四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記20『夜明けの目覚め(前編)』

 

モーサルにおける吸血鬼事件を解決し報酬を受け取ると、俺はようやく山を越えてホワイトランへと戻ってきた。早速ドラゴンズリーチにいる執政のプロベンタスに家を購入することを告げ、5000ゴールド一括耳を揃えて支払う。家財道具は別売りらしいのだが、今はそれどころではない。自分のものになった家を、すぐにでも見に行きたい!

 

 

プロベンタスから購入したのは、ホワイトランの要塞入り口近くにあるブリーズホームと呼ばれる家だった。貰った鍵で扉を開け、家の中に入る。……そこはとてつもなく寂寥感に溢れた空間であった。木箱が幾つか転がっているだけの物置のような場所というのが最初の感想だ。光源がひとつもない暗闇で隙間風がひどく、二階にはベッドとチェストが一つづつあるだけ。こんなんじゃダメだ!

 

 

俺はプロベンタスのところに引き返し、家財道具一式とついでに改築を頼んだ。費用はおよそ2000ゴールドほどだったが、モーサルでの稼ぎがあって助かった。プロベンタスは大急ぎで用意してくれるということだったので、少し時間を潰してから家に戻ってみると、なんということでしょう!

 

壁の隙間は綺麗に塞がれ、何を置くにも困らない収納と調度品の数々、ぱちぱちと燃える明るい暖炉、綺麗な寝具に錬金器具。これだ! 俺の待ち望んでいた我が家のあるべき姿は! これで伴侶が家で待っていてくれたらもはや何も言うことがないのだが、生憎今は従者のリディアがいるだけだ。

 

 

自宅に腰を落ち着けて、まずやったことと言えば本の整理だった。ドサドサドサドサ!旅先で集めた本の数々を床に下ろし、一気に身体が軽くなった。スカイリムに来てからというもの、見たことのない本を見つけてはいつかは読もうと持ち歩いていたのだが、さすがに限界だった。

 

本棚に一冊ずつ入れていき、並んでいる本を見ると結構な満足感がある。そしてチェストにすぐには使わない武器や防具、棚の中には鉱石やインゴットなどを入れていった。このために家を買ったと言っても過言ではない。

 

 

話はかなり前まで遡る。このホワイトランで従士として認められた頃のことだ。鍛冶屋”戦乙女の炉”の女職人エイドリアンは執政であるプロベンタスの娘である。そのせいか彼女は自慢話が多く少々煙たい存在であったのだが、店の前を通りかかったときに話しかけられ、いつも通りの自慢話が始まるのかとおもいきや、どうやら鍛冶場の設備一式の使い方を手ほどきしてくれるという。今思えばどういう風の吹き回しだったのだろう。

 

 

鉱石をインゴットに精製したり、動物の革をなめして使えるようにしたり、素材から武器と防具を鋳造したり、出来上がった武器防具をさらに研ぎ澄ませたり改良したり、鍛冶場では色々なことができた。彼女はその手始めとして、鉄のインゴットからダガーの作り方を教えてくれたので、俺も実際に作ってみることにした。

 

完成した鉄のダガーの出来は酷いものだったが、先端が尖ってさえいれば刃物として使えなくもないと開き直るしかない。彼女は苦笑しながら砥石でダガーを研ぐと、さっきよりも”優良な”ダガーが出来上がる。やる前は難しそうだったが、実際やってみると案外簡単そうに見えた。

 

ふとそのときのことを思い出す。鍛冶場が家の隣にあるのだから、今度から自分でも鉱石を集めて武器防具を拵えてみるのも悪くないだろう。初心者のうちは大したものもできそうにないが、ずっと続けていたらもしかしたらドラゴンの骨や鱗すら武器防具にできてしまうかもしれない。そう考えると少し楽しくなった。

 

 

そして家に錬金器具があるので錬金術にも手を付け始めた。傷を癒やす薬とマジカを回復させる薬の数が少なくなってきていたのと、これらを錬金屋からいちいち買い足しているとあっという間に破産してしまいかねないことに気付いたからだ。それなら旅の途中で拾い集めた素材を使い、自分で作ったほうが金がかからないし、その過程で出来た薬は売ってしまえばお金になる。損することはひとつもないのだ。

 

 

ホワイトランの錬金屋、”アルカディアの大釜”の女主人から薬のレシピを買い、その通りに作ってみるのだがやはり素人の腕ではできる薬も大したものではない。素材を口に入れてみればその素材の持つ効能が少し分かるという助言を貰い、試しに口に運んで見ると、確かにわずかだが身体に効果が現れる。そうしてつい調子に乗って手持ちの素材を次々に口に入れてみると、その効果が一気に現れて凄まじい苦しみに襲われ、正直死んでしまうかと思った。視界が一瞬緑色に染まったのは忘れられない記憶になるだろう。

 

 

そしてドラゴンズリーチの王宮魔術師ファレンガーの部屋にアルケイン付呪機が置いてあるため、付呪の練習のために出入りしている。付呪には魂石(ソウルジェム)に倒した敵の魂を入れる必要があるのでなかなか手を出せずにいたが、旅の途中で手に入れた魂入りの魂石が幾つかあったこともあり試しにやってみることにした。

 

付呪を行うには既に付呪が施されている武器防具を自ら解呪して、そこに宿っている魔法を学ぶ必要がある。既にいくつか不要な装備品を分解してある程度付呪できる魔法を学んでいたのだが、付呪のコツを掴むためにはより多くの装備品と魂石が必要になるのでもっと準備が必要なようだ。

 

そしてファレンガーによって、破壊魔法の使い手として精鋭の魔術師と認められるほどの練度になっていることが分かったのだ。それに伴って火炎球(エクスプロージョン)などの上級破壊魔法の使用が許可されることになった。だがあまりにもマジカの消耗が激しく、そう安々とは使いこなすことはできないだろう。魔法の道はまだ入り口にすぎない。

 

 

もちろんその合間にも腕が鈍らないように冒険も欠かさなかった。ホワイトランからほど遠くないところにあった”ホルテッド・ストリームの野営地”では巣食っていた山賊たちを一掃した。だがそこの鉱山では何気なく見た机の上に”鉱石変化”の呪文書が置かれていたのだ。これには鉄を銀に、銀を金に変えるというとんでもない魔法が記されていた。こんな大変なもの、誰にも知られないようにしなければ……。

 

 

そして同じくホワイトランの近くの”ホワイト川の監視所”にも山賊退治に向かった。洞窟の中は山の中腹に向かって登っていく構造になっていて多少面倒だったが、その頂ではホワイトランを一望できる絶景と、山賊の親玉であったハジバール・アイアン・ハンドという男が待っていた。名前は死体から見つけた日記に記されていたので分かった。両手用の武器を使うのに最適な篭手を持っていたので、リディアにプレゼントするととても喜んでいた。

 

 

そんな日々を送っていたときに、異変は訪れた。夜になると血が煮えたぎり、他人の血を欲する衝動に襲われるようになってしまったのだ。今はかろうじて抑え込めているが本格的に人を襲ってしまうようになるのも時間の問題であろう。

 

そして陽の下では力が衰え、自然に傷やマジカが回復することもなくなってしまった。この症状は以前から……モーサルで吸血鬼退治をした後から兆候が出始めたのだが、大したことはないと思ってずっと見過ごしていたのだ。俺は……なりたくない、吸血鬼なんかに……。

 

 

【続く】