四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『もういっぽん!』第216話を読んで。

週間連載漫画の感想は書き始めたらきりがないのでやめとこうと思っていたのだが、今回は気持ちの整理をせずにはいられない! モヤモヤを吐き出さずにはいられない! そう思わされるエピソードだった。それくらい今は『もういっぽん!』という作品に狂わされている。

 

 

第216話『神業』

早苗の繰り出した飛びつき腕十字は結局は不発に終わり、聖条学園中堅の樹崎優子とは引き分け。インターハイ予選団体戦決勝の勝敗は大将戦の結果に委ねられる。大将戦は園田未知と望月志穂の対戦。序盤は妹尾緑子との宿命の対決を制し勢いに乗った未知のペースで進む。だが試合中相手の指が未知の目を突いてしまうというアクシデントが発生、未知は視界を滲ませたまま試合を続行することになった。試合会場にいる実力者たちが皆未知の異変に気付く中、志穂の支え釣り込み足に見せかけた切り札・膝車が繰り出され、大将戦は未知の一本負けに終わり青葉西のインターハイ団体戦出場の夢は絶たれる。だが翌日のインターハイ予選個人戦、未知は準決勝で志穂を撃破、48kg級決勝戦へと駒を勧めるのであった。

 

まず、展開が早い! もともと飛ばすところはバッサリと行く作品だし、単行本で見ているときはこんなもんだろうで済んでいたのだが、いざ連載で追いかけるとそのスピードに振り落とされそうになる。今回の対戦相手である聖条は団体戦では四度目の対戦、志穂は未知と三度目の対戦という、ミドリコほどではないにしろ因縁と呼んでもおかしくないほどの相手だったのだが、物凄いスピードで決着がついてしまった。展開が早すぎて情緒的な部分がおざなりになっているのも残念に感じてしまう。メタ読みするなら団体戦のピークは、5VS5の総力戦である金鷲旗の方に持ってくるだろうし、その金鷲旗の後にまた団体戦やるか? と言ったら多分やらないだろうと思ってはいたので負けも十分ありえるとは思っていたのだが、実際また聖条に負けるのはショックを隠しきれなかった。

 

勝戦での未知の敗北。三年生という最後の年なんだし、これまでずっと頑張って来たんだからいい加減勝たせてやってよ! という気持ちだったので、わりと本気で今回の敗戦は悔しかったし、目突きで形勢不利になって負けるというのはあんまりと言えばあんまりな展開だと思った。あれさえなければ未知が勝っていた……そう思ってしまうのは、たぶん万全の態勢で挑んだであろう個人戦では志穂に勝っていることが一因だろう。とは言うものの考えてみれば望月志穂は直前にあった高校選手権48kg級全国三位の実力者で足技の名手でもある。初見で未知が膝車を避けられたかどうかは、万全な状態だったとしても分からない。個人戦で未知が志穂を撃破できたのも、既に一回食らっていたからというのは十分考えられる。あそこは未知の怪我よりも志穂をリスペクトするべきなんだろうなと思う。

 

二年目金鷲旗のときもここで負けるのか!? と何の因縁もないポっと出の相手に敗戦するという展開に初見では驚いたものだが、読み返すと負けてもおかしくないような条件が徐々に整っていくのが分かる作りになっていた。前試合の大将戦で同レベルの実力者相手に20分の延長戦、一人負傷退場し四人での戦い、そもそも相手が県内でも上位の強豪、それを永遠ちゃんが残り三人を相手しなければならず、二人相手には制限時間一杯まで使われ、最後の相手は重量級と返す返すも不利な状況が積み重なっている。なんで!? と思うときほどロジカルに勝敗が決まってしまうというのがこの漫画だし、それが好きなところだし面白いところでもある。

 

そもそも無名弱小だった青西柔道部が優勝候補の一角として数えられるまでになった時点で十分凄いことだし、初の決勝進出だって大きな成果だ。未知の実力が県内でも有数の存在として誰もが認めるようになった時点で大したもんじゃないか……という気がしてくる。それに頑張っているのはどの学校も一緒だというのは散々描かれているし、勝ち負けそのものに意味を見出すような作品でもない。今回の展開も実に『もういっぽん!』らしい展開には違いなかったのだが、アニメから入って4月に原作単行本を買って現在四周目の自分にとっては、いささか刺激の強すぎる回であったことは間違いない。

 

こうしていろいろ吐き出しているうちに自分も気持ちの整理がついた。そして次回、決勝の相手は果たして誰か。ミドリコか、鐡か、小鳥遊か。本命はミドリコなんだけど、再戦したら多分次は負けそうなので今から震えて待っておく。