四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記23『栄誉の証明(後編)』

 

今回の仕事の監督であるファルカスはとっとと走って行ってしまったので、準備をする暇もなく彼の背中を追いかけてホワイトランの平原を走り、息を切らせてダストマンの石塚に到着した。だが彼はそんな俺の様子を気にするわけでもなく、先を急がせた。ちょっと待ってくれ……。

 

 

一息ついてから遺跡の中に足を踏み入れると、ファルカスはこの場所に何者かが入った形跡があることに気付いた。それもつい最近のことのようだ。まさかここにウースラドの欠片があるという情報自体が罠だったのではないか? そういう疑念がふつふつと湧いてくる。

 

 

何者かの襲撃に警戒しながらしばらく奥へ進んでいくと、通路が鉄格子で塞がれている。離れたところにレバーがあり、ファルカスをその場に置いて俺はレバーを操作しに行った。ガシャーン! 先へ進む通路の鉄格子が上がったと同時に、背後から勢いよく別の鉄格子が落ちてきて俺は閉じ込められた。まさかこんな単純な罠に引っかかるとは……。ファルカスはやれやれと言った感じで、通路の先にもう一つのレバーを見つけたようなのだが。

 

 

どこからともなく男たちが現れファルカスを取り囲んだ。先にこの遺跡に入っていた人間たちというのはこいつらのことか!? 銀の刃をちらつかせ、じりじりとファルカスににじり寄っていく。いくら同胞団の手練でもさすがに多勢に無勢。くそっ、この鉄格子さえなければ俺も加勢できるのだが。

 

 

死の覚悟を問う相手に対してファルカスは不敵に笑った。すると鉄格子の向こうで、ファルカスの肉体が膨張していき、全身が毛で覆われた巨大な人形の獣(ウェアウルフ)へと姿を変えた! それを見た男たちは興奮したように飛びかかったが、ウェアウルフは恐ろしい速さで敵の合間を縫って背後へと回り込む。そして腕の一振りで男たちは次々と肉塊と化し、あっという間にあたり一面を血の海へと変えた。

 

 

静寂が訪れる。人の姿に戻ったファルカスは一人で先に進み、俺の目の前の鉄格子が上がって行く。きっと通路の先にもう一つのレバーがあり、二人一組なら進める仕掛けだったのだろう。もし一人でこの遺跡に来ていたなら……想像しただけで恐ろしい。いやそうじゃない、さっきの獣の姿はなんだ!?

 

ファルカスの目には俺が怯えているように見えたのかもしれない。最初に謝罪すると、さきほどの姿……ウェアウルフはサークルと呼ばれる同胞団の幹部のみが持つ秘密の力だと説明された。同胞団の強さの秘密はこういうことだったのかという納得があった。吸血鬼のように邪悪な力というわけでもないようだし。

 

 

そして先程の男たちはシルバーハンドというウェアウルフを狩るための集団であり、同胞団とは敵対関係にあるという。俺の目には山賊と見分けがつかなかったが、全員がウェアウルフやアンデッドの弱点である銀の剣で武装しているのが特徴のようだ。

 

同胞団の幹部がウェアウルフだと知っているなら、あいつらはウェアウルフだとバラしてしまうのが一番同胞団の名誉に傷が付くような気がするのだが、それは黙っておこう……。

 

 

遺跡の先には多数のシルバーハンドたちが待ち構えていた。一人ひとりが精鋭と呼ぶのに相応しいほどの強敵揃いで、それが複数で襲ってくるとなると非常に手を焼いた。ファルカスもたまにサボっているのかと思えるほど戦いの最中にぼんやりしていることがあり、あまり頼りにならないのが困りものだった。

 

 

待ち構えていた大蜘蛛も倒し、遺跡の最奥と思われる玄室へと辿り着く。壁沿いに多数の石棺が置かれており、入った瞬間から嫌な予感がする。こういうのはお宝を取った瞬間にドラウグルが出てくると相場が決まっているのだ。部屋の奥の台座にはウースラドの破片と思われる金属片が安置されていた。ゴクリ。そっと持ち上げてみると、地響きと共に石棺の蓋が次々と開いていく! ほれ見たことか。

 

 

いまだかつて無いほど大量のドラウグルが相手ということで、想像以上に激しい戦いになった。幸い質はそれほどでもなく、ファルカスの頑張りもあってなんとか全て蹴散らすことができ、ついでに新たなシャウトを習得することもできた。外へ出るとドラゴンが空を舞っていたが、それよりも開放感の方が勝った。スコールめ、簡単な仕事だと言っておいてこんな割に合わない仕事を振ってきやがって……。

 

 

ウースラドの欠片を持ってジョルバスクルに戻ると、既にファルカスから報告を受けていた同胞団のサークルが集合していた。つまりここにいる人間がウェアウルフということだ。導き手であるコドラク、幹部であるスコール、ファルカス、ヴィルカスの兄弟、そして狩猟の女神の異名を取るアエラ、この五人である。俺は今回の仕事ぶりを認められ、正式な同胞団の一員となった。これまでは仮入団だったのだ。

 

 

入団の儀式の後サークルは解散し、残ったコドラクに声を掛けた。ウェアウルフの話の真偽についてだ。コドラクはあっさりとその事実を認めたのだが、実はコドラク自身はウェアウルフを治したいと思っているようだ。

 

ノルド人は死後魂がソブンガルデと呼ばれる場所へ行くと信じており、ウェアウルフのままではそこに行けないのではないかと心配しているのだ。コドラクは既に年老いているので、そういうことが気になるようになってきたのだろう。このことが同胞団の堅い絆に亀裂を走らせるようなことにならなければ良いのだが。

 

 

【続く】

 

 

 

スカイリム日記22『栄誉の証明(前編)』

 

吸血鬼を治した後、俺はまたホワイトランに戻ってきていた。家を買ったことをどこからか嗅ぎつけたのか手紙が二通届いていた。差し出し人はドーンスターの聞き覚えのない館主と、ソリチュードのファルク・ファイアビアードから。内容は、なになに……博物館ができた。それと、ブルーパレスに来てくれ……か。どちらも興味がないわけではないが、今は他にやることがあるので後回しにさせてもらうことにする。

 

 

今はとにかく鍛冶と錬金術と付呪の技術を高めたいという欲求があった。なぜこの三つの技術に拘るのか、それは実際に手を出してみるまで分からないことがあったからだ。

 

鍛冶は武器防具を鋳造したり、改良したりする技術というのは言うまでもないのだが、錬金術には付呪や鍛造する際に集中力を高める薬というものがある。そして付呪にも錬金術や鍛造をする際に精度を上げる魔法を装身具に宿らせることができるのだ。つまり鍛冶と錬金術と付呪をまんべんなく鍛錬することでより相乗効果を得られる!

 

付呪は案外コツを掴むのが楽だったし、錬金術の材料はその辺の草花でもよかったのでいくらでも練習することができた。あらゆる組み合わせと試すうち、小麦と巨人のつま先との組み合わせで高価で買い取ってもらえる薬を作り出せたのは収穫だった。しかし鍛冶はなかなか難しいうえに鉱石やインゴットなどの材料費が高く、練習することさえままならない。さてどうしたものか。

 

 

悩んだ末に、このホワイトランにはスカイリム最高の鍛冶師と呼ばれる男がいることを思い出したのだ。その名はエオルンド・グレイ・メーン。スカイフォージと呼ばれる特殊な鍛冶場を任されている老齢の男である。この男に師事すれば、きっと俺の鍛冶技術も飛躍するに違いない。

 

エオルンド・グレイメーンとは以前に面識があった。だいぶ前の話になるが、ホワイトランに来て間もない頃、この要塞の一角にあるジョルバスクルと呼ばれる建物に迷い込んだ。そこはスカイリムでも有数の傭兵団である”同胞団”の拠点にほかならなかったのである。

 

かつては入団にも厳しい基準が課せられていたようなのだが、今は人手不足なのか来るもの拒まずといった感じで、あれよあれよという間に同胞団に入ることになってしまったのだ。ちなみに入団試験は団員との殴り合いである。それに合格した際におつかいを頼まれてエオルンドのところへ行ったのが初めての出会いであった。

 

 

そんなわけでエオルンドに鍛冶の技術を教えて欲しいと頼みにいったのだが、意外にも簡単に了承を得られた。達人の例に漏れず頑固爺という印象だったのだが、単に話し下手なだけだと言う。そう思うと少しだが好感を抱いた。

 

さすがにタダというわけにはいかなかったのだが、エオルンドの匠の技を見られるなら安いものだろう。だが基礎的なものはともかくとして、奥義については要求金額が跳ね上がり、とてもじゃないが払い続けられない。それ以上は自分でなんとかしろということかもしれない。

 





だがそのおかげでエルフやドワーフ、オークの武器防具の鋳造の仕方やより良質なものへの鍛え直し方などを学ぶことができた。この中でもエルフの武器防具は非常に軽いうえにそれなりに強度を誇る。今まで所持品の重さに悩まされていた俺にとってはまさに願ったり叶ったりである。俺はこの装備を鍛え上げることを目標に定めて、練習を開始した。その矢先の出来事だった。

 

 

同胞団のスコールに呼ばれているという話を聞きつけた。俺がほとんど仕事を請け負っていない幽霊団員だからだろうか? ホワイトランは暮らしやすい場所だがこういうしがらみは少々面倒くさい。しかし俺もこの街に家を持っている以上手紙のように無視することもできないのも事実である。仕方なくジョルバスクルに赴いた。

 

スコールには俺がドラゴンボーンと呼ばれていることや各地で幾つかの事件を解決していることなどはとっくにバレていた。そういうわけで同胞団としてはより深く取り込んで影響力を高めたいというのが本音なのだろうか。

 

ダストマンの石塚と呼ばれる迷宮に、ウースラドの破片があるという話が舞い込んできたという。それを確認してくるのが俺の仕事だ。ただし今回は同胞団の指導者の一人ファルカスが監督役で付くという。

 

ウースラドとはこの同胞団の創設者であり古代ノルドの英雄イスグラモルが使っていたほとんど伝説のような戦斧のことなのだが、今はバラバラに砕かれ散逸している。それを探すのも現在の同胞団の目的のひとつになっている。

 

 

簡単な仕事だとスコールが言うわりには、ファルカスが俺を見る眼差しには厳しさを感じる。何か裏がなければいいのだが……。

 

【続く】

『スーパー30 アーナンド先生の教室』鑑賞。

インド映画は『きっと、うまくいく』と『バーフバリ』しか見たことがなかったのだが、そのせいで歌と踊りと上映時間の長さというのが個人的なインド映画のイメージである。『スーパー30 アーナンド先生の教室』も御多分に漏れず上映時間が長く、映像ではINTERMISSIONとテロップが出ているのに、日本の映画館では休憩を入れてくれないので注意が必要だ。

 

主人公のアーナンド・クマールは数学の才能を認められ、ケンブリッジ大学への入学が認められるほどだったのだが、入学金が払えず日銭を稼ぐ仕事に甘んじていた所を拾われ予備校の講師となる。アーナンドは講師として人気を博し、予備校の業績は鰻登りになったが教育の機会すら与えられない人間の存在に気付き、予備校を辞めてそれまでの稼ぎを使って無料私塾の開設を試みる、というお話。

 

インド最高峰の理系大学、インド工科大学(IIT)に入学するための生徒を育成する塾を運営するアーナンド・クマールという男の物語……というと、インド版ドラゴン桜のようなイメージをつい持ってしまうが、実際はより切実である。なにせ階級社会(カースト制度)と格差社会との戦いでもあるのだ。

 

王の子供が王になるのではない、王になるのは能力のある者だ! というのはこの作品で再三にわたって繰り返されるスローガンなのだが、お金が無くてそもそも教育の機会がなかったり、金持ちと同じ空間にいるだけで感じるほどの、階級社会によって生まれた劣等感をいかに克服するのかというが話の上での重要なテーマとなっている。

 

無料塾ということもありとにかく金策に困っているシーンが多い。そのせいで自分が元いた予備校の経営者との間にトラブルが起こるのだが、それが最終的に殺し屋まで雇ってくるまでにエスカレートしていく。インド映画の名作『きっとうまくいく』でもあったように、身につけた知識はこう使え! それこそが学問! と言わんばかりのシーンがあるのがこの映画の良いところでもあるのだが、それが最終的にリアルファイトに用いられるのが実にエンターテイメントである。

 

インド映画らしく歌と踊りのシーンもそれなりにある。特に序盤の予備校講師として成功しお金に困らなくなったときに流れる歌と、塾の生徒たちに勉強を教えているときに流れる歌の歌詞が最高に身も蓋もなく気分が高揚してくる。見ているこちらも思わず自分も何か勉強しないと…とその気になってしまいそうだ。

 

ただ主人公のアーナンドが勝手に予備校の講師を辞めて私塾を始めたり、勝負の結果を嘘ついて反故にしたりと、恩人に対してあまり筋を通しているように見えないので、日本人目線では微妙にアーナンドに共感できない部分がある。トラブルが起こったのもお金よりそういうところが原因でもあるし、インド人的にはオッケーなのだろうかこれは? わからない、文化が違う。

『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』6話まで視聴。

第6話『奈落』はこれまで前フリの前フリみたいな感じの退屈な話がずっと続いていた『力の指輪』で、始めてようやく面白くなってきたなと思えた回だった。結局のところ『力の指輪』は指輪物語のお話を下敷きにしたオリジナルストーリーぐらいの話として正直なところ期待値をだいぶ下げていた。演者の人種が云々も個人的にはそれほど気にはしていなかったのだが、つまらない作品の言い訳にはしてほしくないという気持ちはあった。

 

『力の指輪』にはサウロン打倒を目指すガラドリエルとヌーメノール、エルロンドとエルフとドワーフ、謎の老人を保護するハーフット、南方国のエルフと人間たちという4つのストーリーラインが走っていた。それぞれの話にはこれまで特に関わりが無かったのだが、それがようやく交わり始めたのが6話というわけだ。これまでバラバラに渡されていたパズルのピースがやっと嵌まってきた。

 

統率されたオークに対して抵抗する南方国の民だったが、卑劣な罠にかかり追い詰められてしまう。逃げたはずの南方国の民を武装させて同士討ちさせるという、この辺はオークの戦いのえげつなさがあって良い。そして紆余曲折あって中つ国にやってきたガラドリエル率いるヌーメノールの騎馬隊が間一髪のところでオークを蹴散らす。王道だが騎兵隊の到着というのはやはり盛り上がる。

 

ロード・オブ・ザ・リングでいえば、『二つの塔』におけるヘルム峡谷の戦いを大幅に縮小したぐらいの感じなのだが、これまでの見どころといえばガラドリエルの暴れっぷりぐらいだったことを思えば十分なくらいである。

 

そして今まで思わせぶりに登場していたサウロンの剣の柄が物見の塔の仕掛けを起動させ、その結果モルドールの滅びの山が噴火し南方国に破局もたらす。滅びの山はのちにサウロンが一つの指輪を鋳造した場所であることを思えば、サウロンの遺物が活火山へと変貌させるのはなかなか腑に落ちたし、なんと言っても南方国はモルドールと目と鼻の先にあるのだから、ロケーションとしては実にちょうどいい。これまでオークが掘っていた穴が単なる日除けではなかったことも判明し、色々と納得してしまう回だった。

 

最後は露骨なクリフハンガー展開なのだが、これまでよりはずっとワクワクしている。滅茶苦茶になった登場人物たちには申し訳ないが、7話の予告でアフロになってるガラ様とか見ると笑うしかないじゃないか。

 

これから先の展開としてはハルブラントって絶対ナズグルになるだろ? とかイシルドゥルがゴンドールを建国するんだろ? とかそういう方面の期待をしてしまうのだが、なんというかNHK大河ドラマのように、既に知っている歴史をどのようなアプローチで大きな転換点に向けて繋いでいくのかという、そういう楽しみ方をようやく分かってきた気がする。

 

 

スカイリム日記21『夜明けの目覚め(後編)』

 

人間はサングイネア吸血症と呼ばれる病気を経て吸血鬼となる。吸血鬼のドレインを受けることによって感染し、放っておくとやがて吸血鬼になってしまう。吸血鬼になる前に治療を受けるか、疾病退散の薬を服用することで治すことができるのだが、今回ばかりは完全に油断していた。

 

吸血鬼になってしまうと、あのモヴァルスのところにいた吸血鬼たちのように人の理を外れて闇の中で生きていかなければならない。もしくは吸血鬼であることを隠して人の世界で生きていくかである。だが吸血鬼が太陽の下で生きていくには大変な不利益が生じることになる。冒険を生業としている自分にとって、はっきりいって現実的ではない。

 

 

だがサングイネア吸血症ならともかく、吸血鬼になった者を治す方法というのは寡聞にして聞いたことがない。もはや万策尽きたかに思われたが、ホワイトランの酒場で情報収集していたときにある噂を耳にしたのだ。なんでもモーサルに住むファリオンという男がアンデッドの研究をしているという……。

 

モーサルに立ち寄ったのがつい最近ということもあり、その名前には聞き覚えがある。街に溶け込む気が一切ない黒いローブ姿の男だった。通りすがりに少し話したことがあるくらいだが、あの男がドラウグルはともかく吸血鬼の研究もしていたなどとは初耳であった。

 

ファリオンの存在は住民から相当怪しまれていたと思うのだが、首長のイドグロッドはそのことについて特に動く様子を見せていなかった。たまたま吸血鬼が街の近くに潜伏していて、たまたま吸血鬼の研究をしている魔術師が街にやってきたのか。考えてみれば出来過ぎな話のように思えたが、イドグロッドには予知能力のようなものがあるらしいので、それを見越していたのかもしれない。吸血鬼から本当に人間に戻れるのかまでは分からないが、その噂を頼りにもう一度モーサルまで行ってみる価値はあるだろう。

 

 

ふたたび山を越えてモーサルに戻ってきた。陽光下での自然治癒やマジカの回復が一切行われないという吸血鬼の性質は思った以上に厄介で、それは要塞の外ではなおさらのことだった。偶発的な戦いはなるべく避けていかなければいけなかったのだが、こちらの都合お構いなしに狼や山賊は襲いかかってくる。リディアの援護なしにはとてもモーサルに辿り着けなかっただろう。

 

 

モーサルに着くと、俺は住民の目から隠れるようにしてファリオンの家の戸を叩いた。開いた戸の隙間から覗くファリオンは、俺の顔を見てだいたいの事情を察したようだった。彼に促されて家の中に入り、吸血鬼から人間に戻りたいと告げる俺に対して、ファリオンは至って冷静に自分がいかに物知りであるかを語った。

 

かつてオブリビオンを旅し、様々な知識を吸収してきたという。怪しげな風貌に見合った修羅場を潜ってきているようだ。それ故に、一度は吸血鬼になることを考えたこともあったが、子供を引き取ったことで断念することになったらしい。だからこそ、吸血鬼を治す術も知っているというのだ。

 

 

彼が言うには、吸血鬼を治すには満たされた黒魂石が必要である。黒魂石とは人間の魂を封じ込められる魂石のことで、俺はファリオンが持っている黒魂石を仕方なく購入することになった。商売上手な男だと思う。

 

そして黒魂石を魂で満たすのにちょうどいい場所がこのモーサルの近くにあった。スノーホーク砦という、死霊術師たちが占拠している場所である。俺はファリオンの家を後にしてスノーホーク砦へと出かけていった。いつもだったら黒魂石を使うなどというのにはためらいを感じただろうが、自らが吸血鬼になり、相手が死霊術師となれば話は別である。

 

 

城壁の上で見張りをしていた死霊術師の前に姿を見せると、そいつは見事に釣られて外に出てきた。そして魂縛の魔法を使ってから軽く捻り上げると黒魂石を魂で満たすことができたのだが、その後が大変だった。

 

外の異変に気付いた術師たちが次から次へとやってきて、意外なまでの激戦になった。死霊術師が死んだ死霊術師を蘇らせるので厄介なことこのうえない。ただし一回蘇った死体はもう一度倒すことによってただの灰になってしまうので、いずれは限界を迎えることになる。そうしてしばらく戦っているうちに砦の外には誰もいなくなってしまった。もう用は済んだはずだったのだが……。

 

 

欲が出た。幸い夜も更けており、自然治癒もマジカの回復も正常に行われていて戦いに支障はない。どうせならと思い砦の中へと入る。砦の中は錬金器具や薬の素材などが大量に並べられており、いかにも魔術師たちの砦といった感じだ。価値の分かる今となってはまるで宝の山のように見える。

 

死霊術師の一人が持っていたメモから、ここは元々山賊の根城になっていたようだが、この死霊術師たちによって追い払われたということが分かった。その証拠に研究室の台の上には山賊だったと思われる人間の死体が散乱しており、実験の痕跡が残っていた。

 

 

死霊術師たちから奪った鍵で砦の中央部の扉を開ける。部屋の中央にはスケルトンが横たわっており、その近くには最後の死霊術師がいた。おそらくこいつが親玉だろう。しかし突然部屋に押し入ったわりには、驚いている様子は一切なく冷静を保っている。どんなに手練れの死霊術師といえど、操るものがなければそれほど驚異ではないはず。しかしこちらが攻撃に移る前に、死霊術師は杖を手にして魔法を放ってきたのだ。

 

 

赤い閃光とともに炎の塊が飛んでくる。咄嗟に身構えたが、魔法が着弾した炸裂音とともに後ろに跳ね飛ばされた。これは……火炎球(エクスプロージョン)!? その爆発は付き従っていたリディアをも吹き飛ばしていた。俺が一発撃つのがやっとのエクスプロージョンを魔法の杖で無数に放てるとは、あまりにも強力すぎる!

 

 

壁に叩きつけられ朦朧とした頭でなんとか打開策を考える。ああいう大きな爆発を起こす攻撃に対してどうするべきか……その答えは、相手にも影響が出るほど接近することだ! 俺は武器をサングインのバラに持ち替えて走り、死霊術師に肉薄した。こう近ければエクスプロージョンによる攻撃はできまい!

 

俺の思惑は的中した。死霊術師は近づいてくる俺に対して爆発する魔法を撃つかどうか一瞬の迷いがあり、その隙に召喚されたドレモラの一太刀が入った。あとは一切手を緩めず総攻撃をかけ、死霊術師は倒れた。落ちていた杖を拾い上げると、やはりエクスプーロージョンの力を持つ杖で間違いない。これはサングインのバラに匹敵するほどのお宝だ。

 

 

朝になり人間の魂が入った黒魂石をファリオンのところに持っていくと、明け方に近くの沼地にある召喚サークルで落ち合うことになった。具体的な場所が分からないので、明るいうちに沼を探索しておくことにする。するとそれほど時間が経たない内にストーンサークルを発見した。多分ここのことを言っているのだろう。

 

 

夜になり再び沼の召喚サークルを訪れた。約束では明け方ということになっているのでそれまで待つ。あまりにも暇だったので、沼に群生していた茸を戯れに口に運んでみると、ピリピリと身体が痺れる。麻痺の効能を持つ錬金素材は貴重だ。麻痺の毒薬は非常に高価だし、武器に塗って使っても極めて有効な逸品だ。俺はファリオンのことも忘れて一晩中茸を採取した。

 

 

夜明けが近くなり空が白み始めてきた頃、モーサルの街の方から歩いてくる男が一人。ファリオンが召喚サークルに到着するとさっそく儀式は始まった。呪文を唱えるとオブリビオンとのゲートが繋がったのか、周囲の空気に微かな瘴気が交じる。俺が持っていた黒魂石が反応し、吸血鬼の力がそのゲートに吸い上げられ身体の隅々から消えていく感覚があった。

 

終わってみると、あっけない儀式であった。ファリオンは満足そうに頷き、俺が礼を言う前に足早に街に戻っていった。こんなところで怪しげな儀式をやっているなどとはあまり知られたくないだろうからしょうがない……そう納得することにした。吸血鬼から人間に戻りすっきりとした気分でいると、山の影から太陽がのぼり始める。光はいつもより眩しく、そして美しかった。

 

 

【続く】

 

 

 

スカイリム日記20『夜明けの目覚め(前編)』

 

モーサルにおける吸血鬼事件を解決し報酬を受け取ると、俺はようやく山を越えてホワイトランへと戻ってきた。早速ドラゴンズリーチにいる執政のプロベンタスに家を購入することを告げ、5000ゴールド一括耳を揃えて支払う。家財道具は別売りらしいのだが、今はそれどころではない。自分のものになった家を、すぐにでも見に行きたい!

 

 

プロベンタスから購入したのは、ホワイトランの要塞入り口近くにあるブリーズホームと呼ばれる家だった。貰った鍵で扉を開け、家の中に入る。……そこはとてつもなく寂寥感に溢れた空間であった。木箱が幾つか転がっているだけの物置のような場所というのが最初の感想だ。光源がひとつもない暗闇で隙間風がひどく、二階にはベッドとチェストが一つづつあるだけ。こんなんじゃダメだ!

 

 

俺はプロベンタスのところに引き返し、家財道具一式とついでに改築を頼んだ。費用はおよそ2000ゴールドほどだったが、モーサルでの稼ぎがあって助かった。プロベンタスは大急ぎで用意してくれるということだったので、少し時間を潰してから家に戻ってみると、なんということでしょう!

 

壁の隙間は綺麗に塞がれ、何を置くにも困らない収納と調度品の数々、ぱちぱちと燃える明るい暖炉、綺麗な寝具に錬金器具。これだ! 俺の待ち望んでいた我が家のあるべき姿は! これで伴侶が家で待っていてくれたらもはや何も言うことがないのだが、生憎今は従者のリディアがいるだけだ。

 

 

自宅に腰を落ち着けて、まずやったことと言えば本の整理だった。ドサドサドサドサ!旅先で集めた本の数々を床に下ろし、一気に身体が軽くなった。スカイリムに来てからというもの、見たことのない本を見つけてはいつかは読もうと持ち歩いていたのだが、さすがに限界だった。

 

本棚に一冊ずつ入れていき、並んでいる本を見ると結構な満足感がある。そしてチェストにすぐには使わない武器や防具、棚の中には鉱石やインゴットなどを入れていった。このために家を買ったと言っても過言ではない。

 

 

話はかなり前まで遡る。このホワイトランで従士として認められた頃のことだ。鍛冶屋”戦乙女の炉”の女職人エイドリアンは執政であるプロベンタスの娘である。そのせいか彼女は自慢話が多く少々煙たい存在であったのだが、店の前を通りかかったときに話しかけられ、いつも通りの自慢話が始まるのかとおもいきや、どうやら鍛冶場の設備一式の使い方を手ほどきしてくれるという。今思えばどういう風の吹き回しだったのだろう。

 

 

鉱石をインゴットに精製したり、動物の革をなめして使えるようにしたり、素材から武器と防具を鋳造したり、出来上がった武器防具をさらに研ぎ澄ませたり改良したり、鍛冶場では色々なことができた。彼女はその手始めとして、鉄のインゴットからダガーの作り方を教えてくれたので、俺も実際に作ってみることにした。

 

完成した鉄のダガーの出来は酷いものだったが、先端が尖ってさえいれば刃物として使えなくもないと開き直るしかない。彼女は苦笑しながら砥石でダガーを研ぐと、さっきよりも”優良な”ダガーが出来上がる。やる前は難しそうだったが、実際やってみると案外簡単そうに見えた。

 

ふとそのときのことを思い出す。鍛冶場が家の隣にあるのだから、今度から自分でも鉱石を集めて武器防具を拵えてみるのも悪くないだろう。初心者のうちは大したものもできそうにないが、ずっと続けていたらもしかしたらドラゴンの骨や鱗すら武器防具にできてしまうかもしれない。そう考えると少し楽しくなった。

 

 

そして家に錬金器具があるので錬金術にも手を付け始めた。傷を癒やす薬とマジカを回復させる薬の数が少なくなってきていたのと、これらを錬金屋からいちいち買い足しているとあっという間に破産してしまいかねないことに気付いたからだ。それなら旅の途中で拾い集めた素材を使い、自分で作ったほうが金がかからないし、その過程で出来た薬は売ってしまえばお金になる。損することはひとつもないのだ。

 

 

ホワイトランの錬金屋、”アルカディアの大釜”の女主人から薬のレシピを買い、その通りに作ってみるのだがやはり素人の腕ではできる薬も大したものではない。素材を口に入れてみればその素材の持つ効能が少し分かるという助言を貰い、試しに口に運んで見ると、確かにわずかだが身体に効果が現れる。そうしてつい調子に乗って手持ちの素材を次々に口に入れてみると、その効果が一気に現れて凄まじい苦しみに襲われ、正直死んでしまうかと思った。視界が一瞬緑色に染まったのは忘れられない記憶になるだろう。

 

 

そしてドラゴンズリーチの王宮魔術師ファレンガーの部屋にアルケイン付呪機が置いてあるため、付呪の練習のために出入りしている。付呪には魂石(ソウルジェム)に倒した敵の魂を入れる必要があるのでなかなか手を出せずにいたが、旅の途中で手に入れた魂入りの魂石が幾つかあったこともあり試しにやってみることにした。

 

付呪を行うには既に付呪が施されている武器防具を自ら解呪して、そこに宿っている魔法を学ぶ必要がある。既にいくつか不要な装備品を分解してある程度付呪できる魔法を学んでいたのだが、付呪のコツを掴むためにはより多くの装備品と魂石が必要になるのでもっと準備が必要なようだ。

 

そしてファレンガーによって、破壊魔法の使い手として精鋭の魔術師と認められるほどの練度になっていることが分かったのだ。それに伴って火炎球(エクスプロージョン)などの上級破壊魔法の使用が許可されることになった。だがあまりにもマジカの消耗が激しく、そう安々とは使いこなすことはできないだろう。魔法の道はまだ入り口にすぎない。

 

 

もちろんその合間にも腕が鈍らないように冒険も欠かさなかった。ホワイトランからほど遠くないところにあった”ホルテッド・ストリームの野営地”では巣食っていた山賊たちを一掃した。だがそこの鉱山では何気なく見た机の上に”鉱石変化”の呪文書が置かれていたのだ。これには鉄を銀に、銀を金に変えるというとんでもない魔法が記されていた。こんな大変なもの、誰にも知られないようにしなければ……。

 

 

そして同じくホワイトランの近くの”ホワイト川の監視所”にも山賊退治に向かった。洞窟の中は山の中腹に向かって登っていく構造になっていて多少面倒だったが、その頂ではホワイトランを一望できる絶景と、山賊の親玉であったハジバール・アイアン・ハンドという男が待っていた。名前は死体から見つけた日記に記されていたので分かった。両手用の武器を使うのに最適な篭手を持っていたので、リディアにプレゼントするととても喜んでいた。

 

 

そんな日々を送っていたときに、異変は訪れた。夜になると血が煮えたぎり、他人の血を欲する衝動に襲われるようになってしまったのだ。今はかろうじて抑え込めているが本格的に人を襲ってしまうようになるのも時間の問題であろう。

 

そして陽の下では力が衰え、自然に傷やマジカが回復することもなくなってしまった。この症状は以前から……モーサルで吸血鬼退治をした後から兆候が出始めたのだが、大したことはないと思ってずっと見過ごしていたのだ。俺は……なりたくない、吸血鬼なんかに……。

 

 

【続く】

9月の長雨を乗り越えて。

 

秋から冬にかけての野菜の仕込みが概ね終わった。

台風や大雨にだいぶ曝されたが被害はそれほどでもなく、かなり残ってくれた。

見えている範囲でもキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、八つ頭。

 

 

こっちは蕪、大根、人参、パクチー、レタス、白菜。

画像には無いがじゃがいも、長葱、玉葱、小松菜があって

夏野菜としてトマト、ピーマン、オクラ、茄子がまだ残っている。

改めて見ると多すぎると思う。

非効率なのは分かっているが、野菜の直売もやっているから

種類を揃える必要があってしょうがない面もある。

 

夏場は仕事が時短で毎日ブログを更新している余裕があったが

これからは少し難しくなるかもしれない。

 

今日は『明日ちゃんのセーラー服』のBlu-ray最終巻が届いたから

それを見ていたせいだし

Netflixで見ている『サイバーパンク:エッジランナーズ』が面白すぎるせいでもある。スカイリムも楽しすぎて止められないし

ブログの更新に時間使ってる場合じゃない!

と一度でも思ってしまうとだんだん億劫になってくる……。