四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

一人で水族館。

成人男子がひとりで水族館に行くというのは、世間では難易度の高い行為のひとつとされている。それでも今回思い切って行くことにしたのは、行かねばならない用事が出来たからである。

 

今年の夏に放送されていた『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』、この作品は主に池袋周辺を舞台にしたアニメでだったので、個人的に聖地巡礼として以前から池袋の街をたびたびうろついていたのだが、その劇中で印象的なシーンで使われた場所でありながらまだ行けていない場所がひとつだけあった。それが池袋サンシャインシティのワールドインポートマートビル屋上にあるサンシャイン水族館である。

 

 

当然アニメの舞台となった場所を写真撮影をしたいので、できれば人の少ない平日が良かったのだがあいにく時間が合わなかった。行くなら土日祝日しかない。そうなるとどうしても自分以外の客が多くなって、ゆっくり撮影するというわけにはいかなくなる。そんなわけでなかなか行く機会が訪れなかったのだが、東京都内で鳥インフルエンザが確認された影響で、12月1日からサンシャイン水族館の目玉であるペンギンの展示がしばらく取りやめになるというのを小耳に挟んだのだ。

 

これなら今回用事のあるペンギンの水槽前に人は集まらないのではないか? 水族館の職員とペンギンには申し訳ないが、こちらとしてはまたとない機会である。休日は予約制ということでネットでチケット(大人一人2700円!)を購入し、土曜日の朝に池袋に向かったのだった。

 


休日のワールドインポートマートビル屋上は朝からすでに多くの人で賑わっていた。このフロアにはプラネタリウムも併設されており、男が一人で来るようなところではあまりないのでちょっと浮いていたかもしれない。しかし思ったより人が多く、なんだかあてが外れたような気分で列に並んで入場ゲートをくぐると、まずは左右に道が分かれている。左へ行くとアシカやペンギンなどが展示されている野外エリア。右へ行くと海の生き物が展示されている屋内エリアである。今回用事があったのは野外エリアで、いきなりそちらに行くこともできたのだが、なにせ水族館は二十年以上はご無沙汰である。せっかく高い入場料を払ったのだから今回は水族館の隅々まで見て回ることにした。

 

この水族館には幼い頃に家族と来たはずなのだが、当然のことながら当時とはまるで変わっているので思い出せそうで何も思い出せない。最初は小さな水槽の小魚から始まり、徐々に水槽が大きく賑やかになっていく。中心にあるサンシャインラグーンと呼ばれる天井からの光が降り注ぐ巨大水槽にはサメやエイなどが泳ぎ、このときはたまたまギャラリーの眼の前で係員がガラスを掃除するサービスも。エイも人に慣れているのか、これが見たいんやろ?とばかりに自分の腹の方を見せてくる。

 

 

途中でまた道が分かれていて、その片方は『海月空感』という名前のクラゲだけが展示されているエリアだ。通常エリアよりも薄暗く、光で照らされたおびただしい数のクラゲがふわふわと漂う水槽を見ていると不思議なリラクゼーション効果がある。時間が許すなら半日くらいはぼーっと眺めていたいくらいだったのだが、今回はそういうわけにもいかなかった。

 

そこを過ぎると順路に沿って階段を昇り水族館の二階へ。海水魚の次は淡水魚のエリアだ。この辺は水族館というより熱帯魚屋といった趣である。熱帯の森のような風景を進んでいくと、展示はカエルやウーパールーパーなどの両生類、トカゲや亀などの爬虫類、アザラシなどの哺乳類と変化していく。淡水魚というよりは水辺の生き物のエリアらしい。なんか大昔にサンシャイン水族館ウーパールーパーを見に来た記憶がかすかに蘇ってきたな……。

 


二階を見終わると一番奥に売店がある。ぬいぐるみやTシャツ、ファンシーグッズが並ぶ中で思わず目を奪われたのはたくさんのクラゲや、魚類が漢字で書かれた下敷きであった。裏面には解説文がビッシリと書かれていて、こういうのがたまらなく好きなのだ……。小学生くらいだぞ、こんなので喜ぶのは。思わず二枚とも買ってしまった。

 


売店を出て順路の階段を降りると野外エリアに出た。これで水族館をぐるりと周ってきたことになる。ちょうどアシカのショーをやっていたのだが、4歳の新人アシカ君はなにか芸をするごとにバックヤードに帰っては戻ってくるという天丼芸を得意としているようだった。しかし飼育員のちょっと呆れている様子を見て、それが芸の一部ではないことを悟った。コツメカワウソ君たちはひとかたまりになって眠っていて動く気配がない。うーむ時間帯がよくなかったのだろうか。

 

最後は”天空のペンギン”水槽という、水槽の上部がせり出していて人がその下に入り込むことでまるでペンギンが空を飛んでいるように見えるというこの水族館の目玉なのだが、前述の通りケープペンギンとモモイロペリカンは展示されていない。だが水槽にペンギンいるぞ!?と思って近づいたら、それは水槽の表面に貼り付けられたペンギンの写真だった。そしてペンギンがいない代わりなのか、水槽の前ではペンギンに関する展示があって、ペンギンはいなくとも人だかりができていた。うーむこれでは写真撮影どころではないな……。

 

 

滞在時間はトータルで一時間半ほど。当初の目的は果たせなかったが、久しぶりの水族館もなかなか楽しめた。それどころか他の水族館にも行ってみたくなった。都内には結構水族館があるから、そういう点ではいくらでも候補がある。一人で水族館に来るのもなかなか乙なものだ。