四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

巷で話題になっている『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』

まあ理由はこの際なんでもいい。ゲッターロボに興味を持ってくれる人が増えるチャンスだ! 推しの子の主題歌『アイドル』と『STORM』のマッシュアップから火が付いたわけだが、これが『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ(通称ネオゲ)』の主題歌であったことは非常に都合がいい。なぜならこの作品が初めてゲッターに触れる人にも安心な、最もゲッターロボの入門編として相応しい作品だからだ。1話30分の全4話構成という手軽さ、そしてなにより理解不能な展開がほとんど無いことに尽きる。

 

この作品の前後にあたる『真(チェンジ)ゲッターロボ 世界最後の日(通称チェンゲ)』と『新ゲッターロボ』はシリーズとして繋がりは無い独立した作品ではあるものの、とにかく素人にはオススメしにくい作品なのだ。ゲッターロボの原作者である故・石川賢の作品やこれまでのゲッターロボのアニメに目を通していても何が起こっているのか十分に説明できないくらいのストーリーなので、理解するためにはゲッター線の意思に身を委ねる必要があるのだが、その姿勢を強要する時点で既に初心者向けとは言えない……。

 

とりあえずネオゲの内容を見ていくと、まず冒頭の初代ゲッターチームの武蔵が駆るゲッターロボとメカザウルス軍団との戦いが素晴らしい。いきなりテンション爆上げである。大気改造兵器によって地上進出を目論む恐竜帝国と、それを阻止せんがために孤軍奮闘する武蔵。その間に真ゲッターロボを起動させようとする早乙女研究所。しかしさすがに多勢に無勢、満身創痍になったゲッターロボで武蔵が最後に取った行動とは……? 武蔵はあらゆる媒体で死んでしまう運命にあるキャラなのだが、この作品の武蔵の最期が一番カッコいいと思う。わりとしょっぱい最期が多い中で、漫画版ゲッターロボの展開に最も近い多数の敵を巻き込んで自爆する。この一連のシークエンスはBGMの良さも相まって何度も何度も見返してしまう。チェンゲという伝説を引き継ぎつつも、新たな伝説の始まりに相応しいプロローグだ。

 

そしてOP。2021年にリメイクされた『STORM2021』も悪くないのだが、やはりオリジナル版が最高だ。全盛期の水木一郎影山ヒロノブのタッグ! シャウトがあまりにも違いすぎるのだ。OP映像も歌詞そのままのことが起こっていて、そのことに気が付いたときにはついニヤけてしまうだろう。真ゲッターロボとネオゲッターロボが殴り合いをしているが、本編では一切戦わない。昔懐かしい東映まんがまつり的なノリだが、本編も似たようなものだ。

 

本編は恐竜帝国との戦いに生き残ったゲッターチームの神隼人が、新規で作ったネオゲッターロボパイロットとして選んだ一文字號が橘翔・大道凱とともに新たなゲッターチームを結成し、復活した恐竜帝国と戦うというシンプルな筋書き。東映アニメ版に出ていたテキサスマックとジャック兄妹も登場しており、ハッタリの効いた必殺武器はただのネタ要員では終わらない魅力がある。キャラクターに関しては流石に短い尺の中では掘り下げが十分とは言えないが、ベースを『漫画版ゲッターロボ號』としつつも『漫画版ゲッターロボゲッターロボG』からネタを拾いつつテンポよくまとめ上げているため非常に明快なストーリーになっている。他のOVAシリーズ、特にチェンゲは石川賢漫画全般のネタを網羅しており、非常にマニアックだ。まあ號がベースという点においては、チェンゲとネオゲはある種血を分け合った兄弟みたいなもんである。

 

というかゲッターロボアークのときも思ったが、本音を言うなら漫画版號のアニメが見たかった。世界中のスーパーロボット軍団の戦いが描かれるアラスカ戦線、そして漫画史上空前絶後の結末。真ゲッターロボの悪魔的強さ。それらの展開を超高速ですっ飛ばしたのがネオゲなのだが、ネオゲにしかない魅力もまた存在する。それは”虚無”らないということなのだ。ゲッターロボ石川賢の『虚無戦記』『魔獣戦線』などと並べて語られることが多く、風呂敷を広げきってからぶん投げるオチは”虚無った”と言われてよく語り草になっているのだが、このネオゲは虚無らない!

 

進化を促すエネルギーと言われているゲッター線を扱った物語であるゲッターロボ・サーガは、作者の死によって事実上虚無ってしまったのだが、このネオゲッターロボはゲッター線に身を委ねることなく大団円を迎える。これはゲッター史上でも類を見ないことである。そういった結末もまた、入門編として相応しいと考える理由のひとつである。上級者目線だとゲッターにしては小さくまとまりすぎだろ!と考える向きもあるらしいのだが、ネオゲで物足りなくなったらチェンゲや新ゲッターを見ればいいと思うし、漫画版に手を出すのも有りだ。特に漫画版ゲッターロボ號は一度読んだら忘れられない作品になるはずだ。きっかけは何だっていい。ゲッター沼に沈め。