四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記33『愛の書・完結編』

 

渦中のマスカルスから離れ、ディンヤ・バリュへの報告のためにリフテンへと戻ってきた。最初はこの街に長居することもないだろうと思っていたのだが、なんだかんだ言って治安の悪いこの雑然とした街にも慣れてきてしまったらしい。そろそろここに拠点を置いてもいい頃だろう。そう思って住居の購入許可を得るため、首長から仕事の斡旋を受けた。

 

 

街に広まるスクゥーマ(麻薬のようなもの)の売人を突き止めろということで、リフテン港の倉庫に侵入し、襲いかかってきた連中を叩きのめした結果得られた情報から、クラッグスレインと呼ばれるリフテンから北にある洞窟にスクゥーマの運び屋が滞在していることを突き止めたのだ。

 

 

洞窟内では闘犬が行われており、賭博に興じるならず者たちの巣窟であった。ギャンブラーたちの抵抗は大したことはなかったのだが、闘犬の胴元と思われる屠殺人の力は恐るべきものであり、振り下ろされる槌の一撃は俺の鎧でも受け止めきれるものではなかった。幸い猛者といえるほどの男はその一人だけだったので、リディアとの二人がかりでなんとか息の根を止める。一体この中の誰がスクゥーマの運び屋だったのかは分からないが、全員死んでしまった後ではもうどうでもいいことだろう……。

 

 

リフテンに戻り首長のライラ・ロー・ギバーに報告すると、今回の仕事の他にもリフテンの住人への助力をしたという評判も耳に届いていたらしく、そのまま従士に叙されることとなった。ただし従士として認められるにはリフテンに居住していなければならないとのこと。すなわち家屋を所有していることが条件だ。そのまま当初の目的通り8000ゴールドでハニーサイドと呼ばれる空き家を購入した。

 

 

ハニーサイドはホワイトランのブリーズホームと同じくらいの広さだが、向こうと違って二階が無い代わりに地下室があり、城壁の外へ直接出ることもできるという、要塞の守備は一体どうなっているんだ? という造りなのだが、便利といえば便利なので許容範囲だろう。そして家には首長から遣わされて俺の私兵となった、イオナという名のノルドの女が留守番として滞在することになった。

 

 

こうしてリフテンに拠点を置き、俺はマーラ聖堂の司祭ディンヤ・バリュに、マスカルスのカルセルモに関する一部始終を報告した。彼女は大層喜んでいたのだが、マーラのお告げはまだ終わっていないらしい。彼女にマーラのアミュレットを渡される。そのアミュレットを身につけることで、マーラの助けを求める最後の人の場所に導かれるのだという。

 

アミュレットを首にかけると、確かに微かな気配を感じた。だがそれは遠い。すごく遠い場所だ。俺は聖堂を出ると、アミュレットが指し示す方に向かって歩き始めた。

 

 

アミュレットの導きに従ってたどり着いたのはホワイトランの西、グジュカールの記念碑という塔が立つ古戦場である。近づくほどに、マーラのアミュレットからより強い気配を感じる。辺りを見渡すと、うっすらと人の影が見えた。いくらここが古戦場だからといっても、100年は昔の話だと聞いている。まさかあの亡霊がマーラの助けを求める最後の人だというのか?

 

 

俺は亡霊に恐る恐る話しかけてみたのだが、その亡霊は思ったより好意的で話が通じる相手だった。ルキという女の亡霊は、かつてここで全滅したグジュカールという民族の戦士の一人であるフェンリグという男を探しているのだという。

 

フェンリグは彼女の夫であり、ルキはグジュカール壊滅の報せを聞いて心配になってここまでやってきたのだが、結局見つけることはできなかったらしい。そして多分、そのまま力尽きてしまったのだと思うが、彼女自身は自分が既に死んでいることに気がついていないようだ……。

 

ここで俺が為すべきことはフェンリグを探すことだろう。これもマーラの使徒ならば当然のことだ。俺は彼女にそう告げてフェンリグを探し始めた。アミュレットが反応しており、そう遠い場所ではないはずだという確信があった。

 

 

塔から離れた古い墓地に一人の亡霊の姿があった。その亡霊は明日ここで戦争があるのだが、この野営地は見晴らしがいいので敵から狙われやすく気に入らないとうわ言のように話している。自分が死んだことを理解していないのだ。まさかこの男がフェンリグなのか……?

 

ルキの名前を出すと亡霊が反応した。あの塔の下にいると教えると、わざわざ家からこんなところにやってきたのは、さぞかし重要な事に違いないと言い、ついていくから連れて行ってくれとせがまれた。

 

 

夕暮のグジュカールの記念碑の下で、ルキとフェンリグはついに感動の再会を果たした。ふたりとも自分が既に死んでいることを認識しておらず、今の状況に混乱しているようなのだが、お互いを想う愛だけは今も朽ちずに消えていなかった。二人は永遠の愛を誓い合うと身体が浮かびあがり、天に昇っていった。マーラの愛は亡霊にすら及んでいる。自分にも、信仰心が芽生えつつあることが確かに感じられた出来事だった。

 

 

リフテンのマーラ聖堂に戻ると、ディンヤ・バリュは歓喜に打ち震えた。マーラの助けを求める恋人たちを救ったことで、俺はマーラの祝福を得た。何かに見守られているという安堵感があった。これが神……。

 

 

じんわりとマーラのぬくもりを感じていると、ディンヤ・バリュに紙の束を渡された。読んでみると寄付を募る文書のようだ。いくらマーラが素晴らしい神だと言っても先立つものがなければ信仰を広める活動もできない。世知辛い話だ。俺は喜んでリフテンの人々にマーラの恵みを配って回ることにした。

 

 

反応は人それぞれだ。快く受け取ってくれる者もいれば、心無い言葉をぶつけてくる者もいる。特にダークエルフたちは九大神ではなくデイドラを信仰しているせいで特に辛辣である。個人的にデイドラは神と呼ぶにははた迷惑すぎるので信仰しようとは思えないが、マーラは有益だし信仰する価値がある。ほら、お前たちには見えないのかこのマーラの慈愛が! 俺は実際目にしたんだ! どうして信じてくれないんだ!

 

そんな訴えも彼らには無意味のようだ。しかしあのエランドゥルもダークエルフだったがマーラに改宗したのだから、ありえないことではないはず。これからも継続的で熱心な勧誘が必要だろう。

 

 

文書を配り終わりリフテンの街を歩いていると、イヴァルステッドで面倒を見たファストレッドがバシアヌスと共に駆け落ちしてきていた。無職だったバシアヌスも今は鍛冶手伝いとして働いているらしい。喜ばしいことだ。理想と現実の差を味わったためか、ファストレッドの顔は決して満足しているとは言い難かったが、二人の関係がこれからも末永く続くことを祈るばかりである。

 

 

【続く】