四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『グリッドマンユニバース』鑑賞。

電光超人グリッドマン』が放送されていたのが今から30年前。特撮なんてガキの見るもんだ!と思って当時はスルーしていたのだが、現在アニメとなってリバイバルしたグリッドマンを見ているのだから不思議なものである。アニメ制作を担当したTRRIGERの、ときに物理法則を無視するような派手なアクション、特撮のエッセンスを存分に生かしたカメラワークとバトルシーン、垢抜けたデザインのキャラクターたちの織りなすドラマ。旧作は見ていなかったので細かい部分は言及できないが、それでも十分楽しめる作品になっていたのがアニメ版グリッドマンだった。

 

そのグリッドマンが『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』の二作品の内容をふまえて映画化。アニメ版にドハマリしていたわけではないけれど、二作品に渡って結構気になる要素が残っていたのでそれらに何かしらの結論が出ればいいなと思っていたし、特に裕太と六花の恋の行方はずっと宙ぶらりになっていたので是が非でもその結末を見届けたかった。もう行くしかない。

 

都立ツツジ台高校に通う響裕太はかつてグリッドマンと同化していたが、そのときの記憶は残っていない。変わらない日常を送るうちに裕太は二年生に進級、かつてグリッドマン同盟として一緒に戦い、距離が縮まっていた宝田六花に告白しようと決意する。だが文化祭の準備に追われる最中、二度と出現しないはずだった怪獣がふたたび街に現れた。訪れる危機に駆け出す裕太はグリッドマンの声がする場所へ向かう。そして今度は響裕太本人としてグリッドマンと同化して怪獣に立ち向かうが、久しぶりの戦いでうまく戦うことができない。だがそのピンチに赤い竜のロボット・ダイナレックスが出現、共に怪獣に立ち向かうことになるのだった……というのが序盤の展開。

 

この映画を一言で言うなら『ファンサービス』そのものである。テレビアニメ版を視聴済みなら満足のいく内容のはずだが、それ以外の人に対して訴求する内容ではないのが欠点といえば欠点。だが”こういうのが見たかった”というファンの願いは概ね叶えられるし、”これは一体何だったのか”という部分にもほぼ回答がある。その分新たな疑問も生まれることになるが……特にラスボスは何者なんだお前は。

 

今回の主人公は響裕太”本人”。『SSSS.GRIDMAN』も主人公は響裕太なのだが、そのラストで実は本人ではなかったということが明かされるため、ようやく本人のパーソナリティが明かされることになった。普段は気弱だがやるときは即断即決で自らの犠牲も厭わないという『ヒーロー』然とした性格で、ちょっと怖いくらいの存在。前作で神様の思惑通り動かなかったくらいの人間だから、そうなるのも必然だったのかもしれないが。

 

どうせ出るんでしょ? と思いつつも扱いが難しそうに思われた新条アカネをどうするかも、ほぼ模範解答としか言いようがない。かつての敵との共闘もあって非常に美味しい立ち位置だったのだが、大画面であの衣装は非常に目のやり場に困った……。

 

ダイナゼノン側はストーリー的にはサブのような扱いではあったが、ついに語られる本物の響裕太の物語であるグリッドマン側に比べて、すでに完結した物語という立ち位置だったように感じられたので妥当だったかもしれない。しかし恋人になった蓬と夢芽の仲睦まじい様子や、ちせを加えた真のガウマ隊全員集合など見たいものは見せてもらえたと思う。特に主題歌『インパーフェクト』の入りは完璧。ピンチからの大逆転の演出には大きな役割を果たしていた。でも暦の扱いはちょっと切ないし、怪獣優性思想がほぼ出ないのもやはり持て余し気味なのかなと感じてしまった。

 

バトルシーンはグリッドマンとダイナゼノンが並び立って戦うことになるところまでは想像できたが、やれることは全部やるくらいの気前の良さにはさすがにお腹いっぱいになった。特に二代目はそんなことできたの!? という一番のサプライズだったかもしれない。グリッドマンの新形態よりよっぽどサプライズだ。後半30分は怒涛の展開で、もう食べられませんとなっているところに更に口に食材を突っ込まれるようなてんこ盛りで、正直ゲップが出そうなくらいだった。ピンチ→パワーアップ→逆転を何度も繰り返すのは見ててちょっと疲れてしまったくらいだ。

 

『原作:グリッドマン』ってそういうことだったのか! ”電光超人”名義じゃないんだな、とSSSSシリーズを見ていてなんとなくモヤモヤを感じていたのだが、この映画を見て腑に落ちた。『人間は虚構を信じられる生き物』なんだという主張には作り手の自己肯定も入っているだろうが、見ている側も肯定されるメッセージで非常に感銘を受けた。自分は誰かの作り物だった、ということが物語の仕掛けのひとつであるグリッドマンに沿っているし、作り物だとしても自分たちにとっては偽物ではないのだから。これからも虚構を力に換えて生きていこう。

 

それにしてもやっぱりこの作品に期待したいのはヒロインたちの可愛いところなのだが、そういう点でも満点というほかない。恋人関係からさらに一歩踏み込んだよもゆめ、そして裕太と六花の恋の結末についても本当に最高だった。ファンにとってはこれ以上のものはない。グリッドマンシリーズもこれで終わりではないと期待したい。