四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

Netflix『西部戦線異状なし(2022)』視聴。

自分が自衛隊に入ると両親に告げたとき、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を渡された。後々実は自衛隊に行かせたくなかったらしいことを聞いたので、たぶん親なりに戦争に巻き込まれるかもしれない息子に対して、命令があれば何でもやらなければいけないという軍隊の残酷さ、不条理さを教えて考えを改めさせたかったのかなと思ったが、自分は特に愛国心だとか使命感だとかそういうのは無く、社会復帰のつもりだったのでそのときはあまり効果はなかった。生きていればそのときの話もいずれするときが来るだろう。

 

アカデミー賞にノミネートされていたので見てみた作品・その2。原作や1930年版は未見。戦争映画というのは、戦争をリアルに描こうとすればするほど勝手に反戦になってしまうものだと思っている。『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』を見て自分も戦場に行きたいと思うヤツの気が知れない。『西部戦線異状なし』は実際に第一次世界大戦に従軍した作者の経験が投影されている原作らしく、映画もまた『戦争したい』とは口が裂けても言えないような、戦争の狂気に人間が飲まれていく様をリアリティと皮肉たっぷりに描かれている作品であった。

 

1914年に始まった第一次世界大戦から3年後の1917年。今日も前線では死者が続出し、死体は埋葬され、着ていた軍服は剥ぎ取られて洗濯・修繕されて次の新兵に配られていた。17歳のパウルは学友と共にドイツ帝国陸軍に入隊する。訓練を終えて西部戦線に配属された彼らだが、愛国心とそれに伴う高揚感は最前線の凄惨な現実によって一日で崩壊してしまう。それから一年後、かろうじて生き残っていたパウルは前線の仲間たちと刹那の休暇を過ごしていた。だが時を同じくして、ドイツ帝国と連合国との休戦協議が始まろうとしていた。

 

アカデミー賞作品賞にノミネートされているが、これが初めて観た戦争映画ならともかく、この作品自体にそれほど目新しさは感じなかった。2020年にノミネートされていた『1917 命をかけた伝令』も同じく第一次世界大戦が舞台で、そちらはイギリス陸軍側の話だったのだが、非常にライド感の強い作品で、ワンカット風映像のもたらす没入感はふと戦場に迷い込んでしまい主人公の後をついていっているような臨場感があった。

 

西部戦線異状なし』はその分基本に忠実な、戦争の不条理・理不尽・虚無感をこれでもかと味わえる作品であることは確か。冒頭の戦死者の軍服が後方に戻ってきて新兵に渡されるところに始まり、前線のパウルたちと、後方の司令部、そのさらに後ろの休戦協議の場とそれぞれ描写することによって、大きな流れに巻き込まれて逆らえない一兵卒の切なさを増幅させる。『高地戦』のときもそうだったけど、これから停戦するぞというところで司令部から戦闘命令が下るのって本当に……やるせない。いつだって戦いを声高に叫ぶのは、自分が前線に行かないヤツだと相場が決まっているのだ。