四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

Ave Mujica 1st LIVE「Perdere Omnia」を配信で観る。

 

バンドリから生まれた9つ目のバンド・Ave Mujicaの1stLiveが1/27に横須賀芸術劇場で開催された。Ave MujicaとはTVアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』に登場したキャラの一人、豊川祥子(Key.オブリビオニス)の手によって結成されたという設定のバンドで、三角初華(Vo&Gt.ドロリス)・若葉睦(Gt.モーティス)・八幡海鈴(Ba.ティモリス)・祐天寺にゃむ(Dr.アモーリス)の五人からなる仮面のゴシック・メタルバンドである。

 

 

最初の頃はLINEで怪しい謎解きゲームなどをやっていただけだったのが去年の6月にようやく動き出し、0thLiveでは演者が誰なのかも発表されていない状態にも関わらずそれなりの人を集めていたというのだから驚きである。黒いローブを着て顔を隠すというまるで怪しい儀式か何かのようだ。1stLiveの一週間前にYoutubeで0thLiveの映像が特別公開されていたのだが、観客の方もそのときになって初めて聴く曲に困惑した様子で、むしろカバー曲の方が盛り上がっている状態だった。無理もない。というかなんでそんな状態で現地に行くんだ。

 

そんな正体不明だったバンドがアニメの第13話で遂にデビューライブの様子が描かれることになって実体を得たのである。対となるMyGO!!!!!が全てをさらけ出して迷っても前に進むというコンセプトのバンドなら、AveMujicaは仮面を被って素顔を隠し理想の世界を演じるバンドとでも言ったところか。そんな正反対の存在が今回どういったステージを見せてくれるのか。期待と不安が入り混じった状態でライブ配信を見ることになった。

 

正直言うといまのところMyGO!!!!!ほどにはAve Mujicaを熱く支持はしていない。アニメの中心人物であった豊川祥子の作ったバンドではあるものの、それぞれのメンバーの背景はほとんど分かっていない。アニメで語られることでバンドが持つストーリーというのは非常に大きなものだと『It's MyGO!!!!!』で理解した。だから今はAve Mujicaのアニメが始まるまではそれなりの距離感を保ったままになるだろう。

 

今回のライブのタイトルである「Perdere Omnia」とはラテン語で全てを破壊するという意味。ガールズバンドのライブとしてはあまりにも物騒だが、これは幕間劇の内容と繋がりがある。ライブの物販グッズとして黒いローブ(16500円)などを販売していたりするなど、もうサバトとか黒ミサとでもいったような怪しい集会の雰囲気である。ちなみにローブの通販分は速攻で売り切れた模様。いいご身分ですわね。

 

配信が始まると待機画面では不協和音のゴシック調BGMが鳴り響いていた。そして開演時間になるとアニメ13話のdebut masqueradeにおける小芝居の映像がスクリーンに流れた。捨てられた人形たちが集まるロフトムーンと呼ばれる場所。月の光によって仮初めの命を得た人形たちが復権のときを待つ。そんな感じのストーリー。

 

映像が終わるとともに始まった1曲目は当然”Ave Mujica”。幕が上がって見えた舞台装飾もアニメのそれを模したシャンデリアが天井から垂れ下がっている。アニメでフル版が流れたこともあり、Ave Mujicaの楽曲の中では唯一Elements Garden製のこの曲はキャッチーでアガリやすい。アニメ以上に客を煽るオブリビオニスの姿が印象的…というか今回のライブでは全体的にオブリビオニスのパフォーマンスが非常に目立っていた。配信で見ている分にはモーティスとティモリスはちょっと影が薄かった。あんまりカメラが映してくれなかったので。

 

2曲目は”二つの月~Deep into The Forest~”。ドロリスとモーティスが背中合わせでギターを弾くパフォーマンスをやったのはちょっと意外な感じがした。Ave Mujicaでもそういうことやるんだなと。ドロリスとティモリスの二人が並ぶと身長の差にちょっと驚いてしまう。ティモリスのほうが背が高い。三曲目はAngelaのカバー曲である”KINGS”。かなり前に放送されたKというアニメの主題歌で、0thLiveでも歌っていた曲。オブリビオニスがオルガンとキーボードの同時弾きで魅せる。

 

三曲連続でやった後にステージは暗転、会場の方もどうしたらいいのか困惑しているような様子が配信を見ていても感じられた。すると冒頭のアニメ映像で流れた芝居の続きが今度はステージ上で実演される。台詞は録音で演者の身振り手振りのみ。いわゆるプレスコというやつ。五人は人形という設定なのでそういう意味でもありえなくはない演出ではあると思う。自分を捨てた持ち主(お友達)を擁護するドロリスだがアモーリスが持ち主に愛されすぎて壊れ、箱の中に仕舞われた後は二度と取り出されなかったという話をする。オブリビオニスが新しい友だちになってあげるというがドロリスは拒絶。理想とする世界が存在しないなら壊してしまえとドロリスが他の三人から煽られる。

 

その流れで4曲目”素晴らしき世界 でも どこにもない場所”が始まる。5曲目は0thLIVEでも演奏したALI PROJECTのカバー曲”暗黒天国”。かみちゃまかりんというアニメの主題歌だ。ゴシックメタルバンドとしてはやはりアリプロが似合う。ドロリスとモーティスが向かい合いながらギターを奏でる一幕があったが、ギターの腕に覚えがある二人にはなにか通じる部分があるのか、それとも演出のひとつでしかないのか深読みせずにはいられない。6曲目は Choir ’S’ Choir。Ave Mujicaの楽曲の中では、MyGO!!!!!の影色舞にも通じるようなノリやすい曲だと思う。これがライブの真ん中に来るのはなかなかに計算されたセトリだ。モーティスがお立ち台に上がる一幕があったが、ライブ的には盛り上がるがこれが若葉睦の行動だと思うと謎が深まってしまう。

 

”Choir ’S’ Choir”が終わるとふたたび幕間劇に入る。ティモリスが破壊された世界を悼みつつも、その背徳感が癖になるという発言にドン引きするドロリス。そして破壊され静まりかえった世界を羨んで泣き始めるモーティス。仮面を被ることで自分であることを忘れ、自分さえも壊すことができるというオブリビオニス。その流れで7曲目は”Mas?uerade Rhapsody Re?uest”。8曲目はCreepu Nutsのカバー曲”堕天”。よふかしのうたというアニメの主題歌だったが、かなり重厚感の増したアレンジになっていてちょっと聴いただけだと同じ曲だと思えなかった。9曲目は”神さま、バカ”。

 

9曲目の後に最後の幕間劇。月が沈み物言わぬ人形に戻るときがやってくる。だが破壊しつくされた世界にどこまでも駆けていけそうな自由を感じるドロリス。そして仮初の命でも終幕でもなく始まりのときだとアモーリスが立ち上がり、ティモリスも新しい世界を創造すると賛同する。夜空の月でさえも自分たちが創造し、その月の光なら自分たちの命も仮初ではないというモーティス。そして月とはいえ他のものに命を委ねていた愚かさに気付くオブリビオニス。そしてドロリスが自分たちの創造した新たな時代の始まりを高らかに宣言し最後に観客?に語りかける。あなたたちは世界を壊し創造した目撃者であり共犯者であると。

 

ここから10曲目の”黒のバースデイ”に繋がる。この辺でようやくストーリーに沿ったセットリストの意味に気付く。遅すぎ。11曲目は最近リリースされたばかりの新曲”Angles”。最初は素でエンジェル??と読んだがアングル。歌詞は今回の幕間劇のストーリーの結末そのものみたいな感じで最後の締めくくりに相応しい曲になっている。スポットライトに照らされたオブリビオニスの演奏から始まり、この曲に限ってインカムではなくマイクを持ったドロリスが1番を歌い上げる。2番からは残りの三人の演奏が加わり、曲が終わるとそのまま幕が降りた。

 

Ave Mujicaの世界観を壊さないようにかMyGO!!!!!のようなMCは無し。MyGO!!!!!も最初の頃はMC無しだったそうなので、Ave Mujicaもいずれやるときが来るのかもしれない。この後スクリーンに映像が流れ、1stSingle”素晴らしき世界 でも どこにもない場所”の告知映像が流れる。デジタルシングルが5ヶ月連続リリースされることも発表され、最後に2ndLiveが6月8日に神奈川県民ホール、7月7日に愛知芸術劇場で実施されることも発表された。どちらも大ホールでキャパは2500弱と今回の横須賀芸術劇場より少し広い程度。最初はライブハウスで活動していたMyGO!!!!!と違って、Ave Mujicaは劇場でライブ活動していく方向性か。どっちのバンドも需要に対して明らかにキャパが少ないので、いずれ大きな場所でやることもあるだろうがしばらくはチケットの争奪戦がえげつないことになりそうである。

 

今回の1stLiveはアニメで省略されたデビューライブのいわば完全版とでもいうべきものであった。曲も幕間劇も、まさにその延長線上にある。MyGO!!!!!は12thでアニメの再現を行っていたが、こちらもある意味アニメをやった効果を最大限生かした内容だったといえる。演奏もガールズバンドらしからぬ重低音を響かせてカッコよかったが、それ以上に三角初華(ドロリス)を演じる佐々木李子の歌唱力が本当に物凄く、MyGO!!!!!とは別の意味でボーカルの力が際立っていた。0thLiveではRoseliaのカバーをしていたので、MyGO!!!!!はポピパ、AveMujicaはRoseliaと、それぞれ新世代でのポジションをそれとなく表現していたのかという予想は外れてしまった。これで目指している方向性が少し分かりにくくなった。

 

個人的にはやはりMyGO!!!!!最推しであるのは変わらないのだが、幕間劇で語られたストーリーは一体何を意味しているのかなどAve Mujicaで気になる点は多い。豊川祥子の境遇のメタファーなのか、それとも外向きの設定でしかないのか。今後もこの設定は生き続けるのか。Ave Mujicaの作詞作曲は初華が担当しているらしいのだが、仮面を被ったり喋る人形という世界観のプロデュースは間違いなく祥子だ。祥子が4人の人形を抱えるティザービジュアルもあって、幕間劇に祥子の内面が滲み出ていてもおかしくはない。そして0thLiveで流れていた瑠奈と莉伽の二人の話とAveMujicaの関係はあるのか。1stLive見てるとやはり祥子と初華と睦のトライアングルを中心とした物語になりそうな予感がしてきたり(これは勝手に感じてるだけだけど)、来年のアニメが待ち遠しくなってくる。全てはまだ始まったばかりだ。

 

 

セットリスト

Ave Mujica

ふたつの月 ~Deep into The Forest~

KINGS(カバー曲)

素晴らしき世界 でも どこにもない場所

暗黒天国(カバー曲)

Choir ’S' Choir

Mas?uerade Rhapsody Re?uest

堕天(カバー曲)

神さま、バカ

黒のバースデイ

Angles