四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『明日ちゃんのセーラー服』聖地巡礼・自由学園明日館へ。

去る5月3日、午前中に新宿で映画を観た帰りに前から行こうと思っていた『自由学園 明日館(みょうにちかん)』にようやく行くことができた。平日はだいたい見学可能なのだが、休日は見学できるのが月に一日だけに限られていて、なかなかタイミングが合わなかった。だがゴールデンウィーク中は月に一度の見学可能日とは別に一日だけ開いているというのが事前の調べで分かっていたので、ここの見学に合わせるために敢えて普段行くことのない新宿で映画を観る用事を作ったのだった。

 

東京都豊島区西池袋、サンシャインシティ側とは反対のJR池袋駅西口から目白方向に歩いて5~10分ほどのところある『自由学園 明日館』。本当にこの先に目的の場所があるのだろうか?とちょっと不安になる住宅地の間を抜けていった先にひっそりと佇んでいた。

 

 

見学料は大人500円。中学生以下は無料。喫茶付き見学という800円のプランもあり、二階にあるかつての食堂でお茶と焼き菓子をいただくことができるのだが、待ち時間がかなり長くなりそうということで今回は見送ることにした。そして連休中唯一の見学可能日というだけあって、思ったより人が多くじっくり写真撮影するというのは難しかった。変に他の用事など作らず朝一番に開いた直後に訪れるべきであったと反省。

 

建物の中は土足でそのまま入ることができる。施設の大きさとしては学校というより少し大きめの幼稚園といったスケール感で、大人が20~30人もいれば狭く感じられる程度である。幾何学模様的な造りの窓枠が特徴的で、建物中央のホールにある窓はその中でもとりわけ印象的でこの明日館の象徴とも言える存在だ。かつてはこの空間に女学生たちが集まり勉学に励んでいたという。そんな在りし日の風景に思いを馳せずにはいられない空気がある。

 

 

自由学園の設立は1921年。当時の帝国ホテル新館の設計のために日本を訪れていたフランク・ロイド・ライトおよびその弟子であった遠藤新による設計は今でも色褪せないユニークな個性を放っている。しかしすぐに手狭になったのかほどなくして移転計画が立ち上がり、1934年には現在の自由学園がある東久留米に全学科移転したようである。それ以降池袋に残された校舎は明日館と呼ばれるようになり、卒業生の社会活動の拠点として使われてきたとのこと。つまり学校として使われた期間はそれほど長くなかったらしい。

 

1997年に重要文化財に指定されたのち、1999年から老朽化した校舎を全面的に改修工事を行い、竣工当時の姿にできるだけ近い形に復元され、現在は見学だけではなく各施設の貸出を行っており、撮影利用や結婚式場として使わせてもらうこともできる。結婚願望はないけどここで結婚式なんて一生の思い出になると思う。羨ましいことだ。それに限らず何かの催しをやりたい場合の候補地としては申し分ないだろう。

 

 

車がようやく一台通れるくらいの道路を挟んで反対側に講堂がある。二階席もあり。一介には大きな暖炉があるが、ここに限らず明日館の各部屋にも暖炉がそれぞれ設置されている。講堂の出入り口すぐ横の池にオタマジャクシがたくさん泳いでいて、あまりに久しぶりに見たものだからこの生き物なんだっけ?みたいな不思議な気持ちになった。

 

また明日館の敷地内にはJMショップという売店があり、記念品や生活雑貨などを購入することもできる。館内に置かれているものと同型の椅子も売られており、お値段なんと8万円。結構するなぁ。やはりというか特徴的な窓のデザインがあしらわれたグッズも多い。

 

 

そして今回のメインである聖地巡礼。漫画『明日ちゃんのセーラー服』において52話~66話(単行本9巻からこれから出る予定の12巻)の間、お月見会という短期合宿の宿泊施設のモデルになったのが、自由学園明日館である。巻末にもそう書いてある。漫画では白岩高原という場所の一角にある保養地といった風情だったが、現実には池袋の街中である。

 

当初女学園として設立された自由学園の経緯は、明日ちゃんの通うお嬢様学校であるところの蝋梅学園の生徒が使う施設としてもピッタリの雰囲気であり、よくもまあこの施設を舞台として使おうと考えたものだ。しかも名前も”明日”だし。それとも名前が先にあってここを使おうと決めたのだろうか? いい意味で妄想が捗る場所であることは間違いない。

 

9巻72P

11巻27P

9巻145P

11巻51P

©博/集英社

 

中央のホールは象徴的な場所だけあって重要な会話シーンでよく出てくる。明日ちゃんと千嵐部長、明日ちゃんと苗代さん、木崎さんと生静が演奏練習しているのもここだ。部屋の片隅には実際にピアノも置かれている。

 

ホールから階段で上がったところにある食堂は劇中で龍守さんが勉強していたり、クラスメートが集まって勉強しているシーンで使われている部屋だというのは分かっているのだが、今回は混雑につき入れなかったので写真は無い。無念だ。

 

それとは別に毎月第三金曜日は夜間見学も可能となっていて、昼とは別に飲酒も可能とか。煌々と明かりの灯った明日館は、中からも外からも昼とはまた違った姿が見られるに違いない。聖地巡礼関係なくまた来たいな、そう思わせられる魅力の詰まった場所であった。