四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』鑑賞。

 

人類終了まであと半年……衝撃の引きで終わった『前章』から二ヶ月。原作とは異なるエンディングを迎えるという触れ込みの完結編『後章』が5月24日に公開となった。前章は突然東京上空に現れた巨大な侵略者の”母艦”の存在が日常生活を脅かしつつも、特に何かをしてくるというわけでもないのでいつも通りの学校生活を送っていく女子高生・中川鳳蘭(おんたん)と小山門出の二人による高校生活最後の一年と、二人のまったく関わらないところで侵略者の母艦に対処する日本政府や自衛隊やネットの流言飛語などの非日常を交えながら描くという、311をモチーフにしたような現代的で露悪的なアプローチの物語が展開。前章の最後で高校を卒業したおんたんと門出だったが、母艦の中から出てきた侵略者の中型船が自衛隊の新兵器によって撃ち落とされ、一般人には存在が疑問視されていた侵略者の姿が公に知られることになってしまう…というところまでが描かれた。うーんこれは期待できる。そう思って同日公開のウマ娘より先に観ることにしたのだが。

 

後章を見終わった後の正直な感想を言うと……後章は映画的な盛り上がりを優先した案外普通の作品になったなぁという感じだ。原作を読んでいないのでアニメではどう結末が変わったのかまでは分からない。後章ではおんたんと門出は大学に進学。大学のサークル勧誘でたまたま声を掛けてしまったオカルト研究会の先輩がきっかけで出会った、人類と侵略者の中間の存在である大葉圭太の存在が物語に大きく関わって来ることになる。侵略者の存在が一般にも認知され、政府や自衛隊だけではなく侵略者を保護する団体SHIPや逆に侵略者を殺して回る過激派組織・青共闘なども加わり混迷を極める日本で、お互いを絶対の存在だと信じて疑わないおんたんと門出の関係が後章でも主に描かれる。

 

ポストアポカリプスな雰囲気の世相から全力で目を逸らして日常をエンジョイする女子高生たちの青春ものに不穏な要素をひとつまみ…みたいな感じで前章は個人的に非常にお気に入りの作品だったのだが、後章は右も左もおちょくったような描写はそのままに、おんたんと門出は人類滅亡にはそれほど関わらない一方で急にボーイミーツガールの話になったのには驚いてしまった。世界を決定的に変えてしまったのは他ならぬおんたんだと中盤で明かされるのだが、今目の前にある人類滅亡の脅威に立ち向かうのはおんたん達と交流を深め全てを知った大葉圭太の方。一方でその対となるのは前章で恋人である栗原キホが侵略者の宇宙船の墜落によって死亡し、復讐と陰謀論に染まったキノコ頭の小比類巻。彼は青共闘のリーダーとなって裏主人公の如く大暴れすることになる。後で思ったが過去編で描かれたイソベやんの内緒道具で暴走した門出のアナザーだと思うと、後章における小比類巻の存在感も納得。逆に大葉はおんたんの過去を全て知ったいわばおんたんのアナザーで、ある種の因縁の対決だったわけだ……。

 

終盤の東京崩壊シーンは挿入歌がかかることもあって、伝説巨神イデオン発動篇やメガゾーン23PART2、THE END OF EVANGELIONのような負のカタルシスに満ちあふれており、そこだけでも見た甲斐あったかなという気分にはなった。見ていてこれ人類補完計画じゃん!と思わなかったと言えば嘘になる。まあしかしながら東京が吹っ飛んだのもつまるところおんたんのせいなんだよな…と思うと色々複雑なのだが、自分の大切な人が存在しない平穏な世界よりも、自分の大切な人が存在する地獄のような世界の方がいい! というのは絵に描いたようなセカイ系で懐かしい気持ちになった。

 

結局あれは何だったんだ? と思うような謎がいくつか残るものの、これがおんたんと門出と、そして最終的には大葉の物語であったことを思えばそこにフォーカスされないのも仕方のないことだと諦めるしかないのだが、門出の父親は前章で意味ありげにフェードアウトしたまま結局再登場しなかった。原作ではものすごいキーキャラクターらしいのだが謎のままである。それにしても『デデデデ』がTVシリーズになるらしいという噂を耳にしたのだが、本当なのだろうか???