四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『ワールド・ウォーZ』鑑賞。

面白いB級映画にめちゃくちゃお金を掛けたらもっと面白くなるんじゃないか? そういう妄想を抱くのは、人生のうちに一度くらいはあるだろう。B級映画の花形ジャンルであるゾンビ映画にめちゃくちゃお金を掛けた映画が2013年に公開されていた。ゾンビ災害が世界的に発生した世界で、それを生き残った人たちのインタビューという形式で様々な視点を描いた小説『WORLD WAR Z』を原案とした映画『ワールド・ウォーZ』である。あくまで原案であって、内容は原作から大きくかけ離れた内容になっている。

 

かつては国連の腕利き調査員として数多くの危険地帯を訪れていたジェリー・レイン(ブラッド・ピット)も、今では家族サービスに精を出す一人の父親。あるとき人間が突然凶暴化し人々を襲い出す現場に遭遇、ジェリーとその家族は間一髪その場から逃げ出すが、人間を凶暴化させる疫病はすでに世界各地に広まりつつあった。国連事務次官の手引きによって海上に浮かぶ空母に避難することができたジェリーたちであったが、事態収拾のためにジェリーが調査員として復帰することと引き換えに、家族の面倒を見るという交換条件を提示される。ジェリーは家族の安全のため、危険を顧みず世界各地を飛び回ることになった。

 

最初に書いたがこの映画、2億ドルの制作費をかけたゾンビ映画なのである。ゾンビ映画の金字塔である、リメイク版のドーン・オブ・ザ・デッドでさえ制作費が2600万ドルなのを考えれば、それがどれだけのものであるのか分かるだろう。よって従来であればゾンビが世界的に蔓延している設定であっても、ゾンビ映画では基本的には身の回りで起こる話を描いたものでしかない場合がほとんどなのだが(例外あるかも)、この映画では問題解決のためにちゃんと世界一周するので話のスケールが大きい。空母とかも普通ゾンビ映画には出てこないと思う。CGのクオリティも相応に高く、壁を乗り越えるためにうじゃうじゃと押し寄せる大量のゾンビのシーンは迫力も十分。

 

ゾンビ映画だとなんでゾンビになるのか、この後ゾンビ災害はどうなるのかといった部分は最終的にはぶん投げられることが多いが、この作品に関しては最終的に一応終息に向かいそうなところまでは描かれる。この点から言ってもゾンビというよりはパンデミック要素が強い作品になっている。ある意味この映画だけで終わらせるという責任感が強いし、ゾンビ映画としてはケレン味が薄く真面目すぎるとも言える。まあゾンビ災害の解決のための重要な人物が何もしないうちにあっさり変な死に方をしたりして、ツッコミどころがないこともないのだが……。

 

結論だがお金を掛けただけ面白くなったのかと言うと、そんなでもない。ゾンビ映画がなぜこんなにも作られ、B級映画の花形的ジャンルになったのかといえば、創意工夫次第で面白いものが作れる題材だったからだろう。この映画はゾンビ映画としては色々な部分が豪華にはなったが、アイディア的には尖ったところはなく手堅い内容なのだ。かと言ってつまらないわけではないので、ゾンビ映画にめちゃくちゃお金を掛けたらどうなる? という壮大な実験作だと思えば一見の価値はある作品であると思う。