四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『BLUE GIANT』鑑賞。

ジャズに興味がないわけではないけど、でもよく分からないし……。結構、じゃあ身体で分からせてあげますよ。まるでそう言われたかのように、音楽というエネルギーを全身に浴びせられる体験……先日見た『BLUE GIANT』はまさにそんな映画だった。

 

ジャズの魅力に取りつかれた宮本大(みやもとだい)は、三年間雨の日も雪の日も河原でテナーサックスの練習に明け暮れていたが、世界一のジャズプレイヤーになるという夢を抱いて高校卒業と共に上京、高校の知り合いであった玉田俊二の住むアパートに転がり込む。大はふと訪れたジャズバーで性格に難があるが腕は確かなピアニスト・沢辺雪祈(さわべゆきのり)と出会いバンドを組もうと誘う。同居人の玉田は大学生活の理想と現実に悩んでいたが、ひたすら練習に打ち込む大の姿を見て熱いものを感じドラムを始める。最初は難色を示していた雪祈だったが認められるために必死に練習に打ち込む玉田の姿を見て考えを改め、ついにトリオバンド『JASS』を結成。日本最高のジャズクラブ『So Blue』に十代のうちに立つことを目標に活動を始めるのだった。

 

とにかく暑苦しい! 男臭い! そしてカッコいい! 久しぶりに夢中になれる映画に出会った気がする。美少女ものばかりじゃなくて、こういう作品も大好きなのだ。

 

BLUE GIANT』はビッグコミックで連載されていた(現在は続編を連載中)同名の漫画を原作としたアニメ映画で、当然ながら尺の関係で全てを映像化しているわけではないようだ。原作では大の地元である仙台の話があるらしいのだが、映画では上京するところから始まる。大が片思いしていた女の子とのエピソードも映画では割愛されており、それが余計男くささに拍車をかけている。

 

ジャズを通して描かれる男たちの夢、野心、情熱はとてつもなくエネルギッシュで、大の奏でるサックスが立ちふさがる壁をことごとく打ち破っていくのには登場人物でなくとも惹きつけられる。それは愚直とも言えるほどのひたむきさによって作られた、努力の結晶にほかならないからだ。熱くなれるものを求めて音楽の世界に足を踏み入れた素人の玉田が、初ライブの失敗からどんどん成長し客の一人からその努力を認められるシーンも涙なしには見られない。一見捻くれた口の悪い男である雪祈も、馴れ合いのバンドではなくより高みを目指そうというヒリついた空気の醸成に一役買っている。そして逆境の中始まる『So Blue』ライブでは作品の盛り上がりもピークに達し、赤色巨星よりも高温の青色巨星(ブルージャイアント)をまさに目の当たりにする。とにかく作品全体から熱気が伝わってくるようだった。

 

非常に満足のいく内容であったのだが一応誰の目にも明らかな欠点があり、演奏中は3DCGが使われるのだがこの出来が正直あまりよろしくない。誰かがバーチャファイターとか鉄拳とか言ってたのを知ったときはちょっと笑ってしまった。いまどきこれはないだろう……。音楽に浸りたいだけなら目を瞑っていればいいのだが、演奏の熱気と情熱を十二分に表現された作画とショボい3DCGが頻繁に入れ替わるのでそういうわけにもいかないのが辛いところではある。一応、音楽が最高にご機嫌なのでCGは気にならなかったという人もいるらしいから、自分がそうであることを祈るしかない。

 

ただこの作品は映画館で見てナンボだと思うので、見るならいまのうちだと言っておきたい。