5話の感想に入る前に嬉しい報せが届いた。『BanG Dream! Ave Mujica』のアニメが終了した直後に開催される合同ライブ『わかれ道の、その先へ』2Daysのチケットが両日当選した! ご用意された~! 奇跡!! とは言ってもアニメの結末がそのままこのライブの内容に影響することは確実なので、場合によっては2日も申し込むんじゃなかった…みたいな感じにならないとも言い切れないのだが、合同ライブをやるんだからそこまで酷い結末にはならないと思いたい。それでもできるだけ良い状態で当日を迎えたいので、アニメを見る姿勢にも余計に力が入るというものである。
そういうわけで第5話『Facta fugis facienda petis.』。ラテン語で「あなたのしたこと」「事実は事実のまま残る」などといった意味があるようで、祥子がこれまでやってきたことがいかなるものだったのかを自身で思い知る話となっている。アバンタイトルでは前回ラストで解散を宣言したAve Mujicaによってスタッフと客(ゲスト)の間に動揺が走っている。狂乱していた睦を心配する声はともかくとして、結局一曲も演奏しなかったらしいのは色んな意味で凄すぎる。チケット代はまだしも交通費は返ってこないわけだからファンも黙っていないだろう……という心配をよそに物販は盛況らしく、人気絶頂ともいえるタイミングでの解散はファンもそう簡単に現実を受け入れることはできなさそうだ。Ave Mujicaとして出るはずだった諸々のスケジュールにも穴が空きsumimiがその埋め合わせをすることになるのだが、そのお零れに預かろうとしているのかこれ幸いとばかりににゃむが動き出した。控室で呆然とする祥子の後ろで何一つ責任を負わずさっさと帰り支度をして立ち去る海鈴は他人事すぎて逆に怖いくらいである。そしてまだステージ上から動けないでいるモーティス。初華・海鈴・にゃむの三人と違ってAve Mujicaに懸けるしかなかった祥子、そして祥子のために参加していた睦(モーティス)にとって、この解散は決定的なダメージに違いなく既に7話まで見た今となってはそこから立ち直るための話がここから始まることになる。
さっそくAve Mujicaの解散は波紋を呼んでおり、ワイドショーでも取り上げられていた。事務所のプレスリリースが載っているが、解散は福岡公演当日の9月20日で、おそらくツアーファイナルになる予定だったと思われる東京公演は10月4日となっている。解散することになったのが全国ツアー残りが2箇所だったというのは不幸中の幸いというか、それでも損害は数億……10億は行くのだろうか。それにしてもAve Mujicaのデビューが7月くらいで、その1ヶ月後に武道館で解散が9月末っていくらアニメとはいえあまりにも密度が濃すぎて時間間隔がおかしくなるぞ。
祥子のもとには事務所からの電話がひっきりなしに掛かってきているが、初華はその電話を切ってずっとここにいていいからと祥子を慰める。Ave Mujicaが解散した今となってはもはや一緒に住む理由もない……そう考えると初華こそAve Mujicaの解散を強硬に反対すべきだったと思うのだが、CRYSHIC解散の後祥子と連絡が取れなくなったときも一年くらい初華の方からアクションを起こさなかったし自発的な行動を恐れているのかだいぶ成り行き任せにしているところがあるような気がする。にゃむは暗い部屋の中でひとりスマホでAve Mujica解散報道の記事を見る。文章を読むとデビューから武道館までの期間が一ヶ月足らずだったことや、事務所の名前がWin-Wing-productionという名前であることが分かる。ものすごく意味深な寸劇をやっていたおかげでファンの間では今回の解散劇自体なにかのパフォーマンスの一部ではないかと考察されているのは、今後のAve Mujica復活の展開をしやすくなっているので上手い設定だと思う。
RiNGでは海鈴が解散の真相についてどこかの記者に突撃取材をされているがその反応は素っ気ない。本当にAve Mujicaに対しては未練も何もないと言った感じ。初華はsumimiとしての仕事でもAve Mujica解散についての質問をされてしまうがまながそれを制する。まなは本当に良い所しか描かれないので逆に心配になる。ずっとこのままでいてくれ……。このシーンの右端にいるのはバンドリシリーズの先輩バンド『Morfonica』の桐ヶ谷透子で、自前のファッションブランドを持っているという設定を活かしたファンサービスっぽい。sumimiとしての仕事とAve Mujicaの穴埋めのために前以上に忙しい毎日を過ごしているであろう初華が、ある日自分の部屋に戻ると祥子はいなくなっていた。机の上の今までありがとうという祥子からのメッセージを読んで買ってきたプリンを落とす初華。このプリン、モロゾフっぽいな……というのはどうでもよくて、祥子がいつまでも誰かの世話になるような立場に甘んじるわけもなかった。ここはまだ奈落の途中なのだから……まだ底ではない、二番底を予感させるようなナレーションで初華には悪いが今後の展開にワクワクしてしまう。
初華の家を離れた祥子は元のコールセンターの仕事に戻っていた。今は無くなっちゃったんだよね、代々木駅前のこのビル。通りすがりの同僚からあれオブリビオニスらしいよ…と噂されているのは悲しいけど笑ってしまう。なまじ顔バレしてみんなに知られているからずっとイジられ続けるのだと思うとキツすぎる。ここからAパート終わりまでの祥子視点の描写は、華やかな夢から覚めてしまった後のような虚無感があって正直かなり良かった。街にはAve Mujicaの活動をしていたときの残滓で溢れ返っていて、忘れたくても忘れさせてくれない。電車の窓の外には睦の姿がでかでかと写っている化粧品の広告、ふと他の人のスマホを見るとにゃむの動画を見ている。にゃむはAve Mujicaの開けた大穴を補填するかのようにバラエティ番組の出演を勝ち取り、Ave Mujicaの活動を過去のものとして笑いを取っている。それを避けるようにピシャリと戸を閉める祥子の心中は察するに余りある。そして行きつけの銭湯で流れるラジオからはsumimiの番組が電波に乗って流れてくる。おやsumimiとかいう安直な番組終了の挨拶!
Ave Mujicaは解散しメンバーはそれぞれの日常へ戻っていった。しかし…祥子が戻るのは何もない日常。手元には何も残っていないどころかむしろAve Mujicaを始める前よりむしろマイナスになってしまった。2度も自分の居場所を壊し、もはや何もしない方がいいと悟ったのか無気力な日々を過ごす……。そして帰るのは捨てたはずの父のいる赤羽のアパート。くしゃくしゃの紙をシンクの上に置くが、後の描写を見るにこれは燈の付箋なのだろう。捨てるどころか持って帰ってきているのがいまだに未練を抱えたままだというのがわかってしまう。未練を断ち切るはずのAve Mujicaでは結局何も変わらず、そして電話にはあの頃のような赤羽警察署からの電話が……。クソ親父何も変わってない! 引き取ってきた父親が蹲る姿を見て祥子は何を思うのか。大損害を出し全てのものから目をそむけている…まるで自分のようだと思っているのかもしれない。
そして一ヶ月の時が流れたが、Ave Mujica時代の残り香はまだ街の中に色濃く残っていた。芸能事務所では睦(モーティス)はあれからずっと引き籠もっているらしいという話をしている。祥子はともかく睦は芸能人の娘だしまだ好意的に見られているようだ。祥子のAve Mujicaを守ろうとする睦の代わりに表に出てきた人格のモーティスにとってはもはや存在意義すら失われていると言っても過言ではないのだが、それで睦が戻って来るわけでもないというのが厄介だ。Ave Mujicaを特集した雑誌も山積みになっていて、ツアーだけじゃない解散の影響は多方面に出ていて損害額を考えるだけで恐ろしい。しょせんお嬢様のバンドごっこだった……社員からはそう陰口を叩かれてすらいる始末だが、事情を知っている人間からすればそうとしか見えないだろうし、実際に迷惑をかけられてもいるし。だがそこをsumimiのまなが通りかかる。まなはずっと初華の身を案じているのだが、初華はいまだに祥子と連絡が取れていないらしい。事務所ですれ違うにゃむとも事務的な挨拶を交わすだけで、とても同じバンドをやっていたとは思えない反応に見ているこっちが辛いほどである。にゃむにとってもAve Mujicaを踏み台にした今となってはわざわざ反応するほどの相手でもないと思っているということか。
祥子は早朝から学校に通っていた。高校生になった今、まだ新聞配達をやっているわけではないと思うが早起き自体は既に慣れたものなのだろう。飛鳥山すぐ近くの都電荒川線・王子前駅乗り場から路面電車で羽丘まで通っているようだが、これはJR赤羽駅からJR王子駅まで電車で移動しているのではなく、赤羽から歩いて王子まで行っている可能性があるがこれは考えすぎだろうか……。そして学習院前で降りて富士見坂を登って羽丘へ向かい、そして下駄箱を開けると付箋が貼られている。「祥ちゃんのこと知りたい」そう書かれているのは燈からのもの。2話から付箋を張られていた形跡があるが、燈のことだからきっと毎日貼っているのだろう。事情を知っている視聴者にとってはかなり的確な嫌がらせに見えてしまうが、きっと燈にとってはそんなつもりはなくてきっと純粋な気持ちで。祥子もそれを頭では理解しているはずだが、燈からのメッセージがダメージとして蓄積していることが付箋を握りつぶすという行為にも現れている。そして祥子は誰もいない教室でひとり読書にふけるのであったが、その作品は夏目漱石の『こころ』。友人の想い人を寝取ったことで自殺させてしまった”先生”なる人物を慕う”私”の話で、最終的には先生もそれを苦に命を断ってしまうというお話らしいのだが、これは自分が燈に構われる価値もないといったような自罰的な感情の現れなのかもしれない。
花咲川では初華が海鈴に他のメンバーと連絡を取ったか訪ねてくる。だが初華が知りたいのはいまだ連絡の取れない祥子についてだというのは見え透いていた。モーティスによってメンバー全員の前で祥子目当てだったことはバラされていたので、海鈴もそれを理解しているのかそれとも本当に興味がないのかご自身で確認すればいいのではと立ち去ってしまう。何より二人はそれなりに仲が良いはずなのだからそれくらい自分でできるでしょと思われてしまうのも無理はないし、取材の記者といい本命は自分ではなく別のものであって、そういうことに嫌気が差しているのかもしれない。立ち尽くす初華と、それに気付く立希。一度バンドメンバーだと認めたならそれなりに情を持つ立希にとって、海鈴のバンド解散してしまえばほぼ他人というスタンスはあまり相容れないような気がする。
ふたたび羽丘。下校の準備する祥子の横ではRiNGでMorfonicaを見た!という話をするクラスメートがいるが興味を示すことはない。Morfonicaは祥子がバンド活動をするきっかけとなった存在で、もしかしたらその会話に混じって盛り上がっていた未来もあったのかもしれないがそうはならなかった現実がただひたすら悲しい。下校する祥子を校門前で待っていたのは黒塗りのリムジンに乗った祖父だった。Ave Mujicaとしての活動……それらを全部見ていたという祖父はツアー中止の賠償金を建て替えて祥子を実家に戻って来るように説得する。物凄い力技だ。最低でも数億の賠償はくだらないはずだがそれらをひっくるめていい勉強になっただろうで済ますのはやはり大金持ちだからというか、入り婿だったクソ父親と違って祥子は自分の血を引くこの世で唯一の存在だからなのではないだろうか。
祖父は赤羽のアパートの横につけると、三分待つから支度してきなさいと祥子に告げる。これがラピュタのドーラだったら40秒なのでこの対応もだいぶ甘いと言えるだろう。祥子の反応も非常に素直である。このとき祥子の暮らしているスペースには畳まれた布団の上にジャージが置いていあるのが見えるのだが、祥子はジャージで寝てたんだな……とここに来て無駄に赤羽生活の解像度が上がる。祥子は母親の形見の人形とトランク一個分の荷物を持って赤羽のアパートを去る。もしかしてキーボードすら持っていかないのかというのはちょっと驚いたというか、もはや音楽活動にすらなんの未練もなくなったので既に処分してしまった可能性もある。クソ親父が窓辺に立って祥子の乗りこんだ車が走り去るのを見ているのだが、今にも自殺してしまいそうな雰囲気で怖い。このままだと祥子が立ち直ったとしても父親が死んだという報せが届いて鬱に逆戻りすることすらありえるのでは。
かつて自分の住んでいた屋敷に戻ってきた祥子。祖父は祥子の母親・瑞穂に似てじゃじゃ馬だからしっかり面倒を見るようにと執事に言いつける。使用人のおばさんとも以前から顔なじみであることを伺わせ、本来ここが帰るべき場所だったという雰囲気を漂わせるあたりプロだ。ビリヤード台の並ぶ屋敷の一室(娯楽室?)にはかつて自分が弾いていたピアノが今も置かれていた。誰も触らないピアノはきっと埃を被っていたに違いなく、それを軽くなぞる祥子の指はその過ぎ去った時間を感じていたのだろう。たった一年だがあまりにも濃い一年。そして5話の間ひとことも台詞を発さなかった祥子がここで始めて喋る「私は、私が嫌いですわ」。失敗を重ね、周囲を振り回し、差し伸べられた手を振り払い、自分の力だけを頼りにしてきたはずが実際は祖父に尻拭いをしてもらっていたという事実だけが残る。まるで失言を重ねて自分から話さなくなった睦、あるいは蔑んでいたクソ父親と自分がさほど変わりなかったことに気付いてしまったのかもしれない。ただただ重い一言だった。
Bパート、月ノ森ではお嬢様学校らしく芸術鑑賞会と称して講堂で演劇を鑑賞していたが、そよだけはずっと引き籠もったまま登校してこない睦のことを気にかけている。Ave Mujicaについてスマホで検索するとモーティスの後ろには死亡だの消えただのサジェストされるのはいかにも今風でなんか笑ってしまうのだが、一回は睦に激怒したことのあるそよにとっても今の状態は他人事ではない。どこまでも悪人にはなりきれない女、長崎そよ。
にゃむがまだ電子ドラムによる練習を続けているのはまだAve Mujica復活の目があると思っているからなのか? 事務所のマネージャー袋小路さんという縁起でもない名前の人から電話が掛かってきて、舞台のオーディションを受けてほしいとプロデューサーから直接オファーがあったというのだがにゃむはそれを断ってしまう。にゃむの脳裏には睦の演技(演技じゃない)が思い浮かんでしまい、演技はまだ勉強中だと言うのだがそう言うにゃむの部屋の本棚には演技に関するものが多数並んでおり、本当に目指しているのはユーチューバーでもなくバンドでもなくマルチタレントでもなくきっと女優なのだろう……しかし睦という本物に出会ってしまったことで自分の才能に疑問を感じ、素直に行きたい方に行くことができなくなっている。今はバラエティ方面で頑張りたい……その言葉が今では虚しく聞こえる。
そして誰もいない部屋に帰ってきた初華がコーヒーを2人分用意するサイコ感満々のシーン。スマホのメッセージアプリには祥子が居なくなって以来返信はない。このシーン、ロフトにある布団が畳まれていないように見えるのだが、赤羽のアパートといい祥子は布団を引きっぱなしにせず畳むタイプの人間であることが分かるので、祥子がそのままにして部屋を出ていったとは思えない。まさかとは思うが初華が祥子のいた頃のままの状況を再現しているわけじゃないよな……怖い。
羽丘ではリムジンで送迎されるようになった祥子を燈と愛音が目撃する。本当にお嬢様だったんだとこのときようやく実感する愛音に対してそんなの前から知ってるけどと言わんばかりの燈との温度差が面白い。ここで急に豊川グループのCMを実演する愛音にびっくり。このアニメで愛音が喋るときだけ急に別の作品みたいになるので、この重い展開では数少ない癒やしだ。さっと流されるギャグっぽいシーンだがTGWはすなわち豊川グループの略称でもあることが確定する。つまり『It'sMyGO!!!!!』の最終話にあったAve Mujicaのデビュー時のポスターにあったTGW物産は豊川グループの1企業で、祥子は最初からずっと祖父の手のひらの上だったということだ。そして森みなみと豊川との浅からぬ繋がりも判明する。二人が幼馴染なのもこういうところから来ているのだろう。
RiNGでは『Ave Mujica』が始まってからようやくMyGO!!!!!の5人が勢揃いしている。楽奈は5話にして初登場と重役出勤。睦が”ギターを歌わせられない”と言ってから絶対二人は絡むだろうと予想していたがいよいよその準備が整ったという感じ。そよに対して祥子の話をする愛音のノンデリっぷりも相変わらずである。単純に興味がないのかそれとも内心苛ついているのかはわからないがそよの反応は冷たい。誰も反応してくれない中で唯一楽奈が興味を示しちょっとうれしそうな愛音。立希は自販機でまたコーヒーを買っているのだが、『It'sMyGO!!!!!』で海鈴の前で買っていたものと同じである……EDでの海鈴パートで空き缶だらけになっていたのを見た後では少し意味合いが変わってくるな。
そしてその帰り道。今日も立希が燈を家の前まで送っているところに、燈が幸せってなんだろうと呟く。『It'sMyGO!!!!!』の最終話で祥子に投げかけられた「お幸せに」という言葉がずっと引っかかっていたのだろう。だがそれを自分に投げかけられら質問だと思ったのか、立希は私は今(燈とバンドできて)幸せだけど…と答える。燈はこれを見てバンドをしていると幸せなんだと解釈したのだと思う。つまりバンドをしていない今の祥子は幸せじゃないのかもしれない……と。そう考えると立希の答えには結構な責任がある。だが自己肯定感の低い立希が自分は幸せだと言えるようになったのは良いことには違いない。照れくさかったのか「じゃ!」と言って立ち去る立希はその手の動きも相まってとても女子高生らしくない男子中学生レベルで、『Ave Mujica』が始まってから気遣いの鬼として上がっていた株が一瞬で暴落してしまうのも立希らしい。
その夜、祥子に向けた付箋を書く燈が思い浮かべたのはかつてCRYSHIC時代に祥子が自分の家を訪れたときのこと。二人はベランダで天体観測をし、祥子は5人でCRYSHICを出来ることの幸せを噛みしめる。当時母親を失って失意の状態だった祥子がここまで言えるようになれたのは本当にCRYSHICの活動が楽しかったに違いない。だがよく考えると初華と星空を見たことや虫取りをした経験が、燈との交流に生かされているんだなと気付いた。ア・テンポノートの表紙の虫が大丈夫だったのは幼い頃初華と虫取りした経験のおかげだったわけだが、それだけに祥子の初華に対する扱いの軽さ?にはちょっと気になってしまう。
そして翌日登校時に付箋を祥子の下駄箱に貼り付ける燈。祥子は早朝登校だから下校時間までずっと貼ってあるわけだ。そして時間は経ち放課後。下駄箱の中視点から時間経過を見ることになるのは新鮮な体験だ。そして祥子は付箋に書かれていた「祥ちゃんは幸せ?」の文字のを見てついに限界を迎える。無自覚とはいえ自尊心の崩壊した祥子にこれはキツイ。何なら自分が言われてもキツいと思う。燈は知る由もないが、今の祥子にこれは駄目だ……。涙がこぼれ落ち、叩きつけるように下駄箱を閉める祥子に気が付いた燈はぐちゃぐちゃになった「もうやめて」と書き殴られた付箋を見て燈は走り出す。取り返しのつかないことをしてしまったと理解した燈は上履きのまま走り出すのだが、顔面から地面にダイブ。見返すと思った以上にやばい突っ込み方をしてる。しかしそれを見て走り出せるのが千早愛音という女。中学校三年間リレーでアンカーだったという謎の個人情報を知らせながら祥子のリムジンに向かって走る! なんというか適度に女子高生のスケール感を思い出させてくれるのが愛音っぽいというか、Ave Mujicaで大きな世界を見せられた後だと妙に安心感がある。発車前のリムジンまでたどり着いた愛音は一端運転手に止められるが友達ですという言葉を聞いて運転手は下がってくれる。粋な計らいだ。それを見て!?って反応する祥子にはちょっと笑った。そりゃそうだ。燈ならともかく愛音は友達の友達みたいなもんだし。車にちゃっかり乗り込む愛音に追いついてくる燈はやはり短い距離にも関わらず肩で息をしていて相変わらず体力がない。車が祥子の家に向かい始めるもののしばらく会話ができそうにない燈を察してアホみたいな感想を言う愛音。祥子の家を見た感想も貴族じゃん!というあまりにも空気を読まない感じで逆に助かる。
祥子の屋敷に入った燈は案内を無視して別の部屋に入る。そこはかつて祥子が即興で曲を作って”人間になりたいうた”を歌ったあのピアノが置いてある部屋。以前この屋敷を訪れたときの思い出が燈をそうさせたのだろう。かつてクソ親父を追って祥子が持っていった母親の形見の人形も、今ではまた元の場所に戻ってきている。在りし日の幸せだった頃の思い出が蘇ってきた燈は、祥子にバンドやろう!と思わず口にするのであった。それはかつて同じ場所で祥子に言われたことだった……。
EDを挟んでCパート。検索のサジェストを見て睦を心配したのかそよは睦の家を訪れる。中に入ったそよは玄関をきょろきょろするのだが、もしかしたら自分の住んでいるタワマン最上階のような生活感の少ない感じにある種の共感を覚えたのかもしれない。両親がほとんど帰ってこなさそうなのも共通しているし。そして使用人に睦の部屋の前まで案内されたそよは部屋の中から聞こえる会話に耳を立てる。そしてドアを開けるとぬいぐるみは床に散らばりカーテンは千切られ本は散乱しているという有り様。ベッドの上では睦が電話を描けている。それにそっと近づくが受話器に見えたそれはバレエに使うトゥシューズ。そういえば習い事をしてると言ってた記憶があるけどいつの話だったかな……。ベッドの上にはギターが置かれ、それをモーティスが愛おしそうに撫でている。ぬいぐるみを踏んづけてすっ転んだそよにモーティスは気付いて振り返るのだが、モーティスは未だ眠ったままの睦を起こしてほしいとそよに頼むのであった。
4話で解散したときはちょっと話が駆け足に感じられてうーんという感じだったのだが、この5話は解散した後の空虚な感じが表現されていて非常に良かった。特に元の生活に戻った祥子を淡々と描くパートは今作でも出色のエピソードだと思う。今回は台詞も少ないしそんなに長くならないだろうと思っていたのだが、気がつけば1万字近くなってしまった。台詞が少ない分絵で表現されているところが多く、それだけ自分で読み解かなっければいけなかったので非常に疲れたが面白かったのでOK。しばらくはMyGO!!!!!との絡みが続くというかむしろもう一度Ave Mujicaをやる理由がそもそも無くなった気がするので、どうやってまた再結成まで持っていくのかというが非常に楽しみである。7話まではCRYSHIC編が続くのでまだ分からないのだが。