四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

MyGO!!!!! 5th LIVE 「迷うことに迷わない」のライブビューイングに行った話。

常に予想の斜め上の展開を行き続ける、今期最も目が離せないアニメ(自分調べ)『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。これまでバンドリというコンテンツには微塵も興味が無かったのだが、アニメを見ているうちに興味が出て色々調べていると、8月12日にライブをやるということが分かった。

 

アニメではまだ命名されてもいないが、キャラクターを演じる声優が実際に楽器演奏をしている『MyGO!!!!!(まいご)』というバンドは既に一年以上前から活動しており、アニメが7月から放送開始したにもかかわらず今回が既に5度目のライブ。最初のライブのときは演者非公表のまま行われ、今年の春にあった4度目のライブでようやく演者が正式に公表されたらしい。そんな形式でライブをやる方もやる方だが、誰だか分からないのにライブに行く方も行く方だと思う。バンドリという既に大きなプロジェクトの一環だからこそ成り立つ売り出し方だろう。

 

アニメの方は7話で初ライブを成功させるも急造バンドに亀裂が発生し、リアルライブ直前に放送された9話ではそのバンドが空中分解するという、リアルライブをやるんだから揉め事が起きてもなんとなく丸く収まるんでしょ? と考えていたであろう視聴者をあざ笑うような展開に驚きを隠せなかった。先行してライブのチケットを買った筋金入りのファンも、こんな展開になるとはおそらく想像していなかったはず。特にバンドメンバーの一人である長崎そよが相当なヘイトを稼いでおり、ライブではMCも声優がキャラクターとして行うというバンドリという作品の趣旨から言って、アニメの話題はかなりデリケートな扱いになるであろうことは門外漢の自分でも容易に想像できた。一体ファンはどんな気持ちでこのライブに行くのだろう……そんな考えが頭をよぎる。

 

現実(リアル)と仮想(キャラクター)が同期するバンド、というのが『MyGO!!!!!』というバンドのコンセプトらしいのだが、現状もっともそれが剥離した状態のように思えてならなかったので、ライブでアニメについて触れるのか、それともスルーするのか、ちょっとした野次馬根性もあってリアルライブの方にも興味を持ち始めた。そしてアニメでバンドが崩壊したきっかけの曲である『春日影』という曲をライブでやるのかどうかというのも気になっていた。話題性を抜きにしても”春日影”はとても良い曲だし。

 

生まれて此の方ミュージシャンのライブに参加したことなど一度たりともなかったのだが、ライブに行かないまでも一度雰囲気ぐらいは味わってみたいと思ってはいた。今回の『MyGO!!!!!』のライブはたまたま車を走らせれば行ける距離の映画館でライブビューイングをやっていることが分かったので、家で有料配信を見ているのも味気ないし、それなりにファンも集まるであろうことを考えると多少雰囲気は味わえるんじゃないかと思ったので行ってみることにした。『MyGO!!!!!』の曲なんてアニメで流れてたやつ以外はようつべで一回聴いたきりの超ニワカなので、空気が読めていなかったらどうしようと若干不安だったのだが、サイリウムを振るほどハジけている観客はあまりいなくて、大半は大人しく見ている客ばかりだったので自分の存在が浮くことはなかった。

 

 

開演時間をわずかに遅れ、アニメの主題歌でもある最初の曲『壱雫空』が始まる。女性5人のガールズバンドだと思って舐めていたが、実際に見てみるとパフォーマンスの激しさもあって結構カッコ良かった。それぞれの演者のポジションも、アニメのキャラクターのポジションとだいたい一致するのが面白い。劇中で高度なギターの腕前を持つ楽奈(らーな)役の青木陽菜さんはかなりのギターの使い手でステージの上を縦横無尽に動き回るし、アニメではギター初心者の愛音(あのん)役である立石凛さんもステージ上では端っこにいてそれほど目立たないが、地声がいかにもなアニメ声でほとんど愛音のままなのはさすがに驚いた。

 

その後『迷星叫(まよいうた)』『無路矢(のろし)』と続き、知らない曲も挟まるがバンドリシリーズの別のバンドのカバー曲らしい。その後は一旦舞台袖に掃け、アニメのED『栞』を演奏するための一時的なアコースティックライブ形式に変わる。個人的にはこの『栞』がマイゴの曲では1番好きだったりする。歌詞がすごく刺さるから。その後二曲アコースティックverが続いたが、ドラムの立希(たき)役林鼓子さんによるカホンとグローブを嵌めた手でシンバルを叩いて鳴らすパフォーマンスがクールだ。ライブを見ていると演者とキャラの解釈一致感がだんだん気持ちよくなってくる。

 

『MyGO!!!!!』の特徴として曲と曲の間にボーカルのポエムが挟まるので、コンセプト重視のインディーズバント感、地下バンド感がある。アニメでやっていた燈の語りはその再現だったのが理解できた。そうやって見るとすこし前に流行った『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドは陰キャバンドと言われていたが、かなりライトでファッショナブルだったように思えてくる。『MyGO!!!!!』はボーカルである燈(ともり)役の羊宮妃那さんの必死感も相まって、もっと切実なレベルの陰キャバンドとしてより狭く尖った感じがする。そういうのは広くはウケないかもしれないが、刺さる人にはめちゃめちゃ深く刺さるタイプだ。アニメも実際そんな感じだし。

 

その後はアニメの挿入歌でもある『碧天伴走』などを挟み、アンコールから衣装をラフなTシャツ姿チェンジすると、キャラクターのガワは取り払われて中の人たちの色が強くなった。トークで放送中のアニメに触れたときはちょっとピリっとした空気に一瞬なったような気がしたが、10話まで見てください!と言われたらそれを信じるしかない。渦中の人である長崎そよ役であるベースの小日向美香さんも感情移入しすぎていて思わず涙してしまうハプニングも。あれを見たら”どうして春日影やったの!”なんて言えないし言わせられないなと思う。会場のファンの声援は結構暖かい感じだったし、野次馬気分で見に来た自分をちょっと恥じた。

 

それはともかくこの時点で『春日影』をやらなかったのはバンドのコンセプトを大事にしていることが伝わってきて好感が持てた。確かにやったらウケは取れただろうけど、中長期的な視点では軽く見られる可能性も高かった。アニメは多分大団円を迎えると思うし、その後に思う存分やってほしい。

 

今回始めて『MyGO!!!!!』のライブを見たが、もう建前はどうでもよくなって途中から普通に楽しんでいた。ライブビューイングでも後ろの方の席でサイリウム振り回していた客がいたが、あれくらい弾けるのは少々抵抗感があって自分ではそこまでは出来そうにない。せいぜい身体を揺らすくらいで精一杯だったが、演者の方々もわりとライブビューイングの方に呼びかけてくれていたので、もうちょっと乗っかっても良かったのかなと思う。次は11月に今回の4倍のキャパがある東京ガーデンシアターで単独ライブがあるらしく、今度は現地に行ってみたいような気がするのだが、それはアニメの最終回を見るまでは保留ということにしておきたい。祥子がバンド辞めた理由を明かさずに引っ張り続けているのでちゃんと納得のいくオチになるのかどうか、それ次第では熱が冷める可能性もまだ残されている。

 

 

セットリスト

壱雫空(ひとしずく

迷星叫(まよいうた)

無路矢(のろし)

Time Lapse(カバー曲)

音一会 ~アコースティックver~
迷星叫 ~アコースティックver~
君の神様になりたい(カバー曲)

潜在表明

影色舞(シルエットダンス)

swim(カバー曲)

碧天伴走

焚音打(たねび)

名無声(なもなき)

音一会