四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『AIR/エア』鑑賞。

今でこそオシャレアイテムとして日本でもそれなりに定着した印象があるバスケットシューズ(バッシュ)だが、その中でも特に有名なブランドがナイキの”エア・ジョーダン”だろう。自分もSLAM DUNKの主人公・桜木花道が履いていたことでその存在を知ったのだが、バスケのことをよく知らなくても多分名前ぐらいは聞いたことがあるはずだ。そのような靴がいかにして生まれたのか、そしてそのいきさつには世界を変えるどの影響力があったのだということを描いたのが『AIR/エア』という映画だった。

 

1984年、ナイキはバスケットシューズの分野でコンバースアディダスに後塵を拝していた。当時のナイキ社員ソニー・ヴァッカロはその立て直しのため、どの選手をスポンサードするのかの選別を行っていたが、予算には限りがあるためその数を絞らなければならない。その中でソニーが目をつけたのが、まだNBAにデビューもしていなかった頃のマイケル・ジョーダンである。だが彼はナイキを名指しで拒否しているありさまで、誰よりも彼の才能を買っている母親が契約を取り仕切っている。ソニーはあまりにも不利な状況からどのように彼女を説得し、契約に導いたのか。

 

個人的にナイキは嫌いな企業のひとつで不買を貫いているが、この映画は面白いと言わざるをえない。なによりテンポがいいから見ていて疲れない。次々と切り替わっていく80年代の豊かな時代を象徴するかのようなアイテムと華やかな音楽の数々。そして熱弁を振るうソニー・ヴァッカロ役として太ったマット・デイモンと、髭面で仏教かぶれの如何わしいCEOフィル・ナイト役のベン・アフレック。この二人が並んでいるだけでもかなり作品に対する信頼感が増す。

 

業績不振で後が無い連中が一発逆転の秘策をひらめき、見事に大成功! 劇中ではアメリカ人はそういう話が好きなどと揶揄されていたが、自分もわりと好きなタイプのストーリーである。事実に基づく物語なので成功する結末は初めから約束されているのだが、あまりにも無理難題が重なるためどうやっても無理でしょコレという緊張感が持続されるのが非常に良い塩梅。ジョーダンとの契約に乗り気じゃなかったCEOのフィルが、終盤何事もなかったかのように賛成に回っていたところだけちょっと引っかかったが。

 

映画館の席を立ったとき、ふと前を歩いている人の足元を見るとエア・ジョーダンを履いていたのが、映画そのものの解像度が急に上がったような感じがして稀な体験であった。