四十の一部始終

今年で四十歳になりました。二日に一回更新が目標。

スカイリム日記1『開放』

 

ぐらぐらと揺れる荷馬車の上で、ゆっくりと目を覚ます。

腕は縛られ、抵抗することはできない。

あたりを見回すと、何人かの男が同じ荷馬車の上で深刻な顔をして何かを話している。

その話に耳を傾けていると、この荷馬車が向かっているのはどうやら処刑場のようだ。

 

どうしてこんなことになってしまったのか……。

自分はただ、このスカイリムの地で新たな人生の一歩を踏み出したかっただけなのに!

同じ荷馬車に乗っていたのはなんと、帝国への反乱を企てる

ストームクロークの長とその部下だというではないか。

つまり俺は、こいつらのとばっちりを受けてこれから処刑されるというのだ。

 

 

馬車はやがて、小さな集落を兼ねる砦のような場所へと着いた。

荷馬車から降ろされ、一人ひとり名前を読み上げられる。

しかし自分の名前はリストには存在していない。

同乗者の一人が恐怖にかられて走り出したが、兵士に弓で射抜かれ地面に倒れた。

抵抗しても無駄だ。そう思うと全身の力が萎えていき、ただ兵士に言われるがまま

自分の名前と出身を告げた。

 

 

司祭が簡単な儀式を済ませると、一人が処刑台の前に連れて行かれ

処刑人の大きな斧で首を切り落とされた。全身の血の気が引いていく。

次はお前の番だ。

俺は全身を強張らせながら、ゆっくりと処刑台の前に進んでいく。

跪かされ、処刑人を見上げる。もはや命乞いも無意味だ。

斧がゆっくりと振りかぶられ、今まさに振り下ろされようとしたそのとき

大きな影が視界を横切っていった。

 

 

ドラゴンだ!

塔の上に降り立ったそれは、大きな咆哮を上げながら炎の玉をいくつも降り注がせた。

処刑人の斧はいつまで経っても振り下ろされる気配はない。

頭を上げると、あるものは勇敢にもドラゴンへ向かって弓を射掛け

あるものは恐慌状態に陥り逃げ惑っているのが見えた。

大混乱だ。

唖然としてその光景を見ていると誰かが声を掛けてくる。

俺はただ、導かれるようにその声の主の後についていくしかなかった。

 

 

どれくらい走っただろうか。

最初に塔の中に入っていったことだけは覚えているのだが。

炎につつまれる砦の中をひたすらに逃げ惑っていた。

気がつくと、俺の前にいたのは最初に声をかけてきたのとは別の男だった。

しかし男はそんなことは気にしないとでも言うように

命が助かった喜びを分かち合った。

 

見たところ帝国の兵士のようだった。

いま外へ出るのは危ない。砦の裏口を使って脱出しようと提案してきたが

俺はそれに乗るしかなかった。眼の前の男が悪いやつとも思えなかったからだ。

砦の中にあった装備や回復薬を漁り、奥へと向かう。

 

 

途中何人ものストームクロークの兵士たちが行く手を阻んできた。

こいつらのせいで処刑されそうになったのだと思うと、剣を握る手に力が入る。

俺はハトバルと名乗った帝国兵とともに、襲い来る敵を倒していく。

実はあまり剣の扱いは得意ではない。

なんとか足を引っ張らないように援護したつもりだ。

 

脱出のための裏口はやがて天然の洞窟へと姿を変えていった。

そこでは巨大な蜘蛛や熊が待ち構えていたが

ハドバルの助言もあり、さほど労せず通り抜けることができた。

短い時間だったが、俺はいつの間にかハドバルに信頼を寄せるようになっていった。

 

 

やがて出口に辿り着くと、さきほどの城塞からは少し離れた山の中腹に出た。

ハドバルは叔父の住んでいる麓の村、リバーウッドに身を寄せるという。

行く宛の無い俺は、このまま一人になる心細さも相まって後を追った。

途中加護の力のある大立石の横を通りながら、追跡者の不安にかられていた。

息を切らせながら走っていくと、川のせせらぎとともに村の入口が見えてきた。

 

 

ようやく一息つける。

疲労感と安堵感で、今にも膝から崩れ落ちそうになった。

リバーウッドの村は、先程の狂乱からは遠くかけ離れたのどかな村で

ハドバルの叔父であるアルヴォアの家を尋ねると歓待を受けた。

スカイリムにやってきてからというもの、良いことがまるで無かったが

ハドバルとの出会いが風向きを変えたのかもしれない。

家の物も常識の範囲内なら使って構わないと言われ

この先のことも考えていくつか食べ物などを頂戴した。

 

しかしドラゴンの話になると、アルヴォアの表情が曇った。

もしドラゴンが出てきたとなると、この小さな村ではひとたまりもないからだろう。

もしよければホワイトランに援軍を呼びにいってくれないか?と頼まれた。

ホワイトランとはこのリバーウッドを治める首長のいる場所だ。

ハドバルには恩があるし、この先何かアテがあるわけでもない。

俺は二つ返事でその頼みを聞くことにした。

 

 

【続くと思う】