四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記17『埋葬(前編)』

 

ソリチュードからホワイトランへ行くには、スカイリムの中央山脈を越えるのが一番手っ取り早い。それは以前マスカルスからロリクステッド、ホワイトランへと行った道に比べるとだいぶ険しく、道なき道を進むことになる。

 

モーサルという街の横を通る街道でステンダールの番人と名乗る連中と遭遇した。彼らはデイドラや吸血鬼を狩ることを生業にしており、最近デイドラの力を借りている身としては多少気まずい思いはあったが、この辺りには吸血鬼が潜伏しており今探しているところだという。もうすぐ日が沈む。山越えしている最中に吸血鬼に襲われるなどということは避けたかったので、今日のところはモーサルに宿を取ることに決めた。

 

 

モーサルは湿地帯に面したジメジメとした陰気な街だった。近くの砦を死霊術師たちが占拠しており、お世辞にも治安が良いとは言えない。首長の屋敷の前にはちょうど住人たちが集まっていて、この街で起こっている事案の数々に首長が何の対策も取らないことへの不満を顕にしていた。

 

それに加えて今はストームクロークの反乱にドラゴンの出現と、住民たちの不安ももっともである。やがて代表者が首長に嘆願することが許されると、住民たちの溜飲が下がったのか集会は自然と解散していった。

 

衛兵はそれを見ていた俺のことを旅人だと一目で見抜いた。首長がモーサルで起こった事件を解決できる者を探しており、それには何のしがらみのない旅人こそが相応しいという。俺は気が向いたらと答え、一旦その場をやり過ごした。

 

 

宿で一夜を明かし、翌朝俺は首長の屋敷を訪ねることにした。この街の首長のイドグロッドという女性は、先見の明……つまり未来を予知する能力を持っているという。そのせいか俺がここを訪ねてきたことにもさほど驚いていないようだった。

 

モーサルではつい最近火事があったばかりで、その家に住んでいた夫であるフロガーが生き残り、妻と娘は火によって亡くなったのだが、フロガーはすぐにアルバという女と暮らし始めた。状況証拠から言ってフロガーはあまりにも怪しく、なぜフロガーを処分しないのかということで住人の不満が募っているのだ。

 

 

だがイドグロッドは噂やデマを根拠にフロガーを捕まえることはできないと、住民たちの要求を取り合わなかった。だからその真相を俺に探ってほしいというのだ。余所者の俺にどこまでできるかは分からないが、やってみようとその依頼を承諾する。早く家を買いたいのはやまやまなのだが、謝礼を弾むと言われては断れない。蓄えはいくらあっても困らないのだ。

 

 

俺は火事の現場に向かう途中、魔術師のファリオンという男と出会った。あまりにも怪しい佇まいなので住民から不審に思われているのだが、イドグロッドはそれを特に問題にはしていなかった。それが余計にモーサルの住民から反発されて村八分になっているらしい。宿屋の女主人と姉弟だという話を聞いたときは大層驚いた。今は戦災孤児を引き取って育てているそうだ。彼は元々ウィンターホールド大学で学んでいたらしく、少しだけ親近感が湧いた。

 

 

焼け落ちた家にはもはや何の証拠も残っていないように見えたが、ふと声が聞こえた。集中してあたりを見回してみると、そこにいたのは小さな少女の亡霊だった。恐る恐る名前を尋ねてみると、その少女はフロガーの娘ヘルギだという。

 

彼女なら何かを知っているかもしれない……そう思ったが、まだ幼いうちに死んでしまったためか俺に遊んでほしいようだった。夜にまたここで会う約束をし、その時を待つ。とりあえず真相を知るために彼女のご機嫌を取らなければ。

 

 

夜になった。焼け落ちた家の前に行くと彼女は待っていた。かくれんぼで自分を探してほしいと言って姿を消した。おいおい、まるで探すあてがないぞ? 雪の降る夜のモーサルを隅々まで探すことになった。本当にこの街の中にいるんだろうなと不安になりながらの捜索だった。

 

 

ひたすらヘルギの亡霊を探し歩いていると、焼け落ちた家の裏手に掘り起こされた棺があるのを発見した。だがそこには先客がいた。その女はこちらの姿を見るやいなや飛びかかってくる。突然のことに反撃もままならない。背後にいたリディアが斬りつけて怯んだ女の青白い顔を見てようやく理解した。

 

こいつは…吸血鬼だ! 俺はファイアボルトを何度も放った。ドラウグルや吸血鬼のようなアンデッドに炎が有効なのは子供でも知っていることだ。もがき苦しむ吸血鬼の女に何度も炎を浴びせかけ、さしもの吸血鬼も燃え尽きて黒焦げの遺体だけが残った。まさかこの街に吸血鬼が潜伏しているとは……あのステンダールの番人の言うことを思い出し、まだこの事件は終わりではないという予感がどこかにあった。

 

【続く】