四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記2『金の爪』

 

リバーウッドに到着した翌日。

アルヴォアからの依頼を受け、俺は次の目的地をホワイトランに定めた。

その下準備のために入った村の雑貨屋で喧嘩に遭遇してしまい

気まずい思いをすることになった。

 

喧嘩をしていたのは店主のルーカン・バレリウスと、妹のカミラ。

最近山賊に盗みに入られて店の宝である『金の爪』を取られてしまったのだという。

しかし俺はこれからホワイトランへ向かわなければならない。

聞かなかったふりをして立ち去ろうとしたが……。

 

道を歩いていたときに耳にした噂話を思い出した。

この店のカミラは大変美人だという話だ。

事実俺がこれまでスカイリムで見てきた女たちの中では一番と言ってもいいだろう。

そう思うと、俺も男らしいところを見せたくなり

つい彼女の願いを聞き入れてしまったのだ。

 

 

山賊の根城である、川を挟んだ山の上にある『ブリーク・フォール墓地』。

墓地の前には見張り塔があり、そこにも山賊が巣食っていた。

複数の敵との戦い……。物陰に隠れながら不安を感じていたところに

幼き日に教えられた初歩的な魔法のことを思い出した。

かなりの集中力を要するだろうが、今なら有効に使えるかもしれない。

使い魔の召喚によって、狼にも似た四肢の獣を呼び出す。

使い魔は果敢にも山賊たちに飛びかかり、その隙をついて自分も斬りかかる。

見張り塔の制圧はあっという間のことだった。

 

 

山頂の墓地にも山賊たちは何人も待ち構えていたが

使い魔との連携の前には敵ではなかった。

このときほど魔法のありがたさを感じたことはなかっただろう。

刺さった矢の手当てを治癒の魔法で済ませたあと、墓地の中へと歩みを進める。

 

中は墓地というよりも、かつては聖堂であったことを思わせる石造りの遺跡だった。

山賊の拠点と思われる明かりにそっと近づくと

会話の中から『金の爪』という単語がかすかに聞こえた。

リバーウッドの雑貨屋に盗みに入った山賊は、ここにいる連中で間違いないようだ。

使い魔と共にその山賊も蹴散らす。

 

 

途中の罠をくぐり抜けてさらに奥へ進むとなにやら声が聞こえてくる。

悲痛な叫びだ……。徐々に近づいてくるその声の主がいる部屋へと入ると

想像を絶する光景が目に飛び込んできた。

粘着質の糸に絡め取られた男、そして天井からぶら下がる巨大な蜘蛛の化け物の姿が。

一瞬足が竦んだのとは無関係に、使い魔が先に大蜘蛛に飛びかかっていったが

ほんの一撃喰らっただけで消え去ってしまった。

これでは何度召喚したとしても無意味だろう。

俺が正面から斬りかかったとしても、勝ち目はなさそうだな……。

その恐怖が、忘れていたもう一つの魔法の存在を思い出させてくれた。

 

 

火炎だ! とっさに掌から放たれた炎が大蜘蛛の身体に燃え移っていく。

しかし大蜘蛛もしぶとく、炎に怯まず繰り出された攻撃によって

自分も大きな痛手を負わされることになったが

やがて燃え尽きて動かなくなった。

 

蜘蛛に囚われていた男は『韋駄天のアーヴェル』と名乗った。

山賊のリーダーが、間抜けにも蜘蛛に捕まったというわけだ。

助ける代わりに金の爪を返す、という願いを聞き入れて蜘蛛の糸を斬ると

まさに韋駄天のごとく墓地の奥へと逃げていった。しまった!

慌てて追いかけるが、アーヴェルとの距離は一向に縮まらない。

焦りを感じていると、安置されていた屍の一つが動き始め

あっという間にアーヴェルが倒されてしまった。

 

 

その動く屍の次の狙いはもちろん俺だ。

先程まで相手していた山賊よりも強力な敵に苦戦したものの、かろうじて撃退する。

大蜘蛛から受けた傷と追跡による疲労で息をつきながら俺は迷った。

『金の爪』は取り返した。しかしこの遺跡にはまだ奥がある。

先に進むか、それとも戻るか。

 

自分の冒険者の端くれとしての好奇心が勝った。

幸い治癒の魔法があり、集中力の続く限りは傷を癒やすことができる。

何度も動く屍(ドラウグル)に遭遇し

刃のついた振り子や棘の付いた壁の仕掛けなどが行く手を阻む。

俺はいつの間にか金の爪を取り返すという依頼のことも忘れ探索に没頭した。

 

途中、仕掛けのある扉があったがどのように解いたのかよく分かっていない。

扉の錠の役割を果たしていると思われる石をクルクルと適当に回し

3つの穴に金の爪を差し込むと扉が開いてしまった。

この仕掛を作った古代の人間には申し訳ないが、俺の運がよかったようだ。

その扉の先へ進むと、この遺跡の最奥と思われる場所に出た。

 

 

不思議な空間であった。

手前には祭壇があり、奥の壁には文字が刻まれていた。

その一部が光っており、近づくと声が聞こえてくるような奇妙に感覚に襲われる。

抗いがたい衝動があり、その光る文字に触れると

その光が自分の中に流れ込んでくる! 一体何が起こったんだ!?

 

だがそれについて確認する間もなく

祭壇の上にあった棺から動く屍が飛び出してきた。

明らかにそれまでの屍とは雰囲気も出で立ちも異なる。

屍たちの王(ドラウグル・オーバーロード)とでも言えばいいのか。

 

その屍は不思議な力を使って俺に迫った。

口から放たれる声を浴びると、一瞬ではあるが動けなくなってしまう。

その一瞬の隙を突かれればやられる。そう思うとなりふり構ってはいられなかった。

炎ではあまり遠くには届かない。しかしここに来る途中で得た一つの魔法があった。

 

 

雷撃!

効果は覿面だった。いくら王と言えど所詮は屍でしかないらしく頭は働かないようだ。

祭壇の周囲を小賢しく逃げ回りながら、一方的に雷撃を浴びせ続けると

しぶとかった屍の王もやがて黒焦げになり動かなくなった。

 

戦利品を漁ると、付呪のついた武器があったのでありがたく頂戴しておいた。

意味の分からない謎の石版もあったが、もしかしたら貴重なお宝かもしれない。

とりあえず持っていこうと思う。

さきほど流れ込んできた何かについては、今は考える余裕はなかった。

それにしてもずいぶんと奥まで来てしまったが

ここから帰るとなるとかなり骨が折れるだろう……。

 

そう思っていると、どこかから風が吹き込んでくることに気が付いた。

まさか!? 祭壇の奥へと行くと仕掛けがあり、それによって岩が動いて道ができた。

出口だ! 疲れた身体に鞭を打って外へ飛び出すと

もう辺りはすっかり夜になっていた。

 

見たところ山の中腹のようだが、まるで見覚えのない場所だ。

遺跡の中を長いこと歩き、いつの間にか山の反対側に出てしまったのだろうか?

思いがけず大冒険になってしまったな、と心の中は充実感で満たされていた。

ふと空を見上げると、夜空にある二つの月がいつもより輝きを増して見えた。

 

 

【続くかも】