今期のアニメをなるべく沢山見てみる1・なろう編（2023年冬）

去年の暮れから出ていた来期放送アニメのリストを見ていて思った。見たいアニメが全然ないな……それにしてもなろう系多すぎないか？　なろうだと勝手に思いこんでいる作品も多少あるが、少なくともそう見える作品の数は多い。

普段なろう系は0話切りしている。十中八九合わないのが分かっているからだ。その理由は明白で、既に一度通り過ぎた場所だからにほかならない。四十歳にもなると、過去にそういう妄想をした経験は一度や二度では済まないので、古傷をえぐられるような感じで見てて居た堪れないのだ。できれば今更そういうのは直視したくない。

だが2023年の冬アニメは個人的に見るものがなさ過ぎるので、逆にひととおり見てみるいい機会だと思い、普段は見ないなろう系にも敢えて突撃してみようと思い立った。それがどのような結果を生むのか、神のみぞ知る。ルールは以下の通り。

・異世界召喚、異世界転生、悪役令嬢、追放系をなろう枠として扱う。

・2023年1月に始まった作品が対象。

・シリーズもので前期を履修していないものは見ない。

・dアニメストア・Amazon prime video・Netflixで配信されているものに限る。

・容赦なくネタバレする。

異世界のんびり農家

闘病生活の果てに39歳で命を落とした主人公・街尾火楽（ヒラク）は、死後の世界で神と出会い若返った肉体で異世界に転生する。ヒラクは神から授かった病気にならない身体、そして生前見ていたTVの影響で農業をしたいという願いから万能農具を最初から持っていた。人っ子一人いない森の中で、色々と変化する万能農具の性能を確かめながら、開墾、野生動物との戦い、家の建築をし獣を手なづけたりしながらサバイバル生活をこなし、徐々に生活基盤が安定していく……という第一話。

同じ農家のよしみで見始めたのだが、のんびり……全然のんびりしてないな！　と突っ込まずにはいられないような一話だった。休みなしで働いても倒れない底なしに頑丈な身体、種が無くても耕したところから勝手に芽が出てくる農具など、羨ましいことこの上ないが、あまり共感はできない。ただひたすら世界の法則を検証したり、生活基盤を整えたりする手堅い一話ではあったが、全然先の展開が気にならないので一話切り。

英雄王、武を極めるため転生す ～そして、世界最強の見習い騎士♀～

多くの魔物や邪神を倒し、一代にして国を築いた英雄王が今際の際に願ったのは「ずっと武芸を磨いていたらどれくらいまで到達できただろうか」ということであった。女神はその願いを聞き届け、老いた英雄王を未来の世界に転生させる。しかしその英雄王が転生したのはなんと女の赤ん坊。転生後はイングリスという名前で生活し、幼馴染のラフィニアと共に成長。イングリスはエーテル（魔法みたいなもの）で魔物を倒したり、ラフィニアの兄で将来の聖騎士候補でもあるラファエルを倒した相手を剣術で圧倒したり、幼い頃から非凡な才能を見せる……という第一話。

Aパートまでおじいちゃん声（麦人氏）だったのに、Bパートになったら急に鬼頭明里になるものだから、その温度差で風邪をひきそうになった。このまま五歳の身体で強くなったら面白いけど、なんかすぐ成長してしまうっぽい。一昔前に量産されたラノベアニメ感のあるビジュアルはちょっと食傷気味なので一話切り。

解雇された暗黒兵士（30代）のスローなセカンドライフ

魔族の四天王補佐として働いていたダリエルは、魔族なのに魔法が使えないことを理由に解雇されてしまう。放り出されて露頭に迷っていたところ、人間族のマリーカがモンスターに襲われていたのを助けたことで、人間族の村に身を寄せることになる。そこでダリエルは人間族が持つオーラの扱いに類稀なる才能を持つことが分かり、冒険者として生計を立てていくことになった……という第一話。

主人公の声優が杉田智和なので、なんかぼやいているだけでちょっと面白く感じるのがズルい。話的にも元々所属していた場所では評価されない才能を実は持っていたというよくある追放系に見えるし、作画的にもそれほど見どころは無かった。人間の扱えるオーラにはスラッシュ、スティング、ヒット、ガードという四つのタイプがあって、アニメではレーダーチャートで適正が表現されていたのだが、HUNTER×HUNTERの念能力をひしひしと感じたのはこちらの気のせいだろうか……。残念ながら一話切り。

最強陰陽師の異世界転生記

天才陰陽師であった玖峨晴嘉（くがはるよし）は、その強すぎる才能を危険視されて謀殺されてしまうが、死の間際転生の秘術を使って異世界に転生することに成功した。かくして貴族であるランプローグ家の子供・セイカとして転生したが、次こそは狡猾に立ち回り、幸せを手に入れようと誓う。魔法が当たり前の世界で魔法の力を持たないセイカは落ちこぼれとして扱われていたが、前世の記憶と呪力を引き継いでいた。ランプローグ家の奴隷だった精霊を使う力を持つイーファと仲良くなり、魔法よりも強力な陰陽術を使って立ち回る……という第一話。

主人公は異世界で自分一人しか使えない陰陽の技を使うのだが、結局陰陽術と魔法って、そんな違わなくない？　ちょっと変わった召喚術くらいな感じ。主人公だけレアな属性持ちだった、という設定でもそれほど変わらなさそう。他の作品と差別化を図ろうとしつつも、結局大して違いは感じない。一話切り。

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

王太子であるジークヴァルトの婚約者リーゼロッテは文武両道の美少女であったが、気持ちを素直に伝えられない欠点があった。庶民出のフィーネがジークヴァルトと仲良くしているのを見ると、ついツンツンした態度を取ってしまわずにはいられない。それがやがて破滅の運命に向かうことも知らずに……。そしてそれを遠巻きに眺める二人の姿があった。リーゼロッテの登場するゲーム『まじこい』をプレイする遠藤くんと小林さんである。ある日二人がゲームを実況解説していると、二人の声がジークヴァルトに神託の形で届き、展開を変えられるかもしれないと思うようになる。かくしてリーゼロッテのバッドエンド回避のためのゲーム実況解説が始まる……という第一話。

乙女ゲームの悪役令嬢と、ゲーム実況解説を合体させるといういまどきの流行り欲張りセットな作品。どんなルートを辿っても破滅してしまう（しかも破滅の仕方がエグい）リーゼロッテがあまりにも可哀想なので、ちょっとくらい助け舟を出してもいいじゃないと感じる程度の塩梅が良い。ゲームでリーゼロッテとジークヴァルトの仲を取り持ちつつ、遠藤くんと小林さんも段々いい感じになっていくんだろうなと予想はつきつつも、ちょっぴり先は気になるかもしれない。評価は保留。

転生王女と天才令嬢の魔法革命

魔法が当たり前の世界に王女として転生したアニスフィアは、魔法が使えないせいで王位継承権が剥奪されているのだが、魔法使いに憧れ日夜怪しげな研究に没頭している破天荒な存在として認知されていた。しかしその弟であるアルガルド王子が、謂れなき風評によって天才魔法使いである公爵令嬢ユフィリアとの婚約を破棄してしまう。しかしそこにお手製の箒に乗って現れたアニスフィアが、呆然自失のユフィリアを連れ去ってしまう……という第一話。

主人公には前世の記憶が残っているらしいのだが、一話の時点ではその影響は限りなく少なく、いかにもななろう臭がほとんどしないので真っ当なガールミーツガールものとして見られる。王子側にも多分事情があるのかもしれないが、ユフィリアに対する当たりのキツさには同情できず、おかげで全てをぶち壊しにするアニスフィアの存在にカタルシスを覚える。ディオメディア制作のわりには作画が良くキャラデザもそつが無くて可愛い。今のところ視聴継続の可能性は高い。

とんでもスキルで異世界放浪メシ

ある日突然勇者の異世界召喚に巻き込まれ、一緒に召喚されてしまう主人公・ムコーダ。彼の所持していたスキルは”ネットスーパー”という一見して意味不明なもので、王様に手切れ金を渡され放逐されてしまう。だがそのスキルは現世からネットショッピングで物を取り寄せられるというとんでもスキルだった。召喚された国から離れ新天地を目指すムコーダは、ギルドで冒険者を雇って一緒に旅をする。ネットスーパーで取り寄せた商品を使って作った料理は評判が良く、冒険者たちから称賛されるがそれが伝説の魔獣を呼び寄せてしまう。料理で満足させた結果、伝説の魔獣と契約することになってしまった……という第一話。

空中に開くステータス、都合良く現世と繋がっているスキルと正直なところ好きじゃない要素が山盛りだが、この作品のウリは企業の協力を得て現実の商品をそのまま出しているところだろう。食事の描写は確かに美味しそうなので、一番重要な要素は表現できている。それを生かして世渡りしていくのがこの先の展開なのだろう。評価は保留。

人間不信の冒険者たちが世界を救うようです

冒険者のニックは突然所属していたパーティ『武芸百般』から追い出されてしまい、恋人からも別れを告げられる。人間不信に陥ったニックはアイドルの応援にハマりながら、立ち寄った酒場で同じような境遇の冒険者たちと同席する。かたや婚約者に裏切られ、学校を追い出され、家族にも見捨てられた魔術師。かたや懇意にしていた少女によって陥れられ投獄、女遊びを覚えた元神官。そして過去を語りたがらない女戦士。酔いつぶれた彼らは翌日なし崩しに解散しそうになるが、ニックはこのままでは生活もままならないとこの四人でパーティを組むことを提案する……という第一話。

清川元夢さん！？　亡くなったはずでは……とまずナレーションに驚いた。一話にして追放系のお辛い身の上話の三連続で若干気が滅入るが、そういう冴えない連中がパーティを組んで立ち向かおうという、負け犬たちのワンスモアな話の方向性は悪くない。ヒロイン（多分）の魔術師が四白眼というニッチな属性なのも個人的には加点要素。評価は保留。

冰剣の魔術師が世界を統べる

『冰剣の魔術師』の称号を受け継いだ、かつて極東戦役を終結させたほどの魔術師・レイ=ホワイトは、深い心の傷を負ったことによって三年の間歴史の表舞台から姿を消していた。だがその後世界中からエリート魔術師の集まるアーノルド魔術学院へと入学しする。学院始まって以来初めてのオーディナリー（一般家庭）出身であるレイは、貴族主義社会の洗礼を浴びながらも理解者たちに出会い、大きな力を隠して学園生活を謳歌していく……といった感じの第一話。

能ある鷹は爪を隠す、本当は凄い実力を持っているけど今は隠している系の作品。モブ学生たちには差別されながらも、有力者はだいたい分け隔てなく接してくれるという、向かい風が吹いているようでそうでもない感じの設定。主人公の物腰が丁寧に見えて若干嫌味にも感じてしまう。榎木淳弥ってこんな下手だったっけ。作画的にかなり冴えてない部類で続きが見たいとも思わないが、ネタアニメ好きには愛されそうな雰囲気はある。

便利屋斉藤さん、異世界へ行く

異世界に召喚されたサイトウは、現世では便利屋として鍵開けや道具の修理などを行っていたが誰にも感謝されなかった。しかし異世界ではそれらのスキルを生かすことによってパーティではなくてはならない存在となり、女戦士のラエルザや魔法使いのモーロック、妖精のラファンパンと共に充実した冒険の日々を送っていた……という第一話。

現世で評価されなかった人間が、異世界では能力を生かして評価される定番の展開だが、なろう系としては非常にクラシックなタイプのファンタジー異世界……WizardryやD＆Dみたいな感じで、奇を衒ったところがあまりないのでまあまあ見やすい。いきなり世界観の説明を兼ねたオムニバス形式で話が進むが、調べたところこれは最初のうちだけらしい。でも正直話としては一話で綺麗にオチてるような感じがする。

齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定

山奥で5000年もの間静かに暮らしていた大人しいドラゴンが、いつの間にか周囲の人間から邪竜だと誤解され、生贄として人間の娘を捧げられてしまう。娘のレーコを村に送り返そうと説得を試みるが、そのときに「魂を喰らった」と言ってしまったことで、レーコは自分が邪竜の眷属になったと誤解する。色々あって村へ行きレーコを返そうとするドラゴンだが、そのとき村を襲ったモンスターをドラゴンの眷属になったと思い込んだレーコの強力な一撃が蹴散らす。かくして誤解したままの、ドラゴンとレーコの魔王討伐の旅が始まった……という第一話。

いわゆる『カメレオン』とか『エンジェル伝説』とか『エリートヤンキー三郎』とか『デトロイトメタルシティ』のような勘違い系コメディなんだと思う。ドラゴン自体は静かに暮らしたいが、レーコの暴走で色々と勘違いされてしまうという。日本では打ち切りになったが、中国で人気になりアニメ化されたものが逆輸入されたという不思議な経緯の作品。一話12分と見やすい作品ではある。大塚芳忠さんがドラゴンの声を担当しており、そういう点では惹かれるものがある。評価は保留。

老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

18歳にして両親と兄を喪い天涯孤独の身になった少女ミツハ。ある事情で崖から落ち、絶体絶命かと思われたそのとき異世界に飛ばされてしまう。異世界で行き倒れていたところをコレットという少女に助けられ、言葉が通じないながらもなんとかコミュニケーションを取ろうと努力していた矢先、獣に襲われ再度絶体絶命の危機を迎える。だがそのとき身体は元の世界へ転移しており、そこで道具を集めて獣を撃退しようと思いつく。ミツハは異世界に戻り獣を撃退すると、そこに謎の生命体が現れ世界を行き来する能力を与えられたことを知り、言語を理解する能力も与えられる。ミツハはその能力を使って老後まで安定した生活を送るのに必要な金額、二十億円を手に入れるという野望を抱くのだった……という第一話。

まず、行ったり来たり自由か～都合いいな～というのが正直な感想。なんだか節操のない、脈絡のないパロディが頻出するのだがあまり笑えない。序盤の言葉が通じない中で、なんとかコミュニケーション取ろうと試みるところが個人的には一番面白かったのだが、なあなあで終わってしまって残念な限り。あの話の流れ自体がいらなくない？　残念ながら一話切り。

結果

・視聴継続の意思あり

転生王女

・評価保留

ツンデレ悪役令嬢

異世界放浪メシ

人間不信

草食ドラゴン

・一話切り

それ以外

今期の新規なろう系アニメは以上の12作品。いざ見てみるとそれなりに見れるものもなくはなかったが、苦痛なレベルの作品も……二つぐらいあった。自分は倍速視聴するくらいならそもそも見ない人間なので、ちゃんと全て等速視聴した。時間が掛かりすぎるので、この企画は二度とやらないだろうな……。