四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『響け!ユーフォニアム』聖地巡礼の思い出3

響け!ユーフォニアム聖地巡礼旅行二日目。この日は主に宇治以外の京阪宇治線の沿線にあるスポットを巡った。

 

まず朝六時に起床して、京阪宇治線黄檗駅のすぐ近くにある中路ベーカリーというパン屋を訪れた。ここは作中にも登場する食べ物”フランクデニッシュ”を販売しているお店で、塚本秀一が下校時に寄り道して買い食いしたり、一期9話で加藤葉月もここに立ち寄って秀一と同じものを購入して一息に食べる姿が描写されている。ユーフォファンの間では有名なお店で、宇治で響け!関連イベントのある日には売り切れることもよくあるらしい。しかし朝六時半には開店しているはずなのにこの日は開いていない。なぜだ!? シャッターの張り紙をよく見ると”お盆休み”とあった。うん……それを言われたらぐぅの音も出ない。一人で納得して宇治に向かうのだった。

 

 

朝の宇治は観光客もまだほとんどおらず、写真撮影には絶好のタイミングであった。なぜまた宇治に来たかと言えば、昨日うまく撮れなかった場所の写真を取り直したりしつつ、昨日人だらけで満足に見られなかった大吉山展望台を見に行くためである。

 

京阪宇治駅から源氏物語ミュージアムへと続くひとけのない道に入り、大吉山へと向かう。この日は朝に霧雨が降っていて、山を登る途中宇治の街に虹が掛かっているのが見えた。幸先の良いスタートだ。そう思った。

 

 

誰もいない大吉山の展望台で景色を眺めながらコンビニで買った朝食を摂る。たまに山登りをしている近所の老人が通りかかるくらいで、雰囲気はかなり良い。昨日ここにむさい男たちがたむろしていた光景が嘘のようだ。早くも蝉の鳴き声が響き渡る中、小一時間ばかり景色を眺めて山を下りた。

 

そして源氏物語ミュージアムのすぐそばにある川東公園に立ち寄る。ここは『誓い』の序盤で久美子と秀一がブランコに乗りながら部活の新入生について話していた場所だ。ひっそりとした目立たない場所で、付き合い始めた二人が周囲にバレないためにわざわざこんなところで密談しようとしたのかなと思ったのかなどと想像するとなんだか微笑ましい。

 

 

それから宇治川の対岸へ渡り、喜撰橋と久美子ベンチの間にある宇治市観光センターに立ち寄る。ここは午後5時には閉館になってしまうので、昨日は気が付いたときには既に閉まっていた。ここには歴代の立て看板やファンの交流ノートが置かれており、一度は立ち寄っておきたかったのだ。ノートのナンバリングは既に何十冊にも及んでおり、ここを訪れたファンの数は想像以上の様子。

 

事件直後ということもあり京アニ募金箱が置かれていたが、当然ここだけではなく宇治の色んなところに置かれていて、見かけるたびに1000円入れることにしていた。このときはこれくらいしか出来ることがないという無力感に苛まれていたし、その思い込みから少しでも逃れるためには必要な行為だったのだと思う。こうして宇治での用事は終わり、次の目的地へと向かった。

 

 

宇治から一駅乗って三室戸。ユーフォでは三年生田中あすかの家の最寄り駅にあたる。二期OPに自転車で駅の前の踏切を通る姿が描かれているし、二期9話で久美子があすかの家に行った際、帰りの電車を待っていたのが三室戸駅なので間違いない。三室戸駅から宇治駅は普通に見える程度の距離なので歩いて帰れと言ってはいけない

 

目的地は改札を出て右手側の宇治川河川敷だったのだが、電車のホームの前にある不動産屋・ウェルホームは店構えこそ違うものの、二期9話で描かれた田中あすかの過去で、まだ幼かったあすかが父親から贈られたユーフォニアムの演奏の仕方を習った楽器屋があった場所だと一目見てわかった。真夏で人通りが少ないとはいえ住宅地。できるだけ怪しまれないように写真を撮る。

 

 

駅前から住宅地を抜けて宇治川河川敷に出る。するとそこから見える宇治川水管橋が、二期9話であすかが久美子に”響け!ユーフォニアム”を演奏した場所である。アニメの一期で最も印象深い場所が大吉山展望台なら、二期はきっとここだろう。夕暮れ時ならばアニメと同じ雰囲気が味わえるだろうが今回はそこまで待つ時間的な余裕はない。だが劇中の二人と同じようにコンクリートに背中を預け、アニメでのやり取りを思い出すとそれだけで至福のひとときが味わえた。草が生い茂っていなかったらもっと良かったが。他にも劇場版『届けたいメロディ』の冒頭で小学生のあすかが友達と下校するシーンや、二期1話の夏祭りであすかが打ち上げ花火を見上げるシーンなどでこの河川敷周辺が描かれていた。

 

 

三室戸駅まで戻り、今度は線路の反対側へと進む。少し行くとドラッグストアがあり、その前に幸栄堂という小さな和菓子屋がある。このお店、二期9話で久美子があすかの家に行く際に、気難しいあすかの母親へのおみやげとして中世古香織に渡された”幸富堂の栗まんじゅう”の幸富堂のモデルと言われている。あすかの家の最寄りである三室戸にあり、栗まんじゅうの美味しい非常に名前の似たお店ということで、ユーフォのファンが足を運ぶようになったという。店内には訪れたファンによって持ち寄られたユーフォニアムのグッズが多数あり、正直どこか落ち着かない感じ。香織が”幸富堂の栗まんじゅうが一番おすすめだよ!”と宣伝してくれたからか香織を贔屓しているようだ。せっかくなので栗まんじゅうをお土産に、ひんやりと冷たいフルーツ大福は途中で食べるつもりで購入した。

 

 

三室戸から一駅乗って黄檗(おうばく)へ。ユーフォ本編では久美子の友人である加藤葉月の最寄り駅にあたる。そして久美子たちが通う北宇治高校のモデルになった、京都府立莵道高校に行くには一番近い駅……だと思っていたのだが、地図で見ると学校までの距離は三室戸大差ない。JR黄檗駅からならもっと近いのだが、このアニメは京阪が協賛しているため京阪電鉄しか使わないのである! 大人の事情というやつだ。駅からは莵道高校行きの循環バスが出ていたが、作中のキャラクターたちと同じ気分を味わうため敢えて徒歩で行くことにした。だが学校は緩やかな勾配の坂を登った高台の一番上にある。真夏の京都ということもあって、今にして思えば行きぐらいはバスで行くべきだったな……というのが今旅行最大の後悔でもあった。

 

まず京阪黄檗駅からJR黄檗まで南下し、その次の交差点から黄檗の坂を登っていった。途中、真柴豆腐店という店の前に、『響け!』のキャラの一人、川島緑輝サファイア)の飛び出し坊やを見つけて順路であることを確認する。飛び出し坊やとは関西圏特有の立て看板の文化で交通事故防止の注意喚起として使われているものだが、アニメの舞台となった地域では京都アニ作品のキャラを模した飛び出し坊やがファンの手によって作られている。宇治の街でもユーフォニアムやメイドラゴンのキャラの飛び出し坊やをいくつか見かけた。

 

地図上では1kmくらいのはずだが、35度を越える夏の暑さとひたすら続く坂道で体力がかなり持っていかれた。ほどほどに疲れた中間地点にセブンイレブン宇治黄檗公園店がある。ここはユーフォのアニメでもしばしば登場するところで、ガチャガチャを回したり買い食いをしたりしている場面が何度か描写されている。休憩にはちょうどいい場所なので、よく久美子たちが道草をしている気分が分かろうというもの。先程買ったフルーツ大福を食べ、アイスクリームをひとつ買って英気を養う。

 

 

セブンイレブンからさらに南下し、1つ目の交差点から保育園のある道に入ると綺麗に区画整理された羽戸山という集合住宅地に入る。そこから階段ではなくスロープを登っていくと羽戸山緑地に沿った手すりの先に、一期12話で久美子が滝先生に褒められたあとに走ってきた場所と、円盤のオマケであった14話で葉月や緑輝が腰掛けながら話していたブロックのある場所があった。

 

この辺は似たような場所が多いうえに、アニメでも絶妙に判別がつきにくいので実際に見ても勘違いしていそうで怖い。ブロックのあった場所からひとつ道を戻り、高台に向かって住宅地の中を進むと1つめの公園を過ぎたところに集会場がある。二期の6話で久美子たちが滝先生の奥さんが好きだったというひまわりの一種であるイタリアンホワイトが咲いているのを発見した場所だ。この辺りは本当に閑静な住宅街なので、はしゃがず、騒がず、不審に思われないように心がけたがよそ者が一人でうろうろしているのはどう考えても怪しいな……。

 

 

集会所から少し上がって羽戸山第3児童公園。だがアニメの中では北宇治第3児童公園と表記されている。一期3話で三年生の晴香と香織が滝の顧問就任によって発生した部内の揉め事について話しているシーンや、9話で秀一にフラレた葉月を緑輝が励ますシーン、10話で吉川優子が香織を励ますシーン、『誓い』でラジオ体操している児童の横を久石奏が通りかかるシーンなど、学校から目と鼻の先にあることもあって登場回数はかなり多い。しかしあまりにも学校から近すぎて、あんまり込み入った話をする場所でもないよな…という気もする。絶対誰かに目撃されるぞ。

 

 

そして公園を過ぎ、バス通りに差し掛かると特に印象深いあの場所が出てくる。『響け!ユーフォニアム』のタイトルは冠していないものの、『誓いのフィナーレ』と遂になる劇場用アニメ作品『リズと青い鳥』の一番最後、鎧塚みぞれと傘木希美が下校する場面で出てくる道! 階段! ハッピーアイスクリーム! おっと思わず興奮してしまった。階段を登ると駐輪場があり、いよいよ学校前の最後の坂になる。

 

 

ようやくたどり着いた住宅地の一番奥が、久美子たちの通う北宇治高校のモデルになった京都府立莵道高校だ。『響け!ユーフォニアム』では学校の中でも数えきれないほどの物語が繰り広げられるわけだが、部外者なのでもちろん学校の中には入れない。しかし校門付近だけでもアニメには頻繁に登場するため、雰囲気は充分に味わえる。多分これまでたくさんのユーフォのファンが訪れたのだろう。このとき高校球児たちが校庭で白球を追いかけているところだったが、昼間にいい歳したおじさんが校門前に現れても慣れたもんである。とはいえあまり長居しても不審者扱いは免れないだろう。何枚か写真を撮った後はすぐにこの場を立ち去った。

 


京阪黄檗駅まで歩いて戻る途中、熱中症気味になって道中の公園で一時間の休憩を余儀なくされた。この日の午後、京都は雨の予報が出ていたこともあり少し急ぐ必要があったのだが、全く動けずベンチで横になっていた。それからなんとか駅まで戻り次は小幡。一期10話で久美子と夏紀が訪れたマクドナルドがあり、それ以外では京都アニメーションのスタジオが点在している本拠地でもある。事件直後ということもあり周囲をうろうろするのは非常にデリケートな問題で今回ばかりは見送った。京阪小幡駅構内にある、ユーフォキャラの描かれた京アニショップの看板だけ撮影して次に向かう。

 

 

小幡の次は六地蔵。設定上は久美子たちの通う北宇治高校の最寄り駅という扱いになっており、駅の内外を問わず頻繁に登場する。この駅にもユーフォキャラの描かれた看板があり、駅のホームだけは写真に収めたが、駅の外での撮影は控えた。駅から少し離れた場所に当時はまだ献花台が設置されており、事件の影響もまだ色濃く残っていたからだ。おまけに大量のマスコミがファンの訪れるの待ち構えており、次の餌食を今か今かと待ち構えていた。

 

それだけはゴメンだと思い、マスコミを逃れるようにして焼け落ちた京都アニメーション第一スタジオの前まで行くと、事件の当事者でなくてもこみ上げるものがあった。だが京都アニメーション第一スタジオは住宅地のど真ん中にあり、ファンとはいえども住民にとって見知らぬ人間が頻繁に出入りするようなことは好ましく思われないことだろう。そう考えるとすぐに立ち去るしかないと思った。

 

 

そういうわけで二日に渡った響けユーフォニアム聖地巡礼旅行、その回想を終える。当時は『響け!ユーフォニアム』と出会って間もなかったので、かなり知識が浅く充分な結果が得られたとは言い難かったのだが、それも含めてかけがえのない思い出である。新作も公開され、来年にはTVアニメ3期が来ることが予告されているので、いつかリベンジしたいものだ。今はとにかくアンコン編が待ち遠しい。