四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記3『嵐の前』

 

あれから一晩かけてリバーウッドに戻ってきた。

さっそくカミラに奪還を依頼された金の爪を渡すと

感謝の言葉とともに報酬が手渡された。

金額はそれほど多くはなかったが

今回の冒険で手に入れたのはそれ以上のものだったと思う。

手に入れた武器の一つに、氷の魔力が込められた片手斧があったが

想像以上の業物だ。しばらくはこの斧の世話になることだろう。

 

そして今回の冒険で魔法の価値を思い知った。

こんなことになるなら真面目に勉強しておくんだったという後悔の念にかられる。

一人での旅がこれからも続くなら、より多くの魔法を習得する必要があるだろう。

雑貨店にあった呪文の書がふと目につき、何冊か購入しておいた。

 

 

雑貨店を出て、ようやくホワイトランに向かおうとすると

村の住人であるウッドエルフの男が声を掛けてきた。

どうやら村の噂で聞いた、カミラに懸想する男の一人らしい。

なんと恋敵を装った手紙をカミラに渡せと頼んできたのだ!

余所者である俺なら怪しまれないとでも思ったのだろうか?

しかしこういうことに関わってしまうと、もう片方の男から恨みを買うかもしれない。

そうなってしまうことを懸念して、俺は丁重にお断りした。

世の中にはとんでもない奴もいたものである。

 

 

ホワイトランへの道はそれなりに険しいものであった。

川沿いを下りながら、ときおり襲ってくる狼や大蟹を倒しながら進んでいく。

一日もかからないうちにやがて森が途切れ、開豁(かいかつ)した場所に出た。

するとそう遠くない場所に巨大な要塞が見えたのだ。

あまりに大きすぎて距離感がおかしくなりそうなほどの要塞が。

リバーウッドなど比較にならない大きさだ。

 

 

要塞の周囲には広大な農場がいくつもあり

そこで同胞団と名乗る傭兵の集団に遭遇した。

彼らが屠ったと思われる巨人が足元に転がっており

相当な手練であることは俺のような駆け出しの冒険者であっても容易に理解できた。

ホワイトランとは石の強固な城壁だけではなく

こういった者たちの強さにも支えられているのだろう。

 


ホワイトランの城門は小高い丘の上にあり

訪ねてくる者を拒むかのように曲がりくねった道を登っていかなければならなかった。

城門の前では兵隊に呼び止められたが、ドラゴンのことで首長に謁見したいと言うと

ことの深刻さを理解してもらえたのか、なんとか通してもらうことができた。

ドラゴンの噂は既にこのホワイトランの地にも届いているらしい。

 

 

ホワイトランは外観の威容だけに留まらず、内部もかつてない賑わいを見せていた。

早く首長に謁見しなければと思いつつも、つい色々なものに目を奪われてしまう。

ここであったことの全てを語り尽くすことは困難を極める。

それほどまでにこの要塞内は人と物で溢れかえっていたのだ。

 

話に聞くところ、この要塞の内部は三層の構造に分かれていた。

まず最初に訪れる商店や市場が並ぶ第一層『平野地区』

そこから階段を登ったところにある居住区の第二層『風地区』

そして首長の居城であるドラゴンズリーチのある『空地区』だ。

俺は寄り道しつつも、もっとも高いところにあるドラゴンズリーチを目指す。

 

 

城は丘の頂上にあり、そこまではひたすら階段を登っていくことになる。

まったく疲れるな!

ここまで旅をしてきた身としては、文句の一つも言いたくなるというものだ。

兵隊に怪しまれながらも、ぶつぶつと呟きながら城の扉を叩いた。

 

首長の側近だというダークエルフのイリレスという女にドラゴンの話をすると

俺はホワイトランの首長・偉大なるバルグルーフの元へと通された。

ヘルゲンがドラゴンに壊滅させられたこと

そしてリバーウッドに守備の兵士を派遣して欲しいということを伝える。

もちろん俺自身は余所者なので、信用させるために

アルヴォアの依頼であることも添えて。

 

このバルグルーフという男は想像以上に有能な男であった。

ドラゴンの話は信じてもらえたようで、すぐさまイリレスに

リバーウッドに兵を送るように指示を出す。

この地方の住民にとっては頼りになることこの上ないだろう。

俺は安堵するハドバルとアルヴォアの顔を思い浮かべて

誰にも分からないくらいわずかに口角が上がった。

 

 

ひと仕事終えた俺は玉座の前で休息を取っていると

バルグルーフの方から声をかけてきた。もう一つ頼みたいことがあるという。

さすがに首長からの頼みを邪険にするわけにはいかず

首長直々に王宮の魔術士の元へと連れて行かれることになった。

ファレンガーと名乗ったその男に、バルグルーフは以前から

ドラゴンについて調べさせていたというのだ。

俺への頼みとは、このファレンガーの手伝いをしてほしいということだった。

たった一度ドラゴンに襲われただけなのに

すっかりドラゴンとの因縁ができてしまったと呆れるしかない。

 

ファレンガーは研究室を離れることができないらしく

代わりに取ってきてほしいものがあるという。

それはブリーク・フォール墓地の奥に眠るという石版……

とそこまで聞いて、俺には心当たりがあった。

もしかして屍の王が持っていた謎の石版のことではないのか?

 

 

俺が荷物の底に眠っていたその石版を取り出すと

ファレンガーの表情は歓喜に包まれた。

まさか遠回りしてきたと思っていたあの冒険が

結果的に先回りしていたことになるとは、何が起こるか分からないものだ。

 

そうしてファレンガーの願いを叶えたのも束の間

ドラゴンズリーチに緊張が走った。

駆け込んできた兵士の報告は驚愕すべきことであった。

このホワイトランの近くでドラゴンが目撃されたというのだ!

 

 

【続く】