インディペンデンス・デイ(以下ID4)は傑作だ。
地球を襲う巨大円盤、逃げ惑う人々はその旅路の果てに
約束の地(エリア51)へとたどり着き、やがて反撃のときを待つ…。
はっきり言ってツッコミどころ満載の作品だが
実際の映像にはそれ以上の熱量があり
群像劇的に描かれる多くの人々のドラマが宇宙人打倒のために紡がれ
共通の敵に立ち向かうために一致団結する人類の姿には夢があった。
1990年代のハリウッドを代表する娯楽超大作と言っても過言ではない。
公開当時小学四年生。映画館で号泣したことは今でも忘れていない。
今でこそ泣きはしないが(結構涙腺は緩む)
観るたびによくできた娯楽映画だと感心してしまう。
しかしその思い出も、2016年に公開されたID4の続編
『インディペンデンス・デイ:リサージェンス』によって完膚なきまでに破壊された。
そして激怒した。それ以降ローランド・エメリッヒに対して
期待することもなくなったはずだったのだが…。
どうせいつものローランド・エメリッヒなんだろ?
と思いつつも『ムーンフォール』は概要を聞いただけで面白そうだと思ってしまった。
月が公転軌道を外れ、地球に落ちてくるのを人類が食い止める!
うーん、なんだかんだ言ってこういうSFは大好きなのだ。
そう思ってアマプラで配信されることになった『ムーンフォール』を観たのだが。
この作品は、もはやハリウッドの伝統芸能だ。
政府機関も察知していない世界の危機をメインキャラの博士だけが察知していて
主人公はなんやかんやあって家族と不仲になっていて
地球の危機にパパが宇宙に飛び立ち
なんとなく巨大な敵と戦いながら巨大な構造物から脱出して
なんやかんや地球に戻って昔のパートナーとヨリを戻してEND!
基本的にID4と似通っている点は多いのだが
ただ誓って言いたいのはID4がいろんな要素を出しつつも全てが
宇宙人との戦いという目的のために向けられていたのが
この作品に関しては全ての要素がバラバラでまとまりがないということである。
だからカタルシスも弱いし、退屈なのだ。
月が地球の周囲を楕円軌道を描きなら徐々に近づいてくるのは
非常に恐ろしい絵面だし、これをどうするのかというのは
物語の牽引力として作用しているのは認めざるをえないのだが。
そして終盤明かされる月の真実は
なんというか…リサージェンスのやり直しをしたいのか?と思える点がちらほらと。
最後に続編を匂わせるところまで似ているのだ。
面白い作品なら続編はありがたいと思うが、そうでない作品では逆にみっともない。
余計に評価を下げることになるのでいい加減やめて欲しいと思う。
最初は劇場公開するはずだったのをアマプラ限定にしたのが
今ではとても納得が行くし、配給側の好判断としか言いようがない。
ただいつものエメリッヒを求めている人にはきっと満足できる作品のはずだ。
だって想像しうるエメリッヒ作品そのままだから。