四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『響け!ユーフォニアム』聖地巡礼の思い出2

来たる8月4日、アニメ『響け!ユーフォニアム』四年ぶりの新作である”アンサンブルコンテスト編”が劇場公開となる。2019年に続編制作が決定してから色々あって、あまりにも長い年月が過ぎてしまったが、公開日が決まってからはあっという間の出来事だったように思えるから不思議である。

 

今回は中編ということで上映時間は一時間程度、19年に公開された劇場用アニメ『誓いのフィナーレ』から2024年に放送される予定のTVアニメ三期への橋渡しとなる内容で、非常にゆっくりとした再発進といった感じではあるが、個人的には続編が見られるというだけで嬉しい。『ユーフォ』は今アニメをたくさん見るようになったきっかけになった作品なので、そういう意味でも思い入れの強い作品なのだ。

 

しばらく前に一度『ユーフォ』の聖地巡礼の記事をブログに書いたのだが、そのときは何もネタがないときのために続きはまたいずれと締めくくった。別にネタがないわけではないが、今やらずにいつやるんだ!? そう思って劇場公開までの間に薄れつつ記憶をなんとか辿りながら聖地巡礼を振り返ることにする。当時の写真を今見返すと、使える写真が思ったより少なくて聖地巡礼の記録としては歯抜けになってしまっているのだが、その辺はご了承いただきたい。

 

 

ロームシアター京都を後にし、三条から京阪本線に乗って中書島を目指す。途中通過する藤森駅は、『響け!ユーフォニアム』と同じく京都アニメーションの作品である『たまこまーけっと』で主人公のたまこたちの通う学校の最寄り駅であり、その学校のモデルとなった京都聖母学院がすぐ近くにあるのだが、そのことはこのときの自分はまだ知らなかった。いつか行ってみたいと思う。中書島で京阪宇治線に乗り換え、終点まで行くといよいよそこが『響け!ユーフォニアム』の舞台となった宇治である。

 

 

改札を出て右手側に宇治川宇治橋があった。目と鼻の先である。思ったより豪快な川の流れとそれに伴って涼やかな風が吹いていた。当時は京都アニメーションの事件の直後であり、どこかやりきれない気持ちをずっと抱えていたのだが、アニメの中と変わらない景色を目の辺りにしてようやく気持ちのストッパーが外れつつあった。

 

2019年時点で駅の周辺は工事中だったので、今ではもう同じ景色を見ることはできない。宇治橋の上から見える、線路(JR奈良線)の向こう側のユニチカの煙突も、アニメの中では二本だったのがこの時点で既に解体工事中で一本しかなく、2023年の時点ではもう完全に無くなっているのだ。

 

 

宇治橋を渡り宇治橋西詰交差点付近。京都の有名観光地ということでとてつもなく人が多く、これから写真撮影には苦労することになる。『響け!』では主人公・黄前久美子やその幼馴染である斎藤葵の登下校ルートに使われていることが多い。そのすぐ横にあるベンチは久美子の先輩である後藤卓也と長瀬梨子のカップルがあがた祭の日に待ち合わせしていた場所でもある。宇治は源氏物語ゆかりの地であることもあって紫式部の像も写真の少し外に置かれている。

 

 

宇治橋からそのまま道路に沿って進んでいくとJR宇治駅へ着く。宇治観光の事実上の出入り口だけあって、長距離バスや人力車などが待機しており賑わいを見せる。この駅の出入り口付近にある壺型のポストはアニメ一期の8話、あがた祭の日に久美子の幼馴染の塚本秀一と、久美子のクラスメートである加藤葉月が待ち合わせをしていた場所である。アニメにもチラっと映るからくり時計も今は撤去されてしまったらしい。写真に残しておいて良かった。久美子のスタンディは当時宇治駅そばの観光案内所”ゆめりあうじ”の建物の中にあったもの。サイン入りの貴重品だが今でもあるのだろうか。

 

 

JR宇治駅から先程の宇治橋西詰交差点まで戻り、看板が指し示す平等院方向には目もくれず大きな鳥居をくぐって直進すると、突き当りのT字路にあがた祭を代表的な祭事とする縣神社がある。ここに来る途中には橋姫神社という縁切りの神様が祀られている神社があったりするのだが、今回の話題とは関係ないので割愛する。

 

縣神社はアニメ一期の8話で吹奏楽部の先輩で三年生の田中あすか中世古香織小笠原晴香の三人が参拝していた神社である。あがた祭は深夜の暗闇の中神輿を担いで行脚するという暗夜の奇祭で知られているのだが、お祭りの知名度と比べると神社は想像より小さかった。

 

 

縣神社から天ヶ瀬ダム方向へ進んでいき、緩やかなカーブを抜けるとどこかで見たような風景がそこに。そう、現実には鬱蒼とした森だがアニメではお茶屋の横に久美子の住んでいるマンションが建っているのである。存在はしていないが自分には確かに見えていた。建物自体は京都アニメーションのスタジオがあった六地蔵の近くにあるものをそのまま持ってきたものらしいのだが。

 

その久美子のマンション前から宇治川方向の道に入っていくと、喜撰橋と呼ばれる宇治川の中洲である塔の島に掛かる橋がある。その手前の自動販売機のある場所、ここはもしや、劇場版『誓いのフィナーレ』で交際することになった久美子と秀一が、あがた祭の日に散々遊んだ後にキス未遂を起こした場所じゃないか! アニメの中では夜でひとけが無かったとはいえ、お前らこんな自宅前みたいな場所でやってたのか!? そりゃあかんわ……。秀一は突き飛ばされて久美子が別の女のところに行ってしまうのも無理は無い。

 

こういう気付きを得るのも、実際に現地に行ってみてこそだ。このあたりはもう見覚えのある場所しかない。喜撰橋の手前にある郵便ポストも、アニメ二期の最終回で久美子が姉への手紙を投函したポストだし、喜撰橋の上から宇治橋方向を見れば二期の一話で夏祭りの打ち上げ花火が映っていたカットそのまんまである。

 

 

喜撰橋を渡らずに宇治川宇治橋に向かって進むと、そこはあじろぎの道と呼ばれる遊歩道である。久美子の登下校に使われる道のひとつで、その途中にある通称久美子ベンチは特に作品中に頻出するスポット。グーグルマップでも久美子ベンチとしてポイントが打たれているほどだ。休憩ポイントとしてちょうどいい場所にあり、写真を撮るために人がいなくなるのを待つのが大変だった。足元の地面も非常にえぐれており自分が座ったときには地面に足がつかなかった! 一体どれだけの人がここに座ったのだろうかと想像してしまう。

 


喜撰橋まで戻って塔の島へ渡る。喜撰橋は二期の1話の夏祭りに、橋の欄干で久美子と友人である麗奈が二人で花火を見ていた場所でもあり、『誓い』冒頭で秀一が久美子に告白した場所でもある。遠くから見ると後ろの旅館”花やしき浮舟園”もあって劇中と雰囲気が重なる。宇治川周辺はところどころにポスターなどの『響け!』関連の掲示物が貼られており、現地住人との関係もそれなりに友好的…なのだろうか? 塔の島には鵜飼の鵜が飼育されており、観光の一環として船に乗ったりできるようなのだが、今回は急ぎだったので見合わせる。

 

 

塔の島から同じ中洲である橘島へ渡る。この辺りは二期の1話、夏祭りの屋台が並ぶカットで映っていた。そして橘島から宇治神社方向へ掛かる橋が朝霞橋であり、劇場用アニメ『HELLO WORLD』を観たときに、主人公とヒロインが夏祭りに行くシーンでなんかここ見たことある!となったのをよく覚えているのだがそれはまた別の話である。朝霞橋を渡ってすぐの場所は、一期4話で滝先生について話す久美子と秀一に麗奈が抗議するシーンや、6話で葉月がチューバを練習していたりする場所なのだが、川岸の石畳のところ、実際は傾斜が結構急なので無理はしないほうがいいだろう。

 

 

 

朝霞橋を渡ってすぐのところにある宇治神社。台風の影響で鳥居が倒壊して間もない頃で、今写真を見ると入り口に何も建っていないので違和感が凄い。鳥居の前は前述の夏祭りで久美子と麗奈が待ち合わせをしたり、二期の11話で二人が自転車で待ち合わせしていた場所でもある。鳥居をくぐって境内に入り、少し進んだところにある手水舎は一期7話で久美子と秀一が雨宿りをしていた場所。兎のオブジェも、一期の1話で滝先生が宇治神社に参拝したときに映っていたものである。

 

 

宇治神社前の道を天ヶ瀬ダム方向に少し行くと観流橋がある。二期11話で中学時代の麗奈と滝先生が会話していたところだ。そこからさらに少し行くとアニメ『CLANNAD AFTER STORY』で主人公の岡崎とその娘の汐が泊まった宿のモデルとなった亀石楼という旅館があるのだが今回は用がない。

 

戻って宇治神社の本殿横の道を抜けると大吉山の登山口へと続くさわらびの道。宇治上神社を横目に見ながら緩やかな坂を登っていく。一期8話で久美子と麗奈が宇治神社の境内で待ち合わせをし、大吉山へ向かうシーンと同じ道である。この辺りで少しづつ日が暮れてきた。

 

 

大吉山を登る。アニメでは久美子がユーフォニアムを背負っていたが、自分もこのとき旅行の荷物を背負っていたのである意味似たような気分を味わえたかもしれない。中腹の展望台までゆっくり歩いて20分ほどだったが、真夏だったこともありシャツにじっとりと汗がにじむ。麗奈は白ワンピースという女の子が夜出歩くのは危ない恰好で登っていたが、絶対汗で濡れ透け状態になっていたんじゃないかと思う。

 

木々の隙間から時折見える夕暮れの町並みが美しい。展望台に到着したものの、夕暮れで分かりにくかったがよく見るとうじゃうじゃと人が集まっていることに気付く。ここは一期8話や『誓い』で久美子と麗奈が逢い引きしている場所として非常に人気があると聞いていたが、まさかここまでとは思わなかった。たまにここでアニメでやっているのと同じようにトランペットを吹く不届き者がいるらしいのだが、住宅地はそれほど遠くはない。近所迷惑なので絶対に止めるべきだろう。

 

ちゃんと数えたわけではないが、展望台にはざっと三十人~四十人くらいは集まっていそうだった。あの事件が起きてすぐのお盆休みということで、宇治を訪れる京アニファンも多かったのだろう。アニメでは作品の空気感が一気に変わる印象的なやりとりが交わされる場所でもあるが、こんなに人が集まっては風情も何もあったもんじゃない。その辺にいた人と少し会話した後下山した。

 

 

大吉山を下りると宇治の街もすっかり夜。昼間はあれだけ観光客で溢れかえっていた街も静まり返っていた。宇治神社の前の道を宇治橋方向へ進むと宇治橋東詰交差点へ。これでだいたい最初の京阪宇治駅から一周してきたことになる。この辺りも夜は夜で一期5話で久美子と麗奈が下校で一緒になったときに会話したシーンや、一期12話で自分の実力不足を痛感した久美子が「上手くなりたい!」と心の中で叫んで宇治駅から宇治橋の上を疾走したシーンが思い出される。

 

この日は朝から何も食べていなかったので、凄まじい空腹に襲われていた。今日は宇治橋のたもとにあるサイゼリヤで食べると最初から決めていたので、そのせいでもある。アニメでは一期7話で小笠原晴香と斎藤葵が部活について話し、『誓い』で一年生の久石奏が先輩の中川夏紀について久美子に相談したのもこのサイゼリヤである。カルボナーラとミラノ風ドリア、プリンとティラミスの盛り合わせという通称”くみかな”セットを注文。何も食べていなかったとはいえさすがにこの量を一人で食すのは大変だった。お腹いっぱい。夕食の前にこんなに食べたら絶対親に怒られるゾ。

 

 

夜の宇治は昼間とはまた違った趣がある。ひとけが無くなるので写真も遠慮する必要がない。やったね。宇治橋西詰の鳥居、一期8話や『誓い』のあがた祭のシーンで映るのだが、昼間は人が多すぎてとても掲載できるような写真にはならない。OPで毎回映る時計もここだった。そのまま夜の宇治を徘徊し、昼間と同じ場所に行ってみるが、『誓い』で秀一が久美子の告白した喜撰橋の場面も、あがた祭で二人が走っていく青春真っ盛りの場面も劇中では夜だったので、やはり昼間より雰囲気がある。

 

 

 

夜の宇治をひとしきり堪能した後京阪宇治駅に戻ってくる。アニメで久美子がユーフォくんのガチャガチャを発見する一期12話のシーンは駅前のものなのだが、かつてあったというコンビニは既に閉店しており今では観光案内所になっている。京阪宇治駅は久美子や麗奈の登下校に使われる路線であり、アニメでもしばしば登場する。昼間は人が多すぎて撮影どころではないが、夜ならば人もまばらになるのでようやく写真に収めることができた。そしてこの後は宿泊施設に戻り、『響け!』聖地巡礼二日目へと続く。