四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『サマータイムレンダ Another Horizon』を買ってしまった。

この間観たばかりの『サマータイムレンダ』のゲームが出るというのでつい買ってしまった。TVゲーム歴35年、キャラゲーは危険という教訓を十分に理解していたはずだったのだが、なまじアニメが良すぎたせいで余熱が残っていたこともあり、思わず手を出してしまったのである。

 

 

ストーリーは原作およびアニメとほぼ一緒。テキストを読み進めながら、時折出る選択肢を選んでいく形式。サマータイムレンダという作品は前半と後半でガラリと作品の雰囲気が変わるのだが、前半のホラー・サスペンス的な展開ではこのノベルゲームライクなゲームシステムが非常にマッチしているのだが、後半バトル・アクション要素が増えてくると、テキストやエフェクトだけの表現ではやはり物足りなさ過ぎる。アニメを観たばかりなので、ここはこういう展開だったな…と思い出すこと自体は容易なのだが。

 

物語の根幹設定として、主人公の網代慎平は死んでも時を遡ってやり直すことができる。そして何度も死に戻りを繰り返しながら、この世界で起こっている事件の真相に近づいていくわけだが、このゲームではそのループを表現するためにフローチャート式に通ったルートが可視化されていく。そして通ったルートによってTIPSが手に入り、それによって新しいルートが開くという繰り返し。だがこのフローチャート、一見分岐などがたくさんあってよくできているように見えるが、ぶっちゃけ見せかけである。

 

まず原作通りの共通ルートがあり、そのところどころにキャラクター個別のルートが点在しているのだが、実のところ共通ルートを進めていくと最初は必ず個別ルートに入り、その後からでないと共通を進めることはできない。つまり共通と個別を交互にやっているだけの一本道に過ぎないのである。原作の展開に逆らうと即死バッドエンドが待っていたりするので、完全なる一本道というわけではないが……。ストーリーとしてはループしているのだが、ゲームシステムとしてのループではないのであまり広がりのあるゲームではなかった。

 

 

グラフィックはアニメのスチルがふんだんに使われており、アニメ版の追体験ゲームとしては悪くない。ただ『小弓場かおり』というゲームオリジナルのキャラクターが追加されており、ほんのちょっとだけ展開に変化がある。だが活躍するのは主に全てが終わった後のエピローグであり、原作の展開に一切影響を及ぼさない程度の扱いでしかない。最初個別ルート通ったときバッドエンドにしかならなくて逆に驚いたほどだ。こんな扱いでいいのか……。

 

個別ルートは澪・朱鷺子・ひづる・凸村・かおりの五つ。潮は原作ルートという扱いだ。凸村ルート入れようって誰が言い出したんだろうか? このゲームは原作の展開から外れると基本的に終わってしまうので(例外あり)、つまり個別ルートでもそうなってしまう。個別ルートでのみ判明する新事実とかそういうのも無いので、実際はちょっと長いバッドエンドみたいなものである。ただアニメにおける朱鷺子の扱いに若干の不満があったので、朱鷺子ルートに関しては個人的にはあってよかったと思えるものになっていた。

 

朱鷺子は敵から味方に寝返るキャラクターなのだが、正直作中の描写があっさりしすぎていて、アニメを見たときからなんだか勿体ないと感じていた。だがこのゲームにおける朱鷺子ルートは、たとえ本筋には何の影響も与えないものであったとしても、プレイヤーの心情的には十分すぎるほど味方側に寝返るだけの理由付けになっており、本筋に戻ったときの朱鷺子の仲間入りが非常にスムーズなものに感じられた。そこだけは原作にもアニメにも勝っている部分と言っても過言ではない。

 

 

そして原作通りの結末を迎えた後は、お楽しみのエピローグという名のオリジナルストーリーである。個別ルートがバッドしかないんだが? クリア後になんかオマケあるんでしょ!? と思いながらプレイしていたので、何かしらあってよかったと思う。実に全シナリオの1/6ほどがこのエピローグ部分に割かれており、結構なボリュームがあった。ただこのゲーム自体おそらくアニメと平行して作っていたに違いなく、よってそれほどだいそれた話を展開できるはずもなく、まあ無難な内容と言うしかない。

 

物語の黒幕を打倒し、何もかもが平和になった世界での話。この作品はどうやっても潮がヒロインなので、それ以外の女性キャラクターについてはどうしてもちょっと切ない扱いであった。ひづるに限って言えば、波稲との絡みがわりと多かった点については良かったと思う。これが『サマータイムレンダ2026』とかに繋がっていくのかなぁなどと妄想できた。

 

なんだかんだ言って完全に終わらせるまではプレイしたのだが、やっぱりキャラゲーはお布施目的でなければオススメはできない。そういうものだと納得できなければ手を出すべきではない。さーてゲームが終わったところで、アニメ版をもう一回見ようかな。