもい)のような雰囲気があるので可能性を信じてみたい。中指立てまくるせいで英語圏での配信がないらしいのはちょっと笑う。

 

 

【A】ダンジョン飯

ドラゴンに食べられてしまった妹・ファリンを救出するというクエストを、持ち合わせがないのでダンジョンに巣食うモンスターを食べつつ進み、どうにか成功に導いたライオスとその仲間たち。だがダンジョンの主である狂乱の魔術師に遭遇し、ファリンは彼女に支配下に置かれてしまう。一方その頃ライオスに対してただならぬ感情を抱いている冒険者・カブルーは、ファリンに想いを寄せるかつてのライオスの仲間・シュローに接近する。2クール目に入って単なるライオスたちの冒険の話だけではなくなり、さまざまな思惑が交錯し始め多くの種族が入り乱れることによってさながらダンジョン群像劇の様相を呈してきた。最初に想像していたのとはちょっと違ってきたが面白いのでヨシ。

 

 

【A】夜のクラゲは泳げない

かつてイラストレーターを志していたこともある女子高生・光月まひるは小学生のときに絵を揶揄されたことがきっかけで描くことを辞めてしまっていた。夜の渋谷を徘徊するまひるは、そこで自分の絵が好きだという少女・山ノ内花音に出会い、絵を描いてくれないかと頼まれる。花音は以前アイドルグループで活動をしていたがスキャンダルで脱退を余儀なくされ、現在は一人で歌ってみた動画をアップする活動をしていた。自分の気持ちを偽らない花音に背中を押され、まひるは花音と共に匿名アーティストJELLYとして活動することを決める…という物語。

 

女の子複数で音楽活動ってまたガールズバンドものか!?と思ったがちょっと違った。歌い手に絵描きに作曲、動画編集という今風のユーチューバー活動っぽい。まずキャラクターの芝居が良くて画面に引き込まれる。表情もコロコロと変わってアニメの強みを十分に活かしており同期の女の子アニメの中ではピカイチだ。夜の渋谷を舞台にコンプレックスや特別になりたいという感情に揺れ動く様を描いた演出も良く、個人的に今期ではかなり推せるアニメだ。動画工房も一時はどうなるかと思ったが、最近はすっかり復調してきたようで何より。

 

 

【A】響け!ユーフォニアム3

京都の弱小吹奏楽部が新顧問・滝昇の就任によって意識が変わり、本気で音楽に取り組んだ結果人間関係で摩擦を起こしながらも、悔しさをバネに吹奏楽コンクールで全国を目指す作品も主人公・黄前久美子が部長に就任し三年生へ進級、いよいよ最後の年が始まる。新入生や久美子と同じ楽器を演奏する強豪校からの転校生・黒江真由を新たな吹奏楽部のメンバーに加え、次々と起こるトラブルや不和の種に部長である久美子はどう対処していくのか目が離せない。現実で色々あったおかげで前作から5年も空いてしまったが京都アニメーションの職人芸は健在で、緻密な作画と地に足の着いたキャラクターの芝居、そして圧倒的な画面の情報量とどこを取っても高いクオリティを誇っている、今期の大本命だ。

 

 

【B】狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF

行商人であるロレンスは荷馬車に乗って街から街へ渡り歩く生活を送っていたが、一神教の教えがまだ行き届かない土着の神を祀る村で、少女の姿をしながらも狼の耳と尻尾を持つ豊穣の神の化身・賢狼ホロに出会う。ホロは故郷である北の森に帰るために行商人であるロレンスと取引を交わし、二人の旅が始まる…という物語。

 

2008年に一度アニメ化されたライトノベル作品の再アニメ化。監督も当時と一緒なのでよっぽど作品に思い入れがあるらしい。1話最初のぬるぬる動くアニメ、原作により近づいたキャラデザと作画でそれを実感できる。神様が本当に存在する、産業革命以前の西洋風異世界を旅する物語は、ゲーム感の強い異世界ファンタジーが溢れかえっている昨今では素朴な味わいにすら感じられる。最初のアニメは見ていないので、まさに渡りに船ということで今回のリメイク版を見てみたいと思う。

 

 

【B】終末トレインどこへいく?

7Gという新規格によってこれまでの常識が通用しなくなってしまった世界で、埼玉県吾野に住む四人の女子高生が行方不明になってしまった友達を探しに、西武線を自ら運転して池袋を目指す…という物語のはずだがあまり自信がない。どういう展開になるのか全く読めないからだ。

 

ガルパン等でお馴染みの、水島努監督のオリジナルアニメ。戦車に航空機と来て今度は電車か~という印象の通り、電車の描写だけ異様に細かい。全てがおかしくなってしまった世界で子供だけが変化しないままでいるという、明るい漂流教室世にも奇妙な物語みたいな雰囲気で、ぱっと見能天気だがどこか不穏な空気で話が進む。とにかくあらゆる部分で未知数で、悪い方に転んでもいいから視聴リストに入れておくかという気にさせられる。早くも制作の遅れを漏らしているので、あとは…ちゃんと放送されることを願うばかりだ。

 

 

【B】ゆるキャン△ SEASON3

各務原なでしこや志摩リンを中心とした女子高生たちが軽めのキャンプを楽しむ作品の三期目。キャラデザが二期から変更があり原作に近づいたものの、作品の雰囲気はこれまでと特に変わりはなく、肩の力を抜いてぼんやりと見られる作品であることには変わりない。先に映画で彼女たちが大人になった姿を描いていたため、いまさら原作の続きと言われても…という感じは少なからずあったが、いざ三期を見てみるとわりと自然と受け入れられたので視聴継続しようと思えた。でもアニメから入った身としては、やはり二期までのキャラデザの方が好きだな。

 

 

【B】ワンルーム、日当たり普通、天使つき。

ひとり暮らしの高校生・徳光森太郎の元に、ある日突然天使と名乗る女の子が人間のことを勉強するためにやってくる。純粋で心優しい彼女のことを放っておけない森太郎と天使・とわとの共同生活が始まる…という物語。

 

昔でいう突然女の子が降って湧いてくる”落ち物”系の懐かしい感じがするラブコメ。原作がスクエニから出てるからまんま守護月天だろって思うのは自分だけではないはず。毒のないストーリーと、下着姿やシャワーシーンレベルのちょっとエッチなサービスシーンがありつつ、キャラデザも可愛く作画も非常に良好なので気楽に見られる作品に仕上がっている。都合良すぎと批判されがちだが、こういう想像した通りのものが出てくる作品も悪くないもんだと今になって思う。

 


【C】Unnamed Memory

ファルサス国の王太子オスカーは自らに掛けられた子孫を残せない呪いを解くために青き月の魔女の住む塔を訪れる。途中に仕掛けられた幾つもの試練をくぐり抜け、最上階で待っていたのは年頃の少女だったが、彼女こそが青き月の魔女ティナーシャであった。結局呪いを解くことはできなかったものの、ティナーシャは呪いの力に耐えられる強い女性を見つければいいと解決法をアドバイスする。だがオスカーはその力を持つ数百年生きる魔女ティナーシャを嫁に迎えればいいと結婚を申し込むのであった。

 

強大な力を持ちつつも初心な魔女を振り向かせるまでの話といった感じだろうか。1話の後半は会話劇中心ながらも少しずれた王太子とちょっと可愛い反応を見せる魔女のやりとりが心地よかった。制作がENGIということで1話のクオリティのまま最後まで行けるのか不安が大きいが、1話を見る限りでは少しは期待できるかもしれない。

 


【C】怪獣8号

巨大な怪獣が人々の生活を脅かしている日本。日比野カフカもかつては怪獣退治を目的とする怪獣討伐隊を志していたが、今では退治された後の怪獣を解体する仕事に従事している。そんなある日職場に怪獣討伐隊を目指している後輩が入ってきたことで刺激を受け、もう一度自分も討伐隊を目指してみようと思った矢先、小さな怪獣に寄生されて自らも怪獣のような姿に変貌してしまった…という物語。

 

町中で死んだ怪獣の後始末のプロセスを細かく描くという、理想の大怪獣の後始末的なプロローグから始まり、最後に主人公が怪獣(怪人?)化するという進撃の巨人めいた引きの第一話だった。アクションも作画もかなり力の入っているなかなか高級感のある作品で、正直ちょっと期待してしまう程度にクオリティは高いので視聴リストに入れる。

 

 

【C】烏は主を選ばない

鳥に変身できる八咫烏の一族が住まう山内と呼ばれる和風の異世界。東西南北に存在する四つの大貴族から、金鳥と呼ばれる山内の支配者の后を決める登殿の儀が始まった。東家の姫であるあせびは病に伏せている姉の代わりに急遽登殿することになったが、場に馴染めず四苦八苦する。その頃下界では、北の貴族の次男坊・雪哉が金鳥の息子…すなわち皇太子である若宮の宮仕えとして働くことになってしまう。大河ドラマ的雰囲気を持つ架空の宮廷を描いた歴史ファンタジー作品で、落ち着いた雰囲気が気に入った。

 


【C】バーテンダー 神のグラス

ホテル・カーディナルでは客をもてなすカウンターバーに相応しいバーテンダーを探していた。会長の出した条件である”神のグラス”を作れる人間を探すカーディナルの営業部で働く来島美和は、たまたま訪れたバー『イーデンホール』働くバーテンダー、佐々倉溜にその可能性を見る。

 

だいぶ前に一度アニメ化されていたが再度のアニメ化。当時はそれほど興味もなくスルーしていたので今回見てみたが、特に派手さは無いもののカクテルにまつわるうんちくで客の悩みを解決したりする人情物。さしずめ酒版美味しんぼと言ったところだ。非常に落ち着いた雰囲気と、カクテルをシェイクする音や氷を削る音が心地よく、息抜きで見るにはちょうどいい感じのアニメだ。

 

 

【C】ブルーアーカイブ The Animation

無数の学校が集まって形成されている学園都市キヴォトスの一角にある、砂に埋れた地域アビドス。多大なる借金によって廃校の危機に陥っている生徒総数たったの5人のアビドス高等学校に、キヴォトスの連邦生徒会から先生と呼ばれる男が赴任してくるところから物語は始まる。

 

キャラクターは最近よく見かけるけど遊んだことは無いのであまりよく知らない人気のスマホゲーム、ブルーアーカイブ。どんな話なのかと思いアニメ見てみると…正直ほとんど何も分からない。ヘイローと呼ばれる輪っかが頭上に浮かび、銃弾を受けても傷つかない強靭な身体を持つ女の子たち。日常生活では銃器を携帯するのが当たり前になっていて、戦車や手榴弾すら特に珍しくないというなかなかに物騒な世界で驚いた。

 

とにかくあらゆる部分で疑問だらけなのだが、なぜ?どうして?という質問にはゲームユーザーですら答えられないらしいので、もうそういうものだと見たまんまを受け入れるしかないだろう。個人的には設定の分からなさよりも戦闘描写に物足りなさを感じるが、作品との波長が合うのかわりと楽しく見られている。自分のような00年代のエロゲギャルゲ世代にはどこか懐かしさを感じる作品だ。あと眼鏡のアヤネちゃんが好きだ。

 


【C】忘却バッテリー

中学時代対戦相手にトラウマを植え付けるほどの突出した才能を持つバッテリー(投手と捕手)であった清峰葉流火と要圭。その二人と対戦した山田太郎はすっぱりと野球を辞め、野球部のない学校に進学したはずがそこで清峰と要の二人に遭遇してしまう。偶然目が合った要は山田のことを友人扱いするが、彼はなんと記憶喪失になっており野球のこともすっかり忘れていたのであった…。

 

最近は男ばかりの作品だと女向けなんじゃないか?と思って最初からちょっと身を引いてしまいがちなのだが、真面目に野球をやりつつも勢い重視のギャグっぽい雰囲気で個人的には悪くない掴み。特にこういうのはツッコミ役次第で良くも悪くもなるのだがその辺もぬかりがない。制作がMAPPAということもあり無駄にクオリティが高い。

 

 

補欠

時間に余裕があれば繰り上がりで見るかもしれない枠。

オーイ!とんぼ

かつてゴルフに関わる仕事をしていたが、俗世を離れてトカラ列島のある島の施設管理人としてやってきた五十嵐が、そこでとんぼという女子中学生に出会う。島の唯一の娯楽は住民たちが作ったコースで行うゴルフで、とんぼは3番アイアンしか使わないスタイルながら非凡な才能を見せる…という女プロゴルファー猿みたいな導入のゴルフアニメ。キッズアニメみたいな雰囲気でどこか懐かしい感じが良い。

怪異と乙女と神隠

熟れた身体を持て余す書店員で作家志望の緒川菫子は、28歳の誕生日に不思議な本を手に入れる。その本をきっかけに怪異に巻き込まれることになってしまったが、書店の同僚である化野蓮によって助けてもらうことで事なきを得たが、これ以降不思議な事件に巻き込まれることになるというバディもの。オカルトとエロの組み合わせは相性抜群だが、原作と違ってそこまでサービスしてくれないのは残念。

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる

現代から異世界の貴族の息子として転生し、生まれつきもっていた他人の能力を可視化する鑑定のスキルで優秀な人材を集める話。光栄の歴史SLGみたいな感じのステータスが表示される。主人公にわりと分別があって不快感は無いし、一話目から殺陣の描写を結構頑張っていたので意外と見れるアニメになるかもしれない。

転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます

生前魔術師だった男がとある王国の第七王子に転生。その立場を使って前世ではなし得なかった魔術を極めることを目的に、自由気ままに無双する感じの話らしい。転生した主人公がなんかすっごいショタショタしい。作り手は絶対少年をいけない目で見ていると思う。前期で明治撃剣を繰り出してきたつむぎ秋田アニメLab製で、全体的にかなり動きは良く見ごたえはあった。

Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ

ファンタジー世界で商人として働いていた男が、ある日突然別の異世界に勇者候補として召喚されるが、凡人並の能力しかないことが分かったうえに元の世界にも戻れず放逐されてしまう。しかしたまたま襲ってきた敵を返り討ちにするとレベルが上がり、全ての能力が∞に変化する。まあよくある感じだねと思ったが、主人公のCVが日野聡でヒロインが釘宮理恵ってゼロの使い魔かよって思ったら座組(スタッフや声優陣)がまんまゼロの使い魔でなんだか懐かしい気持ちに。同窓会気分で見るかもしれない。

 

候補には挙げなかったが、ディズニー+独占じゃなければザ・ファブルも入れたかった。

 

前期の振り返り

見るアニメを選ぶのはともかくその後どうなったかについてはこれまで特に触れてこなかったので、これからは前期についても軽く振り返ることにする。

 

今期で言えばAに相当するのは葬送のフリーレンダンジョン飯僕の心のヤバいやつでストーリーも作画も申し分なく楽しめた。特にフリーレンはあらゆる面で突出していて、2クール目は試験編ということで多くのキャラが登場しながらもどいつもこいつも魅力的だったし、ここぞというところで繰り出される戦闘シーンには度肝を抜かれた。ダンジョン飯は生き生きとしたキャラクターとアクション、クラシックな設定のダンジョンで繰り広げられるサバイバルには毎回楽しませてもらった。僕ヤバは中学生の繊細な恋愛模様を丁寧に描いた作品で、良くも悪くも原作とはだいぶイメージの違うアニメになったがこれはこれでという感じ。

 

次にB相当のアニメ。ここは異修羅姫様拷問の時間ですループ7回目の悪役令嬢あたり。意外にも後から異修羅が上がってきて、たくさんの強者が登場するFateもどきかと思いきや、後半でそれぞれのキャラの行動が影響し合いながら運命を左右していく群像劇的な展開は面白かった。2期も予定されているので楽しみ。姫拷問は飯アニメかと思いきや拷問という名のおもてなしのパターンが案外豊富で退屈しなかった。姫様やそれ以外のキャラの反応も可愛いし、何より魔王のキャラが濃くて良かった。これも2期が発表された。ループ7回目はちっとも悪役令嬢じゃないので看板に偽りありだが、ループの経験を生かしたストーリー展開と女性向けならではの衣装の豊富さは見た目にも楽しく見られた作品だった。

 

C相当のアニメは治癒魔法の間違った使い方薬屋のひとりごと勇気爆発バーンブレイバーンアンデッドアンラック。治癒魔法は異世界ものとしてはなかなか泥臭く暑苦しい展開でトレーニング中に見るとしてはちょうど良かった。薬屋のひとりごと後宮もの+安楽椅子探偵な感じで安定した内容だったが世間の人気ほどには自分には刺さらなかった。勇気爆発バーンブレイバーンはお約束をわざと外した展開は途中までは良かったが、後半はちょっとふざけすぎのように感じてしまった。アンデッドアンラックはところどころ良いところあったのだが回想が多すぎて正直テンポを損ねていたのが残念。

 

途中で見るのを止めたのは佐々木とピーちゃんぶっちぎり?!ゆびさきと恋々メタリックルージュ。佐々ピーは魅せ方が単調で無味乾燥、ぶっちぎりは主人公の不快感が強くなり過ぎ、ゆびさきと恋々はなんでも出来すぎる男の方が段々受け付けなくなっていってしまった。メタリックルージュは素材は悪くなかったと思うのだが結局いつもの思わせぶりなだけのボンズだったというか……。

 

その代わりに見たのは望まぬ不死の冒険者明治撃剣-1874-の2つ。望まぬ不死の冒険者は大きな山も谷もない話だったが不快要素もなく暇つぶしには悪くなかった。明治撃剣は明治維新後を舞台に政府転覆の陰謀を阻止する物語で、実在・架空問わず多くの人物が登場する時代劇で、想像していたより面白かったのでとんだ拾い物だった。2024冬アニメはこんな感じで。うーん思ったより長くなった。

 

『十二人の怒れる男』鑑賞。

4月になって始まった大量の新作アニメを消化している今日このごろだが、その流れでふとAmazonPrimeVideoを眺めていると『十二人の怒れる男』が現在無料で見られるのを発見してしまった。自分はこれまで見たことがなかったが、映画に興味があるなら一度は聞いたことのあるタイトル。せっかくだから見てみたい!と、とりあえずアニメは脇に置いておいて先にこちらを見ることにした。

 

舞台はアメリカのある裁判所である。そこに集められた12人の陪審員。裁判は粛々と進み後は陪審員の評決を残すのみとなった。有罪にせよ無罪にせよ評決には全員の一致が求められるため、裁判所の一室に集められることになるお互いに名も知らぬ12人の男たち。裁判では被告に不利な証拠や証言ばかりだったため誰もが有罪と信じて疑わなかったが、たった一人だけ無罪を主張する男がいた。その理由は「有罪である確信が持てないから」というもの。かくして一人の男と十一人の男たちの議論が始まるのであった。

 

いわゆる法廷もの…と言っていいのか分からないが、上映時間の9割以上は会議室で行われる男たちの議論を描いた事実上の密室劇である。概要だけ聞くと本当にそんなもん面白いのかと思ってしまいかねないが、実際のところ……すごく面白かった。尺は90分ちょっとと短めなこともあって、ダレることなく一気に見終わってしまった。

 

最初は扱っている事件のあらましすらまったく分からないのだが、男たちの会話を通して全体像が少しづつ明かされていく。見ているうちにどうやらスラム街に住む18歳の少年が父親をナイフで刺した…という事件らしいことが分かる。それにつれて12人の男たちがどういう人間なのかも少しずつ分かってくる。当時はある程度の社会的地位がなければ陪審員になれなかったのか?わりと年齢は偏っている感じなのだが、職業も生い立ちも様々である。有罪を主張する理由も家庭環境から来る偏見や思い込みだったり、あるいは用事があって早く終わらせたいからなどという男もいるし、中には理論的に筋道を立てて有罪を唱えるもの、証拠を絶対視して譲らないものなど個性も様々だ。

 

それに対して無罪を主張する男は、法廷で取り扱われた証言や証拠についてそれは少年がやったと確信を持って言えるほどのものではないと固定概念を取り払って、ひとつひとつ再検証していく。陪審員は人の命を左右する立場なのだからと、短期で怒りっぽい男に対してもひたすら冷静に辛抱強く議論を重ねていく。その熱意に当てられてか徐々にだが会議室の空気にも変化が訪れる。

 

だがこの作品の凄いところは、あくまでも少年が無罪か有罪かを判断するということであって、実際に少年が父親を殺したかどうかという事件の真実は最後まで分からないということである。もしかしたら本当に殺人犯を世に解き放つことになるかもしれない……。その可能性が消えることはないのでもやもやしてしまうかもしれないが、これはミステリーではなく”疑わしきは罰せず”という法の理念をひたすらに問い続ける話なのだと思う。

 

ミステリーだと思って見てしまうと、観客目線では証拠とか証言が後からどんどん出てきて後出しじゃんけんみたいという感じはもの凄くあるし、正直後半にいくにつれて重箱の隅をつつくような感じになるというところもあるのだが、状況証拠だけで軽率に死刑にしてしまうことは許されないのだという強い姿勢を感じるし、途中で議論が面倒くさくなって有罪から無罪に変えた男が出てきたときも、無罪なら無罪だと思う理由を言うべきだと強く迫ったりもすることから、人の命を左右する陪審員であることへの強い責任を感じられて個人的には好感を持った部分である。

 

こういう作品の常として最終的には状況が逆転するのだが、そうなることが分かっていてもそこまでの話運びは見事で、まるで自分も13人目の陪審員であるかのように熱っぽく映画に見入ってしまった。1957年(67年前)の映画ということもあって白黒だし、男ばかりでむさ苦しい雰囲気だし、古さを感じる部分も少なからずあるが、今だからこそこの作品のテーマを改めて胸に刻んでおきたいと思える、時代を越えた名作というのはこういうもののことを言うんだろうな。

 

自分が裁判員に選ばれるようなことがあったら、また見てみたい映画である。日本の裁判員陪審員ほどの影響力はないけども……。

 

『響け!ユーフォニアム3』第1話”あらたなユーフォニアム”の感想。

アニメの一話毎の感想とか面倒くさくてやってられん……そう思っていたが、実際に放送されているのを見たら身体がウズウズしてこの溢れる気持ちをどこかに書き記しておかないと気が済まなくなってしまった。だって『響け!ユーフォニアム』の続編が放送されるのを、2019年の5月に制作発表されてからずっと待っていたのだから!

 

今回のTVシリーズは主人公である黄前久美子がついに高校三年生に。2015年と16年に放送された一年生のエピソードを経て舞台は劇場へ移り、『リズと青い鳥』『誓いのフィナーレ』『アンサンブルコンテンスト』という3つの劇場用作品で二年生のエピソードが描かれ、そして今回ふたたびTVシリーズに舞い戻ってきたというわけだ。高校生活最後の年ということで将来の展望を視野に入れつつ、吹奏楽部として全国大会金賞に挑戦するラストチャンスでもあり、これまでの集大成となる物語になることは想像に難くないだろう。

 


最近は作画演出の良いアニメがかなり増えている実感があるが、それでもなお京都アニメーションのクオリティは突出していて、一秒たりとも目が話せない情報量に最初は見てて少々疲れてしまった。だって…見るべきところがあまりにも多すぎるから。

 

まず冒頭から原作とかなり違っていて、あれ…こんな感じだったっけ?と思わず原作を引っ張り出した。読んだのが5年前なので自分の記憶違いだろうかと不安になったが、やはり全然違う。大筋は原作をなぞるはずだが、既読でも何が飛び出してくるのか分からないという点はアニメ版の醍醐味と言えるだろう。冒頭のシーンは現在ではないおそらく未来の話であり、原作でもそう匂わせてはいるのだがシチュエーションがやや異なっていて、映像ではこまごまとヒントになりそうなものが散りばめられている。楽譜やバックで流れている『ディスコ・キッド』の曲は5周年記念ドラマCD『きらめきパッセージ』で久美子がやりたがっていた演目でもある。ということはつまり……?

 

そして夢から目覚めた久美子が登校するいつもの風景は、それだけであのときのユーフォが帰ってきた!と思わせるのに十分なものであった。宇治川沿いのあじろぎの道を通り宇治橋のたもとで麗奈と合流し、京阪電車六地蔵へ。途中の黄檗で葉月が乗り込んできて、駅の改札を出たところで緑輝が走ってやってくる。うーんこれだよこれ。

 

優子と夏紀から部長に指名される場面も短いながらようやく映像化されたのも良かった。なんというか、改めて触れられると彼女たちもついに北宇治を去ってしまったのだという実感を伴ってきて淋しくなってしまう。それにしても今回はやけに美智恵先生の存在感が大きい。冒頭にも出てきたし、職員室で久美子を叱る声にもインパクトがある。2年生編じゃセリフ殆ど無かったせいかな。

 

3年生の久美子のクラス、吹部が葉月と緑輝、釜屋つばめの他に4人ほどいると原作には書いてあったのだが、これまでしっかりアニメを見てきた人にとっては非常に馴染みのある四人が描かれていて、なんだかすごく嬉しかった。かつてモナカ組だったトランペットの吉沢秋子、味噌汁ぶっかけご飯でおなじみフルートの小田芽衣子、メカクレが特徴的なクラリネットの高久ちえり、アンコン編でも絡みがあったホルンの森本美千代。セリフはほとんど無いが一年生編の最初からずっといる彼女たちはもはやただのモブキャラではないのだ。だがここで原作では転校生として紹介されるはずの新キャラ・黒江真由が来ない。驚くほど大胆な原作改変だ。

 

部活の場面ではアンコン編から部長としてやってきたものの、まだたどたどしい感じの久美子だが、前年の天才型だった優子に対して調整型の部長としてそれなりに愛されるポジションとして頑張っている。そしてすっかりツーカーの仲になった久石奏を筆頭に、ちょっぴり先輩らしくなったような何も変わっていないような低音パートや多少の先輩風を吹かせている他の新二年生たちの姿を見てなんだか嬉しくなる。特にぶりっ子全開で低音パートの紹介をする久石奏の姿はそれでこそお前だ!という感じ。2年かけて弱小校から強豪校へと変貌を遂げていった北宇治高校吹奏楽部、原作ではすでに強豪校として認識されていて新入部員含めて部員が100人超えていたが、アニメでは90人ほどに留まったのはさすがに描くのが大変なのだろうか。まあ人数に関しては原作通りだったことがまず無かったから……。

 

その後アンコン編同様に放課後に久美子と麗奈が肩をぶつけながらじゃれ合う光景は、二人の特別感を表すのに一役買っていて良かったし、帰り道で聞こえてくる『ムーンライト・セレナーデ』がユーフォニアムの独奏だとちょっぴり不穏な感じがしてくるから不思議なものである。そして初登場が大幅に遅らされた黒江真由と放課後の屋上で邂逅には運命的なニュアンスが付加されたかのようで、卒業した田中あすかを思わせるような銀のユーフォニアムの使い手ということも相まって、”新たなユーフォニアム”の登場にどこか不安を感じさせるような「そして次の曲が始まるのです」のセリフは波乱の幕開けを予感させるものだった。第一話はこれまでのおさらいをしつつ久美子や吹部の現状を描くのに重点を置き、次回から最終章の本格的なスタートとして一話の最後に強い引きを作る……そんな感じの原作改変のように思えたし、アニメとしてはそれは正解だったと思う。

 

第一話にして原作を既に100ページ弱進めてしまったのだが、それでもハイペースには感じなかったのは再構成の妙だろうか。作画も演出も期待以上の出来に仕上がっていたので、これからの展開をじっくり見守っていきたい。まず来週まで1話を10回見返そうっと。

 

『ユニコーンオーバーロード』を遊ぶPart5


砂漠出身のオーバンの案内に従ってドラケンガルドの南部砂漠地帯に足を踏み入れる解放軍一行。入口付近にある砂漠のオアシスまでは何事もなく進むことができたが、砂漠を縄張りとする幾つもの盗賊団、そしてオーバンの古い知り合いであるというマゼランという男が立ちはだかる。マゼランはオーバンのことを覚えておらずゼノイラに操られている可能性があったので、進軍ついでに殴り倒して指輪の力で正気に戻すことになるのであった。

 

 

砂漠に入って最初のMAPはまず手近な遺跡には盗賊団が陣取っており、西の方にはさらに二つのルートに分かれてそれぞれ盗賊団の駐屯地と遺跡が、そのさらに西の遺跡にマゼランがいるという見るからに広大で面倒くさそうなMAP。まず手近な遺跡を解放したいが砂漠の中を突っ切っていくためかなり進軍速度が落ちる。こういうときはやはり空中ユニットを向かわせるのがセオリーだが、砂漠MAPでは定期的に砂嵐が起こり視界が悪くなる。その間に弓兵とぶつかったら致命傷なので単騎では正直怖い。よってアレインの部隊を直掩に付けることに。近くの遺跡に駐留している敵を戦闘で半壊させると白旗を上げる。なんでもこの辺りで暴れているマゼランは他の盗賊団にも迷惑をかけているので倒すために協力してくれるらしい。ついでに東の駐屯地にいる盗賊団も説得してくれるとのこと。余計な戦闘をしなくて済むのはありがたい。ちなみにここにいた盗賊団のワイバーンナイトが西に飛び去った後に駐留するとお金が手に入る。いや…そりゃあ空いてたら入るでしょ。お前たちそんなに金に困ってるのか?みたいな小言を言われるが敵対まではしないのだが、違う…俺はそんなつもりじゃ……。

 

 

盗賊団のワイバーンナイトが駐屯地に到達すると、マゼランを一緒に倒すということで意気投合しこちらも協力してくれることになる。その前に周囲の部隊は粗方倒しちゃってごめん…そんなつもりじゃなかった。こっちの駐屯地からは何部隊か出撃しマゼランの元に向かう。あとはもう放っておいてもよさそうだ。

 

下の遺跡には前回に引き続きレベル上げのためにスカーレットの部隊を向かわせたが結構危うい展開になった。シーフがわらわらと出現し、次々と金を奪って逃走するという最高にイラっとする行動についムキになって追いかけてしまったせいだ。下側は見張り台も多くアシスト攻撃を受けやすいのでシーフは非力でも戦闘に入るだけでもダメージが蓄積していく。ゴリ押しでなんとか倒すとこっちの遺跡の盗賊団も流れでマゼランをボコす会に参加することになった。

 

 

マゼラン隊の構成はマーセナリー、ウィッチ、クレリックの前衛にファイターのいるやや守備的な構成で怖い相手ではなかった。ただし後衛の三人は下級職だが装備で地味にPPを2にしているのでそこだけは注意だ。マゼランにオーバンをぶつけるとちゃんと戦闘前のやりとりがある。結構戦闘前のセリフがあるみたいだがここまで全然見てないな……。相性の悪い部隊ぶつけると一方的にやられたりするのでお膳立てがなかなか難しいのだ。

 

マゼランを下すと自分に貸した金のことを覚えていないこいつはマゼランじゃない!とオーバンがマゼランをしばき倒し、アレインが指輪の力を使って正気に戻す。マゼランは無事オーバンに貸した金のことを思い出し解放軍の新たな仲間に加わった。すると今度はマゼランの妹であるリーザに会いに行くことになる。リーザはマゼランが正気を失った後、残った盗賊団のメンバーを組織して抵抗活動を続けていたのだ。砂漠地帯を統治していたドラケンガルド近衛騎士団のグロスタもまた、マゼランと同じようにドラケンガルドがゼノイラに降伏して以来砂漠の民を弾圧するようになっていた。これはゼノイラの洗脳に違いない!ということでリーザと解放軍は協力してグロスタに対抗することになった。それにしても砂漠地帯ではオーバンの顔が利きすぎて完全にユニコーン”オーバン”ロード状態である。攻略順の自由度が高いせいで必ず仲間になるキャラほど話に絡んできやすいからしょうがないんだが……。

 

 

砂漠MAP後編。ここが終われば砂漠を越えるのでそういう意味でもやる気がちょっと増してくる。このMAPではブラックナイトとシューターのクラスが初登場。ブラックナイトはダメージを受けるほど攻撃力が増すという非常にピーキーなクラス。シューターは弓を使うが必中のパッシブスキルを持たない代わりに回復スキルや特殊効果のある矢を放つ。ブレイブスキルのスモークボルトによってアシストの使用を妨害できるのだが、こちらが利用するよりも敵に使われる方が厄介のような気がする。本当にウザい。

 

MAP自体は先程と同じように東西に広く当たり一面砂漠。中央に道が走っていて移動しやすい分前のMAPよりは素直な作りをしていると言える。拠点は東のオアシス近辺から始まり道に沿っていくらかの見張り台が点在しており、道を外れた場所に遺跡や祈りの像がある。今回はリーザの部隊がゲスト参戦してくれるが、シューターとハンターとシーフとファイターという構成でいまいち火力不足。削りに使うくらいでちょうどいい感じ。

 

 

とにかく中央にある見張り台をどうやって速攻で取るかが明暗を分ける。そういう意味では最初の拠点の近くにある見張り台よりはよっぽど重要である。とにかく敵が殺到してくるのでグリフォンナイトのファストエールを使い騎兵を走らせて見張り台を取る。後から追いついたスカーレットの回復アシスト隊を駐留させたらもうほとんど勝ったようなもの。拠点の北と南にある遺跡や敵拠点はその後にゆっくりと占領した。

 

グロスタが待ち構える最奥の拠点には見張り台によってアシストの範囲が二重に重なっているのでそのまま突っ込むのはヤバいというのは嫌でも分かる。だがその南には竜巻の祈りの像があり、拠点を攻める前にそちらを使って竜巻を放てば周囲の見張り台から敵を押し出すことができるので、その間に見張り台を取ってしまえばかなり楽になる。シューターの煙幕の効果も意外と短いので竜巻の世話になった方が多分楽。ボスのグロスタはブラックナイトとシューターの組み合わせでわりと攻撃的な編成だがその分紙装甲なのでこれまでのボスでは一番御しやすい相手だった。防御のパッシブスキルを持たないのでグリフォンナイトの攻撃で薙ぎ払えば即終了である。MAPの広さの割にはあっけない幕切れだ。

 

 

戦闘が終わってグロスタを正気に戻すが元が高潔な人物らしく、砂漠の民を弾圧していた事実に愕然とし解放軍入りについて躊躇いを感じているようだった。だが先に仲間になった剣士アラミスが実はグロスタの顔見知りだったらしく、アラミスの説得によってグロスタは解放軍として戦うことになった。まあ多分、アラミスは王族の関係者だという匂わせなのだろう。グロスタの初期装備の金羊騎士の斧に命中+20の効果があるのは痒いところに手が届く感じで嬉しい。

 

砂漠地帯は広大なだけあって探索のしがいがあり、石版の宝を見つけるのに必要な手記はここの遺跡のひとつから見つかった。砂漠を越えて次の解放戦ではふたたび騎士ローランが登場。戦闘が終わるとクライブが正体をルノーだと見破るが10年間洗脳されて(かわいそう)ゼノイラの手先になっていたことを恥じているのか素直に解放軍に入ってはくれそうにない。そこを過ぎるといよいよドラケンガルドの王子が兵を集めているというバウムラッテ闘技場にたどり着いた。ここから先は道が塞がれており、入らないことには先に進めない。砂漠地帯を攻略したことでドラケンガルドの1/3は解放したことになる。ここからいよいよ中盤戦といったところである。

 

 

続く。

 

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』鑑賞。

映画館にポスターが貼ってあって、なんかすごいタイトルだなぁということは覚えていた『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。原作はビッグコミックスピリッツに連載されていたらしいのだが作品の存在自体今回が初耳だった。観に行ったのは本当になんとなくで強い理由はなかったのだが、正直運命の出会いを感じた作品だった。こういうことがあるからアニメを見るのが止められない……!

 

物語は東京上空に巨大な円盤が現れて以降、それが存在しているのが当たり前になってしまった日本が舞台。円盤の出現や米軍による新型爆弾の投下から三年が経ち、高校3年生になった小山門出と中川鳳蘭(通称おんたん)は受験や卒業を間近に控えながらも、地味だが気の合うクラスメート三人を加えた仲良しグループで残りの青春を謳歌していた。しかしその日常生活の裏側で日本政府や自衛隊の円盤対策や、在日米軍の暗躍、情勢不安による陰謀論や政治活動が広がっていて、仲良しグループの身内にも少なくない影響を与えていた――そんなお話。

 

率直に感想を述べるなら、かなり好きなタイプの作品で結構刺さった。緩めのキャラにリアルな背景、不穏な空気の中でも過ぎていく日常。日陰者というわけではないけれど、かといって陽キャでもないサブカル趣味の女の子たちなりの青春模様がよく描かれていて惹き込まれる。そして二人の主人公のうち、眼鏡っ娘の小山門出ちゃんが滅茶苦茶好みで、これだけでもう元は取ったような気分。

 

門出はいわゆる眼鏡地味子と言っていい美少女の記号で描かれていない見た目なのだが、高校の担任教師に片想いをしていてその教師にふと肩を叩かれてかーっと意識したり、教師の家であるアパートの一室に上がり込んで精一杯アピールしてみたり、普段色恋沙汰に縁のなさそうな女の子がここぞというときに見せる精一杯の色気みたいなのが画面の向こうから伝わってきてとにかく可愛かった(教師の方も手を出すでもなく、さりとて何も感じてないわけじゃない反応を見せるのがいい)。もちろんメインキャラとして出ずっぱりなので、この作品は個人的に10年に一度、いやそれ以上の眼鏡っ娘アニメの聖典の座に躍り出た。

 

この作品はキャラクターデザインの美醜の差が激しくて、普通の人間とクリーチャーが混在していると錯覚する程度には極端。良い方に捉えればちゃんと描き分けされていると言える。メインとなる主人公二人とその仲良し女子高生グループ三人は最初どう見ても可愛くないよね? くらいな感じだったのだが不思議なものでわりとすぐに慣れた。それどころかそんな彼女たちでさえもしかしたらちょっと可愛いんじゃないか? と思えるくらい魅力の垣間見える一瞬の切り取り方が巧みなのだ。

 

それだけに中盤以降の展開はショッキング。自衛隊の新兵器によって墜落した円盤の事故に巻き込まれてしまう悲劇や、小学生の頃からの付き合いという門出と鳳蘭の出会いのエピソードは最初に示される門出視点と、後から語られる鳳蘭視点では大きく食い違っており謎が深まっていく。まるで邪悪なドラえもん? デスノート? 魔法少女まどか☆マギカ? ウルトラスーパーデラックスマン? そんな作品の名前が思い浮かんでしまうような、小学生の身にもたらされた大きすぎる力によって徐々に暴走していく幼い正義感と最悪の結末。それが何だったのかについてはおそらくパラレルワールド的なものなのだと想像するしかないが、それがはっきりしないままに事態を決定的に変える出来事が起こり前章は終わってしまう。

 

巨大円盤が突然東京上空に現れたと聞くと突飛な設定に思えるが、ある日突然日常が非日常に変わってしまい、非日常の方が段々当たり前になっていくような出来事は我々も少なからず経験しているはずだ。東日本大震災や新型コロナ、この円盤はある種そういった出来事のメタファーであるといえるかもしれない。それだけの変化が起こった後でもその状況を人は仕方なく受け入れていくし、物理的にも心理的にも影響を受け続けている。非日常の中でも青春はあるし、不穏な空気は常に付きまとっている……眼の前に見える脅威からは目を逸らしたまま。そういったシチュエーションを非常によく描けていると思う。

 

はっきり言って前章の段階ではどういう方向に話が転んでいくのかはまだ分からず、面白そうな素材がいくつか並べられているだけのような状態なのだが、そのいずれにもかなり興味がそそられる。前章の最後に起こった出来事と、地球滅亡まであと半年!のテロップでこれからとんでもないことになるのでは?と後章に少なくない期待を抱いてしまうのだが、不安材料としては原作を読んだ人間はオチが弱かったと皆口を揃えて言っていることだ。今回の映画化で原作者がラストシーンを描き下ろしているらしいので、その辺の問題が解決していることを願う。後章は5月24日公開。