四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記28『愛の書』

 

用の済んだネトルベインを自宅のチェストに放り込んだ。本当は捨ててしまいほど忌まわしい武器なのだが、誰かに悪用されてしまうわけにもいかないので自分で保管するしかない。身軽になったので俺はまたリフテンに行くことにした。防具を作るためにホワイトランにとんぼ返りしたせいで、やり残したことがまだまだあるのだ。

 

その道中にドラゴンと遭遇したのだが、鎧が炎の吐息のほとんどを防いでくれる。さすがに顔だけは露出しているので少し焼けてしまったが、ここまでの防御力を誇るとは想像以上であった。

 

 

一度往復すると遠かったはずのリフテンもそれほどの道のりとは感じなくなっていた。首長の住居であるミストヴェイル砦を訪れ、首長のライラ・ロ・ギバーにも挨拶を済ませた。街の住人にはブラックブライア家より権力が無いだの、汚職が蔓延っているだの散々な言われようだったが、実際に意外と話せる相手という印象だ。宮廷魔術師のウィランドリアは早口で訳の分からないことをまくし立てる女で、ちょっと苦手なタイプであった。

 

 

その後、鍛冶屋・灼熱の戦鎚を覗くと珍しいものが入荷されていた。バニッシュの付呪を持つ武器だ。バニッシュとはこちらの世界に召喚されたデイドラをオブリビオンに追い返すための魔法なのだが、そういう機会が滅多にないことを考えれば利用価値は低い……と思うのだが、使える者が非常に限られているおかげで高値で取引されているのだ。

 

事実、今目の前にあるこの武器も原価を考えればかなり法外な値段と言ってもいいだう。しかし今の俺の手持ちなら買うのは容易い。分解して付呪を覚えれば、後はいくらでも量産できる。支払ったゴールドもすぐに取り戻せるはずだ。俺は迷わず購入することにした。

 

 

思わぬ掘り出し物を手に入れ上機嫌で街を歩いていると、治安の悪いリフテンにもっともふさわしくないであろう施設が目についた。愛を司るとされている神、マーラの聖堂だ。以前街道を歩いていると、結婚をするためにリフテンにあるマーラの聖堂を目指しているという旅人とすれ違ったことがあるのだが、それがここだったのだ。

 

そういえば以前ドーンスターで共に戦ったエランドゥルは、ヴァーミルナからマーラに改宗したと言っていたことを思い出し、ふと興味が湧いて聖堂を訪ねてみることにした。

 

 

婚姻の儀式が行われる場所だけあって、中は整然としており清潔そのもの。少なくとも今まで訪れた場所の中では一番と言っていいだろう。ここの司祭マラマルの説明で初めて儀式のやり方を知ったのだが、マーラのアミュレットを身につけて絆の深まった相手に対して結婚を申し込むことで初めて成立する。

 

そして儀式を行うことができるのは、スカイリムでは唯一ここだけである。だが生憎今はその相手がいない。いずれそれに値する相手が現れることがあるのだろうか。

 

 

マラマルの妻であるディンヤ・バリュは冒険者である俺に頼みがあると話しかけてきた。マーラに仕える身としてお告げを受けたのだが、その内容はスカイリムにいる男女の仲を成就させよというなんとも聞いていて恥ずかしくなるものである。さすればマーラの使徒として祝福を受けるであろう……とのことだが、ディンヤ・バリュはリフテンを離れることができないため、冒険者を探していたのだ。いまだかつてない難しい依頼である。

 

マーラの使徒になるつもりはないのだが、あのお堅いエランドゥルもかつてはこんな慈善活動をしていたのかと想像したらすこし可笑しくなり、自分もそれを追体験してみたくなった。商売で鍛えた俺の今の話術ならそう難しい話でもないはず。そう思って、彼女の依頼を受けることにした。

 

最初のお告げは、イヴァルステッドに住むファストレッドという女性がマーラの助けを求めているという。イヴァルステッドならリフテンからはそう遠くない。早いこと終わらせよう。

 

 

ファストレッドはイヴァルステッドの農場の娘であった。マーラに祈った際、見知らぬ誰かが訪ねてきて手を貸してくれる……そんな啓示を夢の中で受けたらしい。その見知らぬ誰かとは紛れもなく俺のことだった。

 

話を聞いてみるとこうだ、彼女はこの村に住むバシアヌスという男と恋仲らしいのだが、親に邪魔されていて結婚できずにいる。そこでの俺のやるべきこととはつまり親の説得だ。マーラも面倒な仕事を寄越してくれたものだな!

 

 

あまり気は進まなかったが、ファストレッドの父親であるジョフサーにバシアヌスの件を尋ねた。ジョフサーは結婚することでイヴァルステッドを出ていき、都会であるリフテンに行ってしまうことが一番の気がかりであるようだ。そして肝心のバシアヌスのことも頼りない男だと思っている。彼を説得するのはかなり難しいだろう。

 

 

同じことを母親のボディにも訪ねると、バシアヌスには不満はなく、娘が幸せならイヴァルステッドを離れることになっても構わないと、ジョフサーに聞こえないように小声で言った。二人がこっそり村を出るなら、ジョフサーのことは私がなんとかする……彼女は何かを決意した様子だ。これなら後はバシアヌスの背中を押せばいいだけの話ではないのか? 俺は村の中を歩き回ってバシアヌスを探した。

 

 

宿屋にいたバシアヌスを見つけたのだが、どうも彼は仕事もせず昼間から酒場に入り浸っているような男だった。このことを彼に伝えることが本当に正しいことなのか? 俺は迷ったのだが、結局ボディの件を彼に話すことにした。

 

彼はジョフサーの存在を恐れていて、彼女に自分の気持を伝えることができずにいた。しかし母親がそれを食い止めてくれるということを知り、彼は意を決したように宿を飛び出し農場へ向かって駆けていった。

 

追いかけていった先には、農場で話しているファストレッドとバシアヌスの姿があった。きっと早晩二人はリフテンに向かうのだろう。それが幸せになれるかどうかはともかくとして。俺にできることはもうなさそうだ。次なるマーラに助けを呼ぶ者を求めて、ディンヤ・バリュの元へと戻ることにした。

 

 

【続く】