四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『ALIVE HOON アライブフーン』鑑賞。

予告を見た時点で”見ない映画リスト”入りになってしまう映画がある。

そこからふとしたきっかけで見たくなってしまう場合もある。

見た人からの評判は悪くないのに、壮絶な興行的失敗をしている映画。

先週観た映画もそんな作品のひとつだった。

 

『ALIVE HOON アライブフーン』

 

フーンという気の抜けた感じが客を作品から遠ざけているような気がするが

調べてみると走り屋という意味の俗語らしい。作品を見た後ならアリだと感じられた。

 

この作品、結論から言うと当たりの部類に入る。

映像と音楽の相乗効果によって引き出されるドリフトレースの迫力は素晴らしい。

ストーリーや登場人物は良く言えば王道、悪く言えば陳腐。

個人的にドリフトレースのことはよく知らなかったので

映像に集中できる分、ものすごく話を単純化したのは正解だと思う。

 

eスポーツ出身というのが今風だが、類まれなる才能を持ちながらコミュ障の主人公。

潰れかけたレースチームの娘でメカニックもできるヒロイン。

ヒロインの父親は怪我で走れなくなったベテランドライバーで

同じチームには業界では伝説のチューナーと呼ばれたメカニックはいるし

ヒロインに粉をかけてくるクソみたいなライバルや

主人公の才能を認めるやいなや勝負を仕掛けて火花を散らすチャンピオンなど

登場人物たちがお約束すぎて笑ってしまうが、一周まわってこれが良い。

 

上記の登場人物たちを見れば改めてストーリーを説明する必要はないと思う。

おおむね想像通りのストーリーが展開される。それがなかなかにアツい。

個人的にはトレーニングの描写にそこそこ尺を使っているのが好感度高く

後のレースに関する説得力は段違いに上がった。

ただeスポーツを登場人物たちがみんな舐めすぎて貶す勢いの序盤が少々ダルい。

ほとんどイジメに等しいレベルの『ゲーム野郎』扱いだが

そういう流れを主人公の実力で変えていくのがこの作品のカタルシスでもあると思う。

 

この作品もいいところばかりじゃなく、はっきり欠点と言える部分もあって

その一つは主人公の自己主張が非常に弱いところ。

内面描写や生い立ちなどの掘り下げが全く無いので感情移入がし辛いし

劇中の行動を取るのにどうしてそうしようと思ったのか?というのが分かりにくい。

特に賛否が別れるのは結末部分についてだろう。

個人的にはコミュ障の主人公が人に頼み事ができるようになった

という成長を描いた、と解釈したものの

その行動の理由についてははっきりしなかった。

まあ王道なんだから主人公の感情についても王道を当てはめていくしかないだろう。

そのためには観客側の努力が必要になる。

 

とにかくレースについては一見の価値がある。

帰りの車の運転が少々荒くなってしまう程度には感化されてしまった。

しかし興行的には失敗しているようなので映画館から消えるのも早いだろう。

惜しい作品だと思う。