四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記16『狼を呼びし者(後編)』

 

山奥のサルモール大使館の前を通り、ウルフスカル洞窟の前までやってきた。入り口に何体かいたスケルトンを軽く蹴散らしたのだが、思えばこのとき既に洞窟内部に巣食っている者たちの予兆はあった。

 

菌糸類が群生している洞窟内を手探りで進んでいく。狭い通路にドラウグルが一体だけ通路にいたが、たったそれだけでは相手にすらならない。そこを通り過ぎると階段のある広間に出る。そこでは魔術師と思われるローブの人間が何人も焚き火をしていたのだが、こちらに気付いて襲いかかってきた。

 

一人がさきほど倒したドラウグルを操り、ふたたび戦いの場へと舞い戻らせる。そしてもう一人は手足を持つ巨大な氷の塊を呼び出した。精鋭の召喚術師として認められなければ使うことができないと言われている氷の精霊召喚である。俺だってまだ炎の精霊召喚までしか使えないのに!

 

 

さすがに多勢に無勢、俺は切り札であるサングインのバラを使ってドレモラを呼び出す。大人数による混戦状態で広間は一気に狭く感じられた。死んだものを使役する死霊術師は厄介だ。真っ先に狙いたいが、他のものたちにまで指示が伝わらない。リディアとドレモラはまず氷の精霊に向かっていった。

 

いくら巨体といってもドレモラの前にはたいした障害にはならず、あっという間に魔力の制御を失い床のシミとなる。そうなれば残りの魔術師たちを倒すのも大して時間はかからなかった。ウルフスカル洞窟は元々ポテマが死霊術の儀式を行う場所だっただけあって、ポテマを信奉する死霊術師たちが集まっているのかもしれない。倒れている何人もの死霊術師を見てそう思った。

 

 

広間から階段を降りていくと、下に降りる穴だけがある部屋に突き当たった。一方通行だがそれ以外に進む道が無く、意を決して穴を飛び降りる。その先には、さきほどの広間など比較にならない程の巨大な地下空間が広がっており、目に見えるほどの凝縮された魔力の奔流が、空間の中心にある祭壇の周りを渦を巻くようにうねっている。そしてかすかに聞こえたのだ、ポテマの復活を願う声が。

 

まさか、ここに集まった死霊術師たちの目的はポテマそのものの復活なのか!? ポテマはかつて動く屍の軍団を作り上げ、帝国に刃向かったという伝説的な死霊術師でもあるのだ。どんなに優秀な死霊術師でも操れるのは二体が限界だと言われているのにも関わらずだ! そんな奴を復活させてしまったら、今のスカイリムとてただでは済むまい。そう思った焦りからか自然と歩みが早くなる。

 

もはや警戒しながら進む精神的な余裕もなく、多くの死霊術師たちと正面切って戦うことになった。ただのドラウグルではない上位種も見かけることが増えてきて、死霊術師との組み合わせは非常に厄介だったのだが、俺にはサングインのバラという切り札がある。この程度の状況ならまだ余裕を持って乗り切ることができた。

 

 

祭壇の頂きでは儀式を行う三人の死霊術師たちがポテマを召喚しようと集中していた。しかしここに誰かが来るとは思っていなかったのか、俺たちが現れると混乱に陥りいともあっさりと一掃することができた。空間に渦巻いていた魔力はしばらくその場に留まっていたが、やがて天井の穴から外へ出ていって消えてしまった。果たしてこれで良かったのだろうか? 不安の種は尽きなかった。

 

 

ブルー・パレスに戻りウルフスカル洞窟の件を報告すると、玉座の周囲ではどよめきが起こった。まさか死霊術師どもがポテマの復活を目論んでいたなどとは、そう信じてもらえる話ではないと俺も思っていたのだが、それをあっさり信じるとは人が良いのも程があるというものだ。どうせ後で調査隊を派遣すれば嫌でも分かることではあるのだが、少し心配になる。

 

 

そしてエリシフからの信頼も得ることにも成功し、これからはソリチュードでもだいぶ動きやすくなるだろう。実はエリシフから後で部屋に来てほしいと言われたのだ。上級王といえども妙齢の女性には違いないのだから、そりゃあ少しは期待してしまうだろう?

 

後で部屋を訪ねると、エリシフは夫のトリグの弔いのために代々受け継いでいた角笛をタロスの祠に祀ってほしいとお願いしてきた。帝国はタロス信仰を廃止しているのだが、ノルドは元々タロスを信仰していた民族である。しかし帝国のお膝元となればいくら上級王でもタロス信仰を表沙汰にはできなかったのだろうと察せられた。……そんなことだろうと思ったよ! 俺はしぶしぶその依頼を受けた。

 

 

礼金を弾んでもらい、だいぶ温まった懐を見てふとある考えが頭をよぎった。このお金があれば……家が買える。ホワイトランなら5000ゴールドで家が買えるのだ。かつて従士になったときに家屋の購入許可が出ていたのだが、あのときはとても手が出ない値段だと思っていた。

 

あまり無駄遣いしてこなかったというのもあるが、大きな仕事をこなせるようになり収入が増えたこともあって、今では無理のない価格のように思えてくる。そして何より、家を欲する特別な理由があった。これははっきりいって死活問題なのだ。

 

よし、善は急げだ。戻ろうホワイトランに! 俺はソリチュードを出て、東南の方角にあるホワイトランに急いだ。たとえドラゴンでもこの衝動を止めることはできないだろう。

 

 

【続く】