マイティ・ソーとは受難の神である。
筋肉と笑いに覆い隠された喪失の物語。
肉親を失い、友人を失い、故郷を失い、仲間を失い、次は何を失うのか。
はっきり言ってソーシリーズの1作目と2作目はあまり面白くなかった。
しかしシリーズ3作目でタイカ・ワイティティ監督が就任し作品が生まれ変わった。
『マイティ・ソー:バトルロイヤル』は個人的にMCUでは上位の作品に入る。
破天荒で荒唐無稽で悲劇的なヒーロー、ソーとその仲間たちが困難に立ち向かう。
お祭り感のある熱い展開と、畳み掛けるようなギャグで大いに笑わせてもらったが
ソーの境遇を考えると若干乾いた笑いにならざるをえない。
監督が同じなので今回もその作風を踏襲している。
今回はまぎれもなく愛の物語だと思う。
まるでソーの鏡写しのような存在のヴィラン、ゴア。
演じるのはなんとクリスチャン・ベールで
冒頭で悪へと堕ちていくゴアの描写には演技力も相まって涙を禁じえない。
しかしすべてを失っても愛だけは失わないソーはまさしくヒーローであった。
ラブ&サンダーという副題に偽りなし。
しかしまあこの作品は何と言ってもギャグ。
このご時世に公開してくれたおかげで、少し気分が楽になった。
ありがたいことだ。