四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記24『シルバーハンド』

 

今日はロリクステッドのすぐ側にある、大蛇の崖要塞というところに来ていた。同胞団にホワイトランの馬宿の主人スカルヴァーが攫われたという報せが届き、ちょうどそのとき手の空いていた俺に仕事が回ってきたというわけだ。最近は相変わらず鍛冶・錬金・付呪の練習にもっぱら時間を割いており、日々成長の喜びを感じていたのだが、わが街の一大事となれば行かないわけにもいかなかった。

 

 

スカルヴァーを攫ったのはフォースウォーンと呼ばれる、マルカルス周辺を根城にしている原住民のブレトンたち……つまり自分と同種族だったのだが、どんなに大義があろうとも俺とってはもはや山賊と見分けがつかないし、なぜホワイトランから人を攫ったのかもどうでもよかった。野蛮な相手には容赦する必要はあるまい。

 

 

スカルヴァーをホワイトランに連れて帰る頃にはもう夜が明けていた。一応ジョルバスクルに報告へ行くと、スコールが呼んでいる。また割に合わない仕事なんじゃないかと少し身構えたが、どうやら今回は違うようだ。

 

夜、誰もが寝静まったような時間帯に”アンダーフォージ”という場所へ来いというのがスコールからの伝言だった。アンダーフォージというのは鍛冶場であるスカイフォージの直下にある、秘密の場所のことらしい。昼間に行ってみると、確かに壁に切れ目があって何かの入り口になっていそうなのだが、入り方が分からないので素直に夜を待つことにする。

 

 

深夜になってからアンダーフォージに向かうとスコールが待ち構えていた。そしてどうやったのか知らないが石の扉を開けると暗い空間の中へと俺をいざなう。入って最初は夜目が利かずよく分からなかったのだが、隙間からわずかに差し込む月明かりに獣の影が浮かび上がってくる。四足のものではなく、ダストマンの石塚でファルカスが見せたあの姿と同じだ! だがスコールはその獣人(ウェアウルフ)は”狩猟の女神”アエラが変身したものだと落ち着き払って言った。

 

 

そこで今回呼び出された理由について理解した。彼らは俺を……獣人にしようとしているのか? 導き手のコドラクが獣人を治したいと思っていることは彼らも知っているようだが、コドラク以外の同胞団幹部はそのことが気に食わないらしく、最近仕事で功績を上げている俺を無許可で新たに仲間入りさせたいらしい。

 

スコールは俺に獣人になりたいかどうか尋ねてきたが、この秘密を知ってノーと言える度胸は無かったし、何よりアエラやファルカスは獣のまま理性を保っており、それほど邪悪な力には思えなかった。部屋の中央の大きな石の盃に、アエラが自ら傷つけた場所から血が注がれる。俺はひとくち、その血を掬って飲むと意識を失った……。

 

 

目覚めると俺はアンダーフォージの外にいた。そして獣へと姿を変えていた。自分の身体なのに、自分の身体ではないかのようだ。沸き起こる破壊衝動が抑えられない。今誰かに出会ったら、有無を言わせずバラバラの惨殺死体へと変えてしまいかねない。なんとか意識をジョルバスクルの裏手の誰もいない方へ向けると自然と足がそちらに動く。そうして獲物を求める本能のままにふらふらと彷徨っていると、ふたたび意識を失った。

 

 

ふたたび目が覚めると今度は人の姿に戻っていた。そして松明を持ったアエラが顔を覗き込んできた。確かに俺は、獣人になったらしい。獣人としてより強くなりたかったら人の生き血を啜ることだ、と彼女は言う。コドラクと違って獣人であることに誇りを持っているのだ。

 

そのためにお誂え向きの存在が、この先にある古い砦ギャロウズ・ロック占拠しているという。きっと獣人狩りのシルバーハンドたちのことだろう。既にスコールが斥候に向かっており、どうやら俺に拒否権は無いようだ。俺は渋々そのシルバーハンド狩りに同行した。

 

 

しばらく進むと砦が見えてきた。アエラは生身でも強いので、今回は遠慮なしに正面突破を試みたが、やはりシルバーハンドたちは結構な強さと数を誇り、囲まれるとさすがにだいぶ不利になる。一人で斥候に向かったというスコールももしかしたら危ないんじゃないかと思うが、仮にも同胞団のサークルの一員なのだから、心配しすぎかもしれない……。

 

 

砦の牢屋の中には既に捕らえられていた獣人の死体があり、不安はより募った。そしてここの首領は”皮はぎ職人のクレヴ”という名で知られる残虐極まりない男であるという話を聞き、緊張感は頂点に達する。そして奥の広間にたどり着くと、嫌な予感が的中してしまったことを悟った。シルバーハンドたちの側に転がる死体はまさにスコールのものである。それを見るやいなやアエラは激昂して広間の中に躍り出た。そして俺も静かな怒りを燃やしていた。

 

 

アエラはシルバーハンドたちの迎撃をものともせずあっという間に死体を増やしていった。その暴れっぷりに近づくのは不可能に思え、遠くから魔法で援護していたのだが、皮はぎ職人ことクレヴが俺の存在に目をつけた。奴の強力な剣の振り落ろしは直撃こそしなかったものの、こちらの体勢を大きく崩され魔法の狙いをつけることすらままならない。ここはアエラをあてにして、クレヴを引き付けつつ逃げる! すると雑魚を片付けたアエラがこちらに駆けつけ、クレヴと相対した。

 

グレートソード同士の撃ち合いは見た目にも迫力がある。しかし背中が完全にお留守だ。俺はマジカが切れていたこともあり、鍛冶と付呪の練習中に作った護身用の電撃ダガーで背後から強襲し、首を一閃する。クレヴはヒュッという断末魔の声をあげて倒れた。

 

 

アエラの怒りはクレヴが倒れた後も収まらなかった。彼女はこの砦に残党がいないかどうかこれから確認するという。先にスコールを荼毘に付し、俺は一足先にホワイトランに戻って事の次第を報告した。同胞団の団員たちはスコールの訃報に誰もが衝撃を隠せないようだった。付き合いの短い自分ですらそうなのだから、もともとの団員たちにとってはなおさらのことだろう。

 

俺は獣人になってしまったし、少し心の整理が必要だと思った。俺は同胞団から少し距離を置き、まだ訪れていない要塞へ足を伸ばしてみようと考えたのだった。

 



 

【続く】