四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『オットーという男』鑑賞。

日本人男性の平均寿命は81歳とちょっと、ということは今年で41になる自分はもう人生の半分が過ぎたと言ってもいいのかもしれない。生きているというよりは、もう既に死に始めている。そんな漠然とした心境の変化を感じつつある自分にとって、『オットーという男』という映画はこれからの生き方を多少考えさせられることになった。

オットー・アンダーソンという初老の男はいつも仏頂面で、誰に頼まれたわけでもないのに毎日町内のパトロールをしているような人。その内容はゴミの分別、駐車のマナー、ペットの散歩の仕方などルールを守らない者には手当たり次第に食って掛かり、周辺住民からは煙たがられていた。だが妻に先立たれ孤独を感じていたオットーは仕事を辞め、妻の後を追う決意をする。だがそんな矢先、向かいの家に引っ越してきたメキシコ人の家族に関わってしまったことで、何かとお節介を焼かれるようになる。人を遠ざけるオットーに対して、グイグイと距離を詰めてくる向かいの一家。意図せず何度も自殺が阻止されるうちに、徐々にオットーの心境にも変化が訪れる……。

 

この映画はスウェーデンの小説で映画化もされた『幸せなひとりぼっち』のハリウッドリメイクである。そちらは未見なのだが、トム・ハンクス主演のヒューマンドラマという時点で手堅い内容なんだろうな、というのは見る前からだいたい想像がつく。はずだったのだが……。

 

はっきり言って、この歳になるとオットーのことはもう他人事とは思えなかった。家族もおらず一人暮らしで、友達とは喧嘩して不仲、周囲や社会に不満を募らせており、自ら人生にピリオドを打とうとする……。自分も今でこそ強がってはいるが、10年後となるどうなっているかは分からない。鑑賞中さまざまな思いが頭の中をよぎり、オットーに感情移入しすぎて、いつぶりか分からないくらい号泣してしまった。

 

オットーも最初は嫌なじいさんだなと思うのだが、何だかんだで困っている人を見たら放っておけない人間で、気難しいがどこか人恋しさを感じさせるようなトム・ハンクスの演技はさすがである。物語の折に触れてオットーの回想が入り、青年時代の奥さんと出会い、それによってどれだけ人生が色づいていったか、そしてどれだけ奥さんのことが大切だったのかが伝わってきて胸がつまった。ストーリーとして捻りのない分かりやすい話なのだが、出てきたものは全部使い切って終わるという、すっきりした感じも好みである。エンドロールの最後まで目が離せない作品であった。

 

興行的にはコケてしまっているようで、早期に公開終了してしまいそうな感じがするのが残念でならない。