四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記35『抑制』

 

スカイリムの北部は今日も雪が降りしきる。久しぶりに帰ってきたウィンターホールド大学は、普段の静謐な空気から一転して騒然とした雰囲気に包まれていた。その中心地である元素の間に入ると、アークメイジのサボス・アレンとマスターウィザードのミラベル・アーヴィンの姿があった。そしてマグナスの目があるはずのその奥は、強力な魔力の結界が行く手を阻んでいた。

 

 

アンカノがついにマグナスの目を我が物にしようと行動を起こしたのだろう。この結界はアンカノが魔力をマグナスの目に照射した余波によって引き起こされた現象のようだ。サボス・アレンとミラベル・アーヴィンが破壊魔法を結界にぶつけるがびくともしない。だがこのまま指を咥えて見ているわけにはいかない。俺の魔力もぶつけてやる!

 

 

するとどうだろう。俺の魔法がどれほど意味があったのかまでは分からないが、目の前の結界が消えていく。そこをすかさず駆け出すサボス・アレン。俺とミラベル・アーヴィンも後を追った。だがマグナスの目の間近に迫ったそのとき、アンカノはニヤリと笑い、先程より強い魔力をマグナスの目に放ったのだ。巻き起こる閃光と衝撃。俺は吹き飛ばされ意識を失った。

 

 

目が覚めたとき、俺は壁に吹き飛ばされ叩きつけられたのだと理解した。真っ白い閃光が今も瞼の裏に焼き付いているようだ。幸い怪我はなかったが、同じく吹き飛ばされていたミラベル・アーヴィンは、柱に身体をもたせかけどうにか息を整えているといった感じである。

 

マグナスの目の周囲には再び結界が張られ、より強力な魔力の奔流が渦巻きながらアンカノを守っている。俺たちより間近であの衝撃を受けたサボス・アレンはどこへ……? ミラベル・アーヴィンはまだ立ち上がれそうもないようだが、サボス・アレンの身を案じていた。今動けるのは俺しかいないようだ。彼を探さなければ……。

 

 

元素の間にサボス・アレンの姿は見えなかった。外へ出てみると広場には人だかりが出来ていた。そこにいたトルフディルが悲嘆に暮れ、今にも泣き出しそうな表情をしていた。他の講師たちも何か言いにくそうに顔を背けている。まさかとは思うが、もしかして……。

 

人を押しのけると、その輪の中に既に動かなくなったサボス・アレンが横たわっていた。マグナスの目の力で吹き飛ばされた衝撃で死んでしまったのか……? あの爆発が起こったとき、その一番近くにいたのが彼だったのだ。ミラベル・アーヴィンになんと報告すればいいのか。

 

 

だが悲しむ間もなく、ウィンターホールドの街の方が騒がしいことに気付いた。これは悲鳴だ。何かが街を襲っているのだ! 破壊魔法担当講師のファラルダと、サールザルの発掘を行っていたアー二エルと一緒に街の様子を見てくることになった。

 

だが街には見たこともない浮遊する異形の怪物たちが徘徊しているではないか。その影響で住民たちはとっくに家の中に引きこもっていたが、だからと言って放っておけばただでは済まないだろう。ウィンターホールドの街と大学の間には確執があったが、四の五の言ってはいられない。サボス・アレンを失った悲しみを振り切るように、戦いの中へと身を躍らせた。

 

 

異形の怪物たちは、マグナスの目から放たれた魔力が実体化したもののようだ。その使い手であるアンカノの影響で凶暴化しているのだ。ファラルダは達人級の魔法使いだけあって素晴らしい奮戦を見せた。炎・氷・雷の魔法をそれぞれ使いこなし、激しい光を放ちながら次々と怪物を葬っていく。アー二エルは死霊術の使い手らしいのだが今回ばかりは出番がなかったようだ。どうにかダガーで抵抗を試みている。

 

異形の怪物たちは魔力の塊でできているらしく、こちらの攻撃にもあまり手応えが感じられない。こうも乱戦になると広範囲を巻き込む強力な魔法を使うことができなかったのだが、攻撃のほとんどは鎧が受け止めてくれるので驚異には感じなかった。よって制圧するのは時間の問題だった。

 

 

激しい戦いの末怪物を一掃し、ファラルダとアー二エルはしばらく街の様子を見てから大学に戻るという。街と大学の関係もこれで少しは改善されるといいのだが。

 

俺はミラベル・アーヴィンの元へ戻り、街であったことを報告した。そして、サボス・アレンが亡くなったことも。彼女はサボス・アレンが亡くなったことは心のどこかで感じていたようで、それほど悲しんではいないように見えた。そして懐から彼から預かっていたものを渡された。サボス・アレンが使っていたアミュレットと、かつてサボス・アレンがラビリンシアンを探検した際に見つけたブレスレットだ。

 

 

ミラベル・アーヴィンは力を振り絞るようにゆっくりと立ち上がると、これからアンカノに働きかけてこの騒動を収められないか試してみるという。そしてその間に、何かがあったときのためにマグナスの杖を探しにいってほしいと頼まれた。

 

アークメイジがいなくなってしまった以上、今この大学の長はマスターウィザードのミラベル・アーヴィンだ。彼女はその責任を果たすつもりなのだ。怪我をした身体を引きずって、この場を立ち去る。その後姿を見ながら、もしかしたらもう二度とその姿を見ることはないのではないか。縁起でもないが、そんな予感がしたのだ。

 

 

くそ……俺がもう少し真面目にマグナスの杖を捜索していればこんなことにならなかったのかもしれない。そう思うと後悔してもしきれないが、今は同じ過ちを繰り返さないように俺もその責任を果たさねばならないだろう。今すぐにでもラビリンシアンに向かわなくては。

 

 

【続く】