四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

『高地戦』鑑賞。

Amazon primeにあるのはリリースが2022年となっているが、2011年版と中身は同じらしい。この戦争映画いいよ! おすすめ! と言われたので重い腰を上げて鑑賞。

 

朝鮮戦争の末期、東部戦線のAERO-K(エロック高地)では、毎日のように陣地を奪い合う一進一退の激しい攻防戦が繰り広げられていた。そこを守る部隊のひとつ、通称ワニ中隊と呼ばれる部隊に内通者の疑いがかかり、主人公である防諜部隊のカン・ウンピョ中尉が派遣され内偵が始まる。最前線での戦いで精神が擦り切れた旧友と再会し、ワニ中隊の一人として前線に赴くうちに明かされる真実、北朝鮮の兵士との奇妙な交流、そしてただ生き残ることだけを願う兵士たちに残酷な現実が降りかかる。

 

戦争映画としてはちょっと話ができすぎな部分と、韓国映画らしく湿っぽいストーリーを音楽で盛り上げようとする悪い癖があるのだが、良く言えば戦争とエンタメをそれなりに両立できていると言える。前半こそは戦場ミステリーめいた感じでワニ部隊で起こった事件を追いかけることになり、そこで一旦の真実が明かされるのだがまだ本当の地獄は始まったばかり。北と南の兵士の間で、取り合った陣地の隠された場所でこっそり物を交換しあう奇妙な関係が築かれるのだが、そういう関係も同一民族ならではの描写であると言える。しかしだからこそ後半に向けて、殺し合いを止めることはできないという虚しさへとつながっていく。

 

そして終盤に停戦のときが訪れるのだが、時計を見るとまだ上映時間が30分ほど残っていた。これから何をやるんだ? と思っていた自分が甘かった。そこから先の展開は地獄絵図としか言いようがなく、戦争の不条理をこれでもかと見せつけてくる。はっきりいってこの映画はここがキモだし、ここが無ければそれなりの戦争映画止まりだっただろう。ここに至るまでの全てはそのための前フリに過ぎなかったのだと気付かされる。全てが無駄で無意味だ。だがその無駄を誰も止めることができない。北も南も。あまりにも不条理な展開に思わず絶句した。

 

戦闘描写もプライベート・ライアンの冒頭に優るとも劣らない。兵士たちが泥臭く、血なまぐさい戦いを同じ場所で何度も繰り広げ屍山血河を築く。命はどこまで軽く、戦争の不条理と戦いの虚しさを描いた正しい戦争映画と言える。