37分ワンカット映画、という体裁の作品だった『カメラを止めるな』
そのリメイク作品と上映時期が被るとは、偶然にしては出来すぎている。
それが今回の約90分のワンカット映画『ボイリング・ポイント/沸騰』
クリスマスのロンドン、その片隅にある結構繁盛しているレストラン。
そこの従業員は各々問題を抱えていて、トラブルの種は枚挙に暇がない。
予約は一晩に100件。それ以外にも想定外の客が次々に訪れる。
絶対に何かが起こる。開店前にあるミーティングの
僅かなやりとりだけで、観客はそれを確信する。
店がオープンし、従業員の一人ひとりをひたすらにカメラが追いかけていく。
いつか訪れる破綻のときを待ちながら…。
この作品は何と言っても、ミスが許されないワンカットという映像のドキドキ感と
このレストランにいつ致命的なエラーが訪れるのかというハラハラ感の二重奏。
序盤で分かる、この店はヤバいぞと感じさせる要素の出し方が秀逸。
おかげで残りの80分に渡って緊張感と付き合い続けていくことになる。
普通の映画だったら多少は箸休めのシーンがいくつかあるものだが
ここの映画では何でもないようなシーンでも緊張感が続く。
だから観た後非常に疲れた…。
その分ストーリーはそれほど凝ったものではなく、あまり印象には残らなかった。
それぞれ抱える事情を小出しにしながら、次々に店に訪れるトラブルが見どころで
観客はいつ脱線するか分からないジェットコースターに乗せられているようなもの。
そのスリルを楽しむ映画なんだろうと思う。
しかし、まぁそうなるよねと思いながらも、最後の瞬間は切なかった。
考え抜かれた導線と、休む暇もないカメラマンの苦労には感嘆せざるをえない。
そんな映画だった。