四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『Do It Your Self!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』聖地巡礼(後編) 新潟・燕三条

 

五十嵐川新潟県三条市を流れ、信濃川へと接続する支流のひとつ。”いがらし”ではなく”いからし”だと知ったのは家に帰ってからだった。DIYアニメではすてっぷ①の冒頭、早朝の一新橋付近の風景が映し出されるシーンが印象的だ。他にもすてっぷ⑩でDIY部が土手に腰掛けてカネギのフルーツサンドや笹団子を食べるシーン、すてっぷ⑫でたくみんがジョブ子の乗った飛行機を見上げるシーンなどでこの付近の風景が使われている。

 

OPでDIY部が夕暮れの土手の上を並んで歩くシーンもこの辺りだ。後ろにあるビルが目印になっているおかげではっきりと分かるのだが、自分がこの前を通ったときは廃材を運ぶトラックが止まっていて、改装か取り壊しかは分からないが中で作業をしていた。もしかしたらこのビルがなくなってしまい、アニメと同じ風景が見られなくなるのもそう遠い話ではないのかもしれないと思い、少し切なくなった。

 

この辺を散策していたときは午前10時を過ぎ、人や車の交通も増えてきた。自分以外にも一人で周囲ウロウロしている男性の姿も見受けられる。多分、ご同類なんだろうな。特に言葉を交わすこともないが、確かにそう感じられた。いやだって不自然すぎるし。

 


TREEが開店する11時までの間、商店街を歩いてそれぞれの店に置かれているスタンディ(立て看板)をカメラに収めていた。キャンペーンに参加している全24店舗を、全6種類のスタンディが週替りで回っているらしい。まず最初にしーを寝具屋のワタソさんの店の中に発見する。スタンプをもらうついでに挨拶しながら中にいくが、一人の男が朝一で寝具屋に何の用があるというのか。店主に許可を取って写真を取らせてもらい、どこから来たのかと聞かれてちょっとした世間話を交わして店を後にする。快く迎え入れてくれるのはいいのだが、何の用もないのに店に入るのはこちらとしてはやっぱりちょっと気が引けるなぁ……。

 

次に和菓子屋のかつぼ屋さんの店先にぷりんがいた。せっかくなので店に入り、美味しいと評判のいちご大福を買って店を後にする。きもの屋の結城屋さんの前にたくみん、福顔酒造さんの店先にジョブ子、シューズショップ・イトーさんの前にくれい(部長)がいた。何も買わなくてスミマセンとついつい謝ってしまうことが度々あったが、わざわざ遠くから来て三条市を見ていってくれるだけで嬉しいと言ってくれたのは救いだった。

 

 

それにしてもせるふがどこにもいなくないか……? そう思って頑張って探したのだが最終的には諦めてしまった。だが後日TREEの隣にあるieスタジオという建物の中にあったらしいことが判明した。外に出しておいてくれ……。

 

その後カネギフルーツの隣にあるむじん商店という無人販売所に、DIYとのコラボ商品が置いてあったのでお土産として購入した。鉄珈琲、鉄饅頭、鉄アイスなどが売っていたのだが、鉄アイスは持ち歩いているうちに溶けてまいそうなのでちょっと無理だったので、鉄饅頭と以前ポップアップストアで一度買っている鉄珈琲を買った。

 

 

 

 

午前11時近くなりTREEに向かうと、開店を待つ人が何人か集まっていた。この時間になるとスタンプラリー目的と思われる人たちが商店街を行き交っていた。スタンプラリーの台紙はまずここで貰うんだよ、みたいな話をしていた家族連れもいて驚いたのだが、そういえば新潟ではDIYのアニメを日曜の朝にやっていたのだ。プリキュア・ライダー・戦隊・そしてDIYという順番だったはず。それなら家族でDIYを見ていてもなんら不思議ではないのか……。

 

 

TREEの受付でスタンプが6個集まった台紙を見せると、色紙は今切れているので後日郵送になると最初に断りを入れたうえで住所と名前を書くことになった。思ったより作品が人気みたいで嬉しいですよとこちらが言うと受付の女性もに笑っていた。TREEの社長が今回のイベントの発起人だけあって、DIYアニメのグッズがカウンターの上に並んでいる。許可を取って写真を取らせてもらいつつ、食事のために建物の奥へと進む。

 

アニメのすてっぷ⑫でツリーハウスが完成した後に用意された食事のひとつが、ここTREEのハンバーガーとそっくりなのだ。年代物の建物の中にキャンプ場を模したような内装で、店の中にはテントが張ってありテーブル席はアウトドア用の折り畳み椅子とテーブルという一風変わった店だ。ファストフードではなくいわゆるグルメバーガーだけあって多少値が張るのだが相応に美味い。

 


食事を済ませると12時を回っていた。そろそろ一ノ木戸商店街から離れ、次は北三条駅から西にある八幡公園を目指す。行くときの道はよく分からなくなったので、地図を見ると弥彦線の高架をまず目指し、その下の道を行くのが一番簡単に思えた。途中駅の近くを通り、ステージえんがわの中を確認したが、スパイス研究所はめちゃくちゃに混雑していた。まあ行くのは何も今でなくてもいい。そのまま線路下に沿って歩いていくと、やがて八幡公園が見えてくる。

 

八幡公園はアニメのすてっぷ④で、幼少期のせるふとぷりんの思い出の場所として登場した。すてっぷ⑧でカネギフルーツに寄ったあと、雨宿りしながらツリーハウスのイメージ図を広げていたのも多分ここで間違いないと思う。神社に隣接している、遊具が周囲を囲んでいる公園である。おっさんが一人でうろついているのはちょっと怪しく見えるのだが、アニメ放送以降はそういう人が多分増えたと思うので、近所の親子連れが在らぬ心配をしていないことを願うしかない。

 

 

八幡公園を後にして北三条駅まで戻ってくる。現在12時30分を少し回ったところ。天気予報を確認すると明日の新潟全域はどうやら一日雨らしい。今日しかできないことは今日中にやったほうが良さそうだなと思い、タクシーに乗り込んだ。向かうのは大崎山公園だ。地図を見ると北三条駅から大崎山公園までは、一ノ木戸商店街までの距離のだいたい三倍程度。一ノ木戸商店街までは15分だからその三倍、いや山を登るから多めに見積もって一時間くらいか。最初は徒歩で行こうと思ったが、駅前に停まっていたタクシーを見て考えが変わった。

 

タクシーの運転手にそんなところに何しに行くんですかと驚かれる。そりゃそうだ。本来大崎山公園は野外のスポーツセンターであり、今は二月で完全なるオフシーズン。行こうとするのはよっぽどのもの好きしかいないだろう。DIYアニメについて説明すると、日の丸タクシーが今コラボしてるヤツ…とようやく納得してもらえた。アニメの聖地巡礼という行為にはまだまだ馴染みがないみたいだが、最近タクシーの利用者がかなり増えているという実感はあるようだった。

 

地元民しか分からないような目立たない大崎山公園の入り口を抜け、タクシーが狭い山道を登っていく。街中には雪はほとんどなかったが、山の中に入るとまだまだ雪が残っている。初見で車で来るのは止めて正解だったなと思いながら、いくつもの急カーブのある山道を進んでいくとやがて山頂の広場が見えてきた。運転手の好意で少しの間タクシーを待ってもらい大崎山公園を散策する。写真を撮るんでしょ? 待ってますよ! とすっかりこちらの目的を理解している。ありがたいことだ。

 

 

山頂はまだ10cm程度の雪が積もっていたので、ようやくスノーブーツが役に立った。途中公園の管理者とすれ違って挨拶しながら、雪を踏みしめつつ年季の入った展望台へ向かう。山頂の広場には遊具などが置かれていたが、当然ながら自分以外は誰もいない。今の時期はちょっと寂しい場所だったが撮影するには逆に好都合だと言えた。

 

二階建ての展望台からの眺めは、すてっぷ①の冒頭やEDでせるふとぷりんが手を繋いで見ている景色ときっと同じなんだろうなと思うとこみ上げてくるものがある。誰も遊んでいないブランコも、幼い日にここに連れられてきた二人が、仲良く並んで遊んでいたのかもしれない……そんな想像をせずにはいられなかった。満足してタクシーに戻る。帰りはオマケしてくれたので往復4000円で済んだ。

 

 

北三条駅に戻ると時計は二時半に差し掛かろうとしているところだった。しかしここで突然の雨。あらためて予報を確認してみるがしばらく止む気配はなさそうだ。ホテルのチェックインは五時の予定だったが、予定を切り上げてホテルに行ってしまおうか……そんなことを考えた。駅で三十分待って弥彦線に乗り燕三条駅へ。コインロッカーから荷物を取り出し予約したホテルにチェックイン。少し休憩した後ホテルの近くにある燕三条地場産業振興センターへ行くことにした。

 

ここの物産館は広大な敷地を誇っており、お土産を探すのに最適らしいのだが……なんと2月20日まで改修工事のため休業中で、臨時で小さな売店をやっているだけであった。他の客が本当はこれの10倍はあると話しているのが聞こえたので、余計に残念な気持ちになった。駅構内にある燕三条Wingのほうがここより何倍も広いくらいだ。DIYコラボの鉄アイスがここでも売っていたので、三条の定番土産らしい六角凧サブレと一緒に購入した。

 

 

それ以外にもう一つ探したいものがあった。せるふのお母さんが晩酌で呑んでいる日本酒『緑川』である。燕三条ではなくて魚沼の酒なのだが、置いてあるのだろうか? そう思って近くの酒屋やイオンなどを覗いてみるも収穫ゼロ。肩を落として酒屋を出ると、眼の前にあったココイチの看板にカレーラーメンの文字が踊っているのが見えた。そういえばアニメのすてっぷ⑪の結愛家の夕食はカレーラーメンだった。せっかくだからここで食べていくか……。

 

ホテルに戻ってからひとっ風呂浴びた後、今日買ったものを机の上に並べた。するとありふれたつまらないビジホの一室が、途端に華やかなパーティー会場に早変わりするではないか。全部食べるのは無理だから残った分は明日の朝食に回すとして、鉄饅頭・鉄珈琲・鉄アイス・フルーツサンドにイチゴ大福と順番に手をつけていく。

 

 

釘の味がするという鉄食品は自分の味覚ではよくわからなかった。ちなみにアイスは時間が経って溶け切っていたので余計にわからなかった。この鉄食品のせいで翌朝のトイレが凄まじいことになったが、それは別の話である。フルーツサンドはたっぷりの生クリームがやはり美味い。あまり期待していなかったマンゴーの瑞々しさは半端ではなく、噛むたびに果汁が口いっぱいに溢れてきて極上の甘さで満たされる。イチゴ大福はあと10個くらい買ってもよかったと後悔するくらいの美味であった

 

翌日、朝から結構強めの雨が降っていたので帰ることにした。本当ならステージえんがわ、三条鍛冶道場、新発田城跡、弥彦山、野積海水浴場など行きたいところはまだまだあったのだが、心残りがあるくらいのほうがまた来る気にになるだろうと思って今回は見送る。たった一日だけだがDIYの世界にどっぷり浸かって楽しかった。今度来るときはもう少し暖かくなってからにしたいものだ。