四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

ワールドツアー上映『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』を観てきた。

先行上映というのは本来オタク向けのイベントだったような気がするのだが、それを大々的にやることが許されるのはさすが鬼滅といったところ。去年放送された『遊郭編』の10話・11話と、新作である『刀鍛冶の里編』の1話を抱き合わせて上映するというのが今回の催しである。一応原作も全部履修済みで先の展開も全て知っており、まあ既に一度観たものとこれからTVで放映するものだから別に観に行かなくてもいいかなあと思っていたのだが、そういえば刀鍛冶の里編の序盤には恋柱の入浴シーンがあったことを思い出した。それを大きなスクリーンで見る機会は今後訪れないだろう。よし、行くか。心変わりは一瞬だった。

 

観たのはレイトショーだったというのに、親子連れに老若男女問わない客層には驚かされる。さすが鬼滅。120分という上映時間の構成は、冒頭に炭治郎立志編から遊郭編までのダイジェストがOPテーマと共に流れる。そんなに熱心なファンというわけではないので、適度に忘れている身としてはありがたい。その後に遊郭編10話が24分、11話が45分、刀鍛冶の里編1話が45分と、特に編集が加えられることもなく放送フォーマットそのままに流れる。

 

放送版でもこれ劇場で流す用に作ってるんじゃないのか?と思うくらい高画質のアニメだったと思ったのだが、そこからさらに4Kアップコンバートされた映像は家の小さなモニターで見ているものとはだいぶ印象が異なった。遊郭編の終盤、破壊された遊郭街で燃える炎のゆらめきは思わず目を奪われるほど美しかったし、音柱と妓夫太郎の戦いは家で見ただけで済ませるのは勿体ないほどの激しいバトル。炭治郎の指が折られた音にビックリしてしまうのも、映画館の音響の為せる技だろう。映像作品のポテンシャルとしては、明らかにテレビでは間に合っていないほどの情報量に、改めて気付かされる。

 

TVで見たときはくどいと思っていた演出も、映画館のスクリーンで見る分には釣り合いが取れていると思えた。妓夫太郎の回想も、尺をじっくりと取っていて悪くない。この後にある上弦集結のシーンも明らかに演出過多(セリフ言うたびにいちいち音が煩いしカメラワークも不必要にグルグルしてる)だと思うのだが、映画館でならなんとか見られる感じ。家で見たらわりとキツイかもしれない。ただその過剰演出のせいで善逸がいつまでも霹靂一閃・神速で堕姫の首を斬ろうとしてるのは改めて見るとちょっと気になるくらい滑稽な絵面だったし、そこに普通に伊之助が現れるの面白すぎるだろ。思わず笑ってしまった。

 

そして刀鍛冶の里編が始まり、撃破された妓夫太郎以外の上弦の五人が無惨の本拠地である異空間の無限城に集合する。この無限城がちょっとやりすぎなくらいにデカい。おまけに上弦の弐・童磨にひたすらイジられ続ける猗窩座など、見どころはたっぷりある。上弦の四・玉壺のデザインや、上弦の壱こと黒死牟の顔は大画面で見るとかなりキモい。さすがに目が6つはな……。

 

その後炭治郎の視点に戻り、初めてまともに喋ったカナヲとの再会、そして機能回復訓練の日々が描かれるのだが、この辺のギャグのノリはやっぱりこの作品が子供向けであることを、劇場のキッズの反応で分からせてくれる。鬼滅が受けた理由の一つは、やはり誰でも分かるように作ったからだろう。なんでもセリフで説明してしまうため、時として恐ろしくくどい描写になってしまうのだが(特に炭治郎が初めてヒノカミを使うところとかが顕著)、この作品はあくまで少年ジャンプで連載されていた少年漫画なので、対象年齢を思えば仕方のないことである。こちらは流行りに乗っかっているだけのおじさんに過ぎないのだ。

 

そしてようやくお待ちかねの刀鍛冶の里へ。恋柱の入浴シーン、キッズたちはこれを見てどう思うのだろうかと心配になってしまったが、TV放映の際にはたぶん湯気とかで修正されそうな程度には高い露出度であった。そういえばカナヲのキュロットスカートが原作からめちゃくちゃ短くされていたし、鬼殺隊の裏方である隠(かくし)の女性もやたらと胸が強調されてるし、昨今の風潮に真っ向から逆らっていってるかのような意思を感じた。さすが鬼滅。まあ自分はそういうの好きだからもっとやっていいぞという感じだが、風呂のシーンが終わったあとの恋柱が禰豆子に構うシーンも好きだから、そっち方面での頑張りにも期待したい。

 

結論として今回の上映会は無理して見るほどのものでもないが、入場特典でちょっとしたパンフみたいな冊子ももらえるし、作品としての価値の再発見ができたり、案外悪くない上映だったと思えた。