四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『RRR(アールアールアール)』鑑賞。

つい先日イギリスのエリザベス二世が崩御した際に世界中が悲しんだ……かどうかは分からないが、かつて大英帝国が植民地化していたインドや中国が冷ややかなコメントをしていたのは記憶に新しい。日本もイギリスに対して浅からぬ因縁があるので、チクチクと言いたくなる気持ちは理解できなくもなかった。

 

だがイギリスに対するインドの燻りは、思わぬ形で再び目にすることになった。『バーフバリ』のラージャマウリ監督が送る、イギリスへの反逆精神をむき出しにしたエンターテイメントアクション大作映画『RRR(アールアールアール)』として。

 

英国植民地時代を背景に、総督府に囚われた村の娘を助け出すために立ち上がった男ビーム、そして本当の目的を隠しながら警察官として体制側に仕える男ラーマ。この二人が出会いそしてお互いの素性を隠しつつも唯一無二の親友となっていくのだが、任務と友情の狭間で悩み苦しみながら二人の運命は対決へと導かれていく……。

 

そんな筋書きの物語なのだが、これはまだ前半に過ぎない。なんと言っても上映時間が三時間あり、タイトルが出るまで40分かかる。普段は映画観ながら時計を見たりしないのだが、このタイミングでタイトル!? と思ってつい確認してしまった。プロローグに加えて、ビームとラーマがどれだけヤバい奴かという説明をするパートが用意されているのである。

 

この作品においてイギリスはインドに対して苛烈な支配を敷いている悪者なので、いくらダブル主人公でも体制側のラーマには微妙に感情移入できなさそうだなと思っていたのだが、この二人の出会いが無言のうちに協力しあって火災に巻き込まれた子供をアクロバットな方法で救出するという『良い奴』で『凄い奴』というのを一度に見せており、その後の二人に対する好感度を大いに高めたのは言うまでもない。

 

インド映画定番の歌と踊りも、この作品に関してはストーリーとも密接に絡み合っており、息を吸うように人種差別をしている英国紳士を、インドの踊り『ナートゥ』で圧倒するシーンは大変カタルシスがあったし、その後の展開にもちゃんと影響があるのでただのサービスに収まっていないのは良かった。

 

個人的には前半パートの方が好きだ。単純に盛り上がるところしかない。インターバルを挟んでの後半パートは終盤の大爆発に向けての溜めといった趣で、三時間という作品の長大さも相まって少々疲れてしまった。だがそれを堪えきった分の価値は、最後にはあった。

 

ビームとラーマは個人でもかなり強いのだが、二人合わせれば10倍……いや100倍! という理屈無用の掛け算をそのまんま見せてくれるラストバトルはやはり熱い。まるでインド神話のビームとラーマが本当に乗り移ったのではないかと思うほどの大暴れを見せ、総督府を完膚なきまでに叩き潰してしまうのは、もう全部二人だけでいいんじゃないかなと思ってしまうことうけあい。銃を強奪するって話なんかもうどうでもよくて、このまま二人でインドを開放してくれと思ってしまう。ツッコミどころは枚挙にいとまがないが、やっぱりエンターテイメントはこうじゃなくっちゃなと素直に満足できる一作であった。

 

それにしてもビーム役のN・T・ラーマ・ラオ・Jrという役者、通称がNTRJrらしい。その名前は日本ではちょっとまずいんじゃないかな……。