四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『エルヴィス』鑑賞。

アカデミー賞にノミネートされていたので観てみた。正直言ってエルヴィス・プレスリーの曲は全然分からないので(歌っているのが誰だか知らないだけで、多分聴いたことはある)、個人的には袖に素麺のついた派手なステージ衣装で踊っている歌手以上の存在ではなかった。そして晩年の太っていた姿の印象が強くあまりかっこいいイメージもない。自分が生まれる前のスターに対するイメージなんて碌なものじゃないが、そういう人間にこそうってつけの映画だったのが『エルヴィス』だった。

 

黒人居住区で育ち、黒人の歌を聴いて育ったエルヴィスは新人歌手としてデビューするとその腰をくねらせる独特の踊りと甘いマスク、そして歌によって女性ファンを熱狂させる存在となった。それに目をつけたのが、カントリー歌手のマネージャーとして、ツアーでたまたまエルヴィスのライブに訪れていたジム・パーカー大佐と名乗る男だった。彼はエルヴィスの才能を見抜き専属マネージャーとなるとあらゆる手を尽くしてエルヴィスを売り込んでいく。するとメンフィスで活動していたエルヴィスの評判はまたたく間に全米へと広がっていった。だがテレビ出演を期に、保守派の政治家に彼のスタイルが黒人を模倣したものだと批判されるようになってしまう。挙げ句の果てには公の場で踊っただけで逮捕されてしまうのだが、兵役に就くことでかろうじてそれを回避する。兵役を終え、その後も映画出演に全米ライブツアー、ラスベガスでのショーと活躍の場を広げていくかに思えたのだが……。

 

アメリカ近代史に燦然と輝くスターがいかに誕生し、どれだけ愛され、そして消えていったかを知ることができ、観る前と後ではだいぶプレスリーに対するイメージが変わったことは言うまでもない。そして彼を語る際に決して無視できない、ジム・パーカー大佐なる人物のことは特に忘れられない。はっきりって、この映画を観終わった後はプレスリーよりもこのジム・パーカー大佐の方が強く印象に残る。とんでもないヴィラン(悪役)だ。最初は地方の新人歌手に過ぎなかったプレスリーがこれだけ知れ渡るようになったのも彼の手腕に違いないのだが、それ以上の搾取と負債によって追い詰められたプレスリーの生活は徐々に破綻をきたしていくことになる。しかも自分の都合でプレスリーの活動も制限させるし本当に憎たらしい存在なのだ。しかもその役をあのトム・ハンクスが演じており、ラジー賞助演男優賞にもノミネートされてしまうという始末。そりゃあ確かに怒りの矛先を向けたくなる気持ちも分からないでもないが……。

 

プレスリーの歌の知識があったらもっと楽しめたのかもしれないが、歌モノとしてはやはり聴いただけでQUEENというのが分かった『ボヘミアン・ラプソディ』の方が個人的には入りやすかった。それにしてもこの手の作品で胸糞マネージャーが現れるケースが多すぎないか? 気のせいか?